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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第14話 七番目の月①【シスター視点】


 ……あれ、私。


 意識がぼやける。さっきまで何を……記憶が、おぼろだ。私はそう、二人を置いて単独で行動して、それで……。そこまでは覚えてる。そこからの記憶が無い。

 落下して……いる?

 体中に激しい痛み。そう、だ、確か黒い雷の直撃を食らって……。

「――――っ!」

 ようやく我に返る。

 私はゼロに挑み、やられたのだ。

 あんな一瞬で……。反射的に自分の体に身を守るようにジェネシスを集中させ、黒い稲妻を緩和していなければ即死していたかもしれない。それほどの威力。

(気絶時間は数秒程度です。まだ大丈夫です)


 《聖母抱擁》――セイボホウヨウ――


 一瞬アルファが意識に割り込み、身体を治癒する。

 治癒後、即座に態勢を立て直し、落下状態から飛行状態に身体を戻す。

 ……想定以上の強さ。

(だから言ったのに……)

 代案も無しに偉そうに反論しないで。何の責任も能力も無い傍観者みたいな言い方は癇に障る。

(ごめんなさい。でもそれなら、ここから先の私は作戦を聞いてくれますか?)

 最初からそのつもりで突っかかってきたわね……。論破されることを前提にそれを糸口に自分の話を展開してくるのは、アルファ特有の嫌なクセだ。

(思考を完全共有します)

 アルファの作戦が思考として流れ込んでくる。

 これ、作戦って呼べるの……?

 アルファの作戦はあまりにも逃げと守りに特化し過ぎていた。私はゼロを殺す気で挑んだけど、その反対にも近い作戦内容。

(さっきまでのあなたでは私の作戦は聞いてくれないと思ったので。私達では多分ゼロは倒せません。あの一撃で分かってくれた筈です。やはりセリカじゃないと無理です。その為には、セリカに覚悟を決めてもらう必要があります。私達はゼロを倒す為にではなく、セリカに覚悟を決めさせる為に戦えばいいのです。“未来”を変えることも大事ですけど、“未来”をセリカに実感させることも大事です。黒い雨をいっそのこと見せてあげれば覚悟も自ずと決まるでしょう。たとえ誰がどんな目に遭おうとも、何千何万の人たちが死のうとも、セリカをGランクにするという覚悟をあなたが持つことが今の課題です。それで自ずと未来は変わる筈ですよ)

 あまりにも他力本願じゃない?

(自分一人で全部何とかしようとする方が無責任ですし、自分の能力値を把握できていないと思います。私たちは“運命”に巻き込まれないように距離を取りつつ、且つここぞという時だけ“運命”に干渉すれば良いと思います)

 ……アルファ。アンタ、“どこまで”見えているの?

 アルファの能力に予知や観測するものはない。アルファは人間離れした神秘的、心眼的に近い人間から離れた視点で物事を常に俯瞰している。それは多分、透と少し似ていて、それでいて全く違う地点からの視点のような気がしてならない。

(そんな話をするよりも、目の前のことに集中してください。来ましたよ)

 アルファの声で、我に返る。

 黒き翼をはためかせ、ゼロが凄まじい勢いで私のところへ飛んでくる。

「……」

「……」

 ゼロと目が合う。ゼロはニヤリと笑った。まだ距離はあるが、それでも心臓が握り潰されるほどの悪寒とプレッシャーを感じる。死を恐れない私でも、素直にあいつが怖いと思える。これはもう本能的なもので、理性ではどうにもならない。

 あれに捕まったら“終わり”だと、遠くからのあの殺気だけで確信できる。あいつだけもうなんか別の生き物みたいだ。人間、心のインストールを忘れたらああなるのだろうか。透と方向性は違うけど、彼と同格の狂気を感じる。

 勝てないことはもう十分に分かった。戦いにすらならなかったのは屈辱だけど、アルファの言う通り自分で全て解決しようとする方が無責任なのだろう。ここで私が無駄死にする方が一番の損失だ。


「はぁ……。逃げよ」


 私はため息を吐きつつ、全力でジェネシスを翼から放出してゼロに背中を向けて飛び去った。

ーーーー能力メモーーーー

能力名:聖母抱擁セイボホウヨウ

所有者:アルファ

効果:聖女抱擁の上位互換。肉体の損傷と精神の損傷を修復する。

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