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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第14話 七番目の月⑫【白雪セリカ視点】

「……どうやら、フラれてしまったようだね。残念だよ。だが……。本当にそれでいいのかい? 僕たちと敵対するということは、ゼロと決別するということでもある」

「…………」

 アルファとシスターに何度も警告され、私も自分なりに答えを見出そうとしていた。ゼロとなった先輩と、私はどう……向き合ったらよいのか。

 何度も。

 何度も何度も何度も何度も。

 私は多分、説得しようとしたんだと思う。

 助けようとしたことも、自分の命を投げ出したことも、救いようがない程のそれを続け、やがて諦めた。三周目のあの言葉で、それを私は悟っていた。

 ゼロを肯定したら、その時私は終わる。

 心が引き裂かれて、私は私ではなくなってしまう。

「正義と愛は絶対に両立できない。どんな人間も、この二つの選択肢の前では木偶人形と化す。これは人間を狂わせる究極と言ってもいいダブルバインドだ。“正しい”と“好き”は違う。だが人間は“好き”なことを“正しい”と思いたがる生き物。だから人間は“正しくないこと”を“好き”になると、狂うようにできている。だが君はそうではない、というのかい?」

 透は、自分のマインドコントロールが不発に終わったことが悔しいのか嬉しいのか、どこか好敵手に向ける眼差しで、不敵に目を細め私へと問う。


「君は……ゼロを本当に殺せるのかい?」


「…………そうか、Gランクは」

 一瞬だけ、見えた。

 透の言葉は、右から左へ流れていく。

 先輩の“青い鎖”が具現化したことと、先輩の言葉を思い出す。

 先輩はゼロになった自分を殺してほしいと言っていた。

 そして、Gランクを目指せとも。

 つまり、ゼロを殺すことと、Gランクは両立できるということ……。

 どうして、こんな簡単なこと、今まで気づかなかったんだろう。


 ――――ゼロを、救おうとしてはならない。


 これは、絶対だ。

 侵してはならない最終防衛ライン。

 自我を守るための境界線。

「私は、Gランクを目指す。ゼロを殺したとしても、最後は全て救ってみせる。でもゼロを殺して、その先に救いもGランクもなければ、その時は自分で命を絶つよ。でも、必ず見つけみせる。私は、その為に生まれてきたんだと思う」

「……それが、君の答えか」

「ジェネシスは人殺しの為の力なんかじゃない。私はジェネシスを救済の力に……変えてみせる」

「救済……か」

 透は何とも言えない自虐的な笑みを浮かべ、呟くように言った。

 救済、と言う言葉に何か思うところでもあったのかもしれない。

「分かった。どうしても君の意志は固いようだね。なら、君の意志を尊重しよう」

 透は残念そうに、けれど吹っ切れたように、次の言葉を口にした。


「君を敵と認めよう。そして今度こそ決着を付けよう。君の白と、僕の黒。どちらの方がジェネシスとして正しいのか。なんちゃってね」


 パァン、と銃声が鳴り響いた。


 背後からの突然の銃声に驚き目を見開くも、


 ―――――胸から血が噴き出す。


 撃たれた?

 誰に? どこから?


 頭が状況を理解するよりも先に、私の翼が消滅して激痛が走った。



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