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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第14話 七番目の月⑥【メアリー視点】

「……お前。SSSを超える……と言ったのか?」

 ゼロは興味が湧いたのか、殺気が霧散する。

「Fランクを超える光か、SSSを超える闇。そのどちらにも転びうる存在がいる」

「…………白雪セリカか?」

「覚えてるの?」

「いや、透が最も警戒していた女の名前だ。生前の俺が守り抜こうとした存在だとも聞いている」

「なら――――」

「だからこそ、過去の因縁は綺麗に断ち切らないとな」

「どうして、そこまで過去を否定することに固執するの?」

「俺ではない俺の形跡や、それに縛られることが不快だからだ」

「自分自身からは、逃げられないよ。誰を殺しても、何をしても、上書きも消去もできない。過去を無かったことになんてできない。だって君は……君なんだから」

 私は訴えかける。恐らくこれは最初で最後の機会。

 ゼロと対話できるのは、同じ黒を持つ者だけだ。

 なら、私が語り掛けるしか道は無い。


「――――“百鬼零”、君はゼロなんかじゃない」


「黙れ。それ以上喋ったら……殺す」

 ゼロは額を押さえ、何故か苦しんでいる。

「百鬼零!」 

「その名で俺を呼ぶなァァアア!」


 《処刑斬首》――ショケイザンシュ――

 《百鬼夜行》――ヒャッキヤコウ――

 《丁々発止》――チョウチョウハッシ――

 《監禁傀儡》――カンキンカイライ――


 黒き剣は炎に互換され百に分裂して収斂し、剣へと戻ると更に千に分裂する。

 私の首に黒き鎖が巻き付き、拘束される。


「チェンジ! マイナス10とマイナス8」


 千の剣は空から私目掛けて落ちてくる。


 《無限奈落》――ムゲンナラク――


 あまりジェネシスは使えない。私の出番は“この後”に控えている。

 最小限のジェネシスにとどめ、まずは首周りに収斂させ、鎖を消滅させる。その後は自分を守るように球体に《無限奈落》を展開する。

 千の剣の雨は私の《無限奈落》に吸い込まれ、消えていく。

 ……今の攻撃、私だったから問題なく対応できたけれど、他のジェノサイダーが対応できるかと言うと、かなり際どいところだ。シスターでも、初見で対応できたかどうか……。

「……ちっ、一つ目の切り札でも殺れねえとはなぁ!! 目障りな人間だテメェは。おい、名前を教えろ。俺のことだけ知ってるのはフェアじゃねえよなぁ!」

 ゼロはキレているが、冷静さを忘れていないのか闇雲に突っ込んでは来ない。黒を持つ私を警戒しているのだろう。

 そしていつの間にか、ゼロの頭上の数値が変わっている。マイナス8に。さっき何か言っていたけど、防御に必死過ぎて気づかなかった。何か運を……操作したのだろうか?

「私は……」

「多重人格でもねえとその変色は説明がつかねえ。メインの名前はどうでもいい。お前の名前を言え」

「メアリー」

「さっきまでの白は!」

「シスター」

「ぶっ殺しリストの一番上に刻んどいてやるよ。白雪セリカよりも上だ。……ありがたく思うんだな。ったく、透もいばら姫も無能かよ。こんなに黒がウジャウジャ現れるとはな、偉そうにしてる割に全く使えねえ。ゴミがよ」

「……他にも、黒が?」

 聞き捨てならない。他の黒はもう一人しか思いつかない。既に運命に干渉していたのか。

「ちっ、まさかここまで手こずらされるとはな……」

 ゼロは怒りを露わに私を睨んでいる。

「百鬼零。さっきの続きだけど、君はSSSを超える存在を殺そうとしている。そしてもしそれを本当にやるというのなら、君は君自身を殺すことになる」

「ダセェ脅しか。興覚めだな、お前は。同じ黒とは思えねえ。恥さらしが」

「君は後悔することになる。今からでも遅くない。《赤い羊》なんか切り捨てて、私と一緒に来れば全部――――」


「それ以上喋るな。虫唾が走る」


 《乾坤一擲》――ケンコンイッテキ――


「……っ!?」

 何が起きているのか、一瞬理解が遅れる。

 両腕の感覚が無い。

 いや、無い……。

 両腕が消滅していた。突然消え、血が噴き出す。

 でも、意味が分からない。何をされた?

 ゼロは遠くにいる。剣や弾丸で攻撃された形跡は無い。

「プラス2の差で腕二本ってところか。まだまだ可能性を感じる能力だな」

 気付けばゼロは目の前、上空にいた。

 つまらなそうに私を見下ろし、空から右手をかざしていた。

 頭が混乱して状況判断が遅れ……っ!

 シスター、セリカ、ごめ―――


 《必中魔弾》――ヒッチュウマダン――


 《粉雪水晶》――コナユキスイショウ――

 《守護聖盾》――シュゴセイジュ――


 黒き弾丸はしかし、白き盾に防がれる。


「カウント」

 ゼロは冷静に背後を見つめ、“現れたもう一人”の運を測る。


「……プラス10の運……だと。お前は……いや、そうかお前が……」


 ゼロは呆然と私の背後を見据えている。


「間一髪、間に合ったみたいだね。運が……良かった」


 プラス10の数値を頭上に映し出し、セリカは泣きそうな顔で微笑っていた。


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