第12話 Gランクプラン㉑【白雪セリカ視点】
「それじゃあ、親睦も深まったことだし、ご飯でも食べながら作戦会議しよっか」
アンリとシスターは協力関係に納得してくれたようだった。
私たちは会議室に行き、これからの方針を立てることにした。
「……それはいいんだけど、このハンバーガーの山は何?」
シスターが呆れたような声で、机の上に山積みにされているハンバーガーを見て顔をしかめている。
「待ってるだけなのも退屈だし、お腹すいたからせっかくだし買ってきた。ぶっ続けで運動して気絶してたし、まずは栄養補給しないとね。ちゃんと飲み物もあるよ。オレンジジュース、コーラ、ウーロン茶、アイスティ、選び放題。あ、でもシスターはアイスコーヒーだよね。大丈夫、用意してるよ」
「ハンバーガー、全部で何個あるの?」
「三人分だから、百個かな。種類も色々あるよ」
「……馬鹿なの? 三人分だから百個って、どういう計算方法な訳? 一人三十三個一余りなの?」
「ちゃんと全部食べるって。それにトランス脂肪酸を削減してる、健康志向の強いファーストフードで買ってきたし、安心して食べてね」
「トランス脂肪酸削減してるジャンクフードなんてあるの? 一部の他国では使用禁止にされてるやつよね、確か」
アンリが興味を惹かれたようで、聞いてくる。
「一応あるよ。ゼロではないけどね」
「へぇ。少しはマシな企業もあるのね」
「私、一個でいいから」
シスターがげんなりしたように言う。
「嘘でしょ? 絶対足りないよ……。アンリは食べるよね?」
「いや、嘘でしょはこっちのセリフ。多過ぎでしょ」
「シスターは小食だよね……」
「あなたが健啖家なだけ」
「えぇ、そんなことないよ」
「こんなに説得力が無い、そんなことないって言葉、初めて聞いた……」
「ぷっ、ハハ……。確かにこれは多過ぎよ……。じわじわ来る。フッ、アハハ」
クツクツとお腹を抱えて、目の前のハンバーガーの山を見てアンリが目尻に涙を溜めて笑っている。
「アンリに笑われてるし……」
「こんなバカな量のハンバーガー買ってくれば笑うしかないでしょ。どうやって持ってきたの? サンタクロースみたいに背負ってきたの? バカでしょ……」
「サンタクロースって、アハハハハ」
「バカバカ言い過ぎ。あとアンリ笑い過ぎ」
「セリカって、実は馬鹿……。脳筋ポジティブ食欲お化け」
「私の悪口禁止」
「そんなルールは無い。私はエビフィレオね。あとアイスコーヒー」
「はいはい」
「想像もつかなかったけど、今なんとなく分かったわ。あなた達って意外と上手くやってるのね」
アンリが関心したように頷いている。
「え、そう見える? 私はシスターにしょっちゅう怒られてるよ」
「セリカが馬鹿なことするからでしょ?」
もぐもぐとリスのように頬を膨らませてハンバーガーを食べながらシスターが反論してくる。
「少し心配だったけど、上手くやっていけそうな気がしてきたわ」
アンリの懸念要素は分かる。今でこそシスターがメインで表に出ているけど、西園寺要はマザーの印象が強すぎる。“死の母”を目指し、蠱惑的で、残酷で、《時間停止》であるSSSの異能力者。奇跡のような運が重なってなんとかマザーに勝つことはできたけれど、それも結局は偶然の産物のようなものだ。マザーの印象が強いとどうしても、恐れのような感情を抱いてしまう気持ちは分かる。
「アンリ、大丈夫だよ。シスター達は、私が“間違えない限り”は大丈夫」
「……」
「……」
二人は私の言葉の意味するところを吟味しているのか、押し黙る。
「まぁ取り合えずは食べよ食べよ。私は最初食べるのはただのハンバーガーって決めてるんだ。あとウーロン茶」
私はハンバーガーを手に取る。
「じゃあ私はてりやきバーガーとアイスティを」
アンリはてりやきバーガーを手に取る。
「それじゃあ、食べながら作戦会議ね」
こうして、緊張感のカケラも無い私たちの作戦会議が始まった。