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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第14話 七番目の月⑧【白雪セリカ視点】

 

 《聖女抱擁》――セイジョホウヨウ――


 まずはメアリーを癒す。

 それから、全体を見回して状況を把握する。

 黒き天使の輪を持つ先輩と、ボロボロのメアリー。

 眼下を見ると、住宅街が崩壊していた。

 相当酷い能力の使い方をしたのか、眼下の景色は地獄だった。

「あああああああんっ! ああああああ!」

 子供が死んだ母親らしき亡骸にすがりついて、泣いている。

「うるせえな」


 《必中魔弾》――ヒッチュウマダン――


 先輩が能力を発動すると、子供の頭が吹き飛び、一瞬で静かになった。

 まるでゴミクズのように人を殺せてしまう……これが、今の……。


「ちっ、時間切れか」

 先輩が忌々し気に舌打ちすると、黒き天使の輪にヒビが入る。

 メアリーの「マイナス10」は「マイナス8」になり、先輩の「マイナス8」は「マイナス10」になる。そしてゆっくりと天使の環は崩れ落ち、消滅した。


「……せん、ぱい」

「お前が、SSSを超える存在か?」

 先輩は私のことを覚えていないようだった。

 冷徹な目で私を見据えている。

「……先輩、わ、私は――――」


 《紫電一閃》――シデンイッセン――

 《白雪之剣》――シラユキノツルギ――


 先輩は何の躊躇も無く、私に能力を発動した。

 黒き雷が閃光のように私へ向かってきたので、反射的に《白雪之剣》で無効化した。


「……キモい呼び方をするな、俺はゼロだ。SSSを超えるだかなんだか知らねえが、もう旧人類の時代は終わりにする。目障りだ。忌まわしい過去の自分と決別するついでに、黒以外の全ての人間を殺してやるよ。所詮は運だけで成り上がってきたゴミどもの世界だしな」


「先輩……」

 言葉が、出てこない。

 何かを言おうとしても、何を言ったらいいのか分からない。

「下がって、セリカ。こいつに何を言っても無駄。アンタじゃ無理……私が、私がやるから……っ」

 いつの間にか交代したシスターが私と先輩の間に割って入る。

「アンタにこいつは殺せない! でも、こいつはアンタを殺せる! だから……っ」

「……っ」


 ――――無駄かもしれないけどこれだけは言っておく、四周目。ゼロは殺しなさい。なるべく早い段階で。


 ――――やるしか、ないの?


 本当に?

 もし、そうしたとして、この先、本当に“救い”なんてあるの?

 私、私は――――


「おいおい、なんだよお前。良い感じに現れたと思ったら、殺気も覇気も無い腑抜けか。くだらねえ……。こんな雑魚がSSSを超える? 寝言は寝て言えカス」


 《監禁傀儡》――カンキンカイライ――


 私の首に何かが巻き付こうとして、勢いよくシスターに弾き飛ばされ、その何かはシスターの首に巻き付く。


「……っ、ぁ……」


 シスターは足をバタバタさせ、首に巻き付いた鎖を両手で握る。

 私の、私のせいだ……私を庇ったせいで、防御できなかったんだ……っ。

「な、なんで……」

 シスターは私の身代わりに、身を挺して私を……。

「仲間を見殺しにすんのか? ヘタレだな、おい。まぁいいそこで見てろ。お前のお友達がクソと小便漏らしながら死体になる瞬間をよ」

「……っ」

 アンリを生き返らせなければ、先輩を殺して元通りにできたのかもしれない。絶対に思ってはいけない筈の悔恨はしかし、Gランクへの決意で捻じ伏せる。

 分かった、分かったよ……。仕方ない……仕方ないね……。

「……あなたは生け捕りにする。両手足を斬って、永久にジェネシスを剥奪して……閉じ込めて……監視する……」

 先輩を殺す覚悟は決まらない。

 でも、見過ごすこともできない。

「もうあなたは先輩じゃない。ゼロ、私が……あなたを止めるよ」

 私はシスターに巻き付いた鎖に、《白雪之剣》を叩きつけ、鎖を打ち砕く。

「駄目、セリカ、アンタは……こいつと戦っちゃ……っ」

 シスターは何を恐れているのか、かつてない程に苦し気な声を出して私を止めようとする。しかし首をやられたダメージが抜けないのか、思い切り咳き込んでいる。

 私はシスターをかばう様に前に出て、ゼロへ向かって《白雪之剣》を構える。

 ゼロは不敵な笑みを浮かべ、唇を開いた。


「ハッ、ようやくやる気になったか。来いよ! 殺してやる」


「……っ」


 ゼロの黒と私の白が混じり合い、その死闘は始まってしまう。


 ――――こうして、四回目の運命が始まった。


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