第12話 Gランクプラン⑲【白雪セリカ視点】
「さて、と。大分頭も落ち着いてきたわ。こっちも色々教えてほしいんだけど……」
アンリは目線を私の背後へやり、好戦的な笑みを浮かべる。
「西園寺さんは、どうしてセリカと行動を共にしているの?」
「……」
アンリとシスターの目が合う。お互いに敵愾心全快で、気のせいか火花が散っているような気がする。
無理も無い話ではある。つい先日まで、お互いに全力で殺し合っていた仲だった訳だし。その相手が急に味方だと言われても戸惑うのは仕方ない。でもそれとは別に、シスターとアンリってなんとなく相性が悪そうな気もする……。
「セリカ、あなたから説明して。赤染アンリの蘇生に関しては全てあなたの責よ。私があなたと協力することになったのも、そもそもあなたの意思だしね」
プイ、と顔を横に反らし、腕組みをして私カンケーないアピールを始めるシスター。
「わ、分かってるけどさぁ……」
私は頭が重くなりながらも、シスター達と協力関係になった経緯をアンリに説明した。
♦♦♦
「……滅茶苦茶な展開ね」
「うん、我ながらそう思う……」
説明を聞いたアンリは、何とも言えない微妙な笑みを浮かべて私にそう言った。
「でも、私にどうこう言う権利は無いわね。元々は私もあなたの敵だった訳だし。セリカが納得しているのなら、私は彼女との共闘を受け入れるわ」
「……本当に納得してる?」
「そうね、してるわ。ただ、私から直接彼女に聞きたいことがいくつかあるから、後でセリカには席を外してもらえると嬉しいわ」
「私がいると、駄目な話?」
「うん、駄目な話」
ニッコリと、アンリは微笑う。
……アンリが怒っているところを見たことが無いけど、今の笑顔は多分怒ってるときにする笑顔だ。
「分かった……よ」
「それで。セリカ、あまり時間が無いんだろうから、単刀直入に聞くけど、私に期待していることは何? 知恵と力とさっきあなたは言ったけれど、あれでは抽象的過ぎるわ。あなたが私に期待する、私の役割を教えて」
アンリの目はどこか冷徹だった。人と人との関わりを、利用できるか、価値があるか、意味があるか、その全てを打算で考える目。アンリは自らを私の道具として期待する役割を知りたがっている……。
「知恵としては、Gランクプランの完成と、6つの死亡フラグの回避方法の立案、私の《起死回生》のダウングレードについての考察。あとは、ジェネシスの異能力の持つポテンシャルを最大限引き出す発想。力としては《赤い羊》と渡り合う戦力として求めてる」
「……ダウングレード?」
「私は、かつて未来にいて、時間を巻き戻してここにいる可能性が高い。いや、そうだと思う。でも、記憶の大部分を失っている。だから時間を巻き戻すメリットが無いの。それについてシスター……要とも話したけど、まだ答えは出ていなくて。恐らくは未来のアンリが描いたであろう戦略だと私は考えてて」
「話が飛躍したわね……。ま、いいわ。それについてはゆっくり話しましょう。まずは、そうね。西園寺さんとお話したいから、セリカ、出てもらっていい? ドアの向こうで待機してて。終わったら呼ぶから」
「え、あ、うん……」
「盗み聞きは無しよ?」
「《思念盗聴》は私、持ってないから大丈夫だよ」
「……言うようになったわね」
シニカルな笑みをアンリは浮かべる。別に皮肉で言ったつもりではなかったけど、結果的にそうなってしまったようだ。
「ごめんて」
「気にしてないわ」
「じゃ、出ていくね。時間が押してるから、あまり長時間はやめてね」
「長くても15分ぐらいよ」
「それならいいけど。じゃ、シスター。私は少し席を外すね。喧嘩しちゃ駄目だよ?」
「……それがあなたの意思であるなら、従うわ」
凄い不服そう……。
「アンリも、喧嘩は駄目だよ?」
「はいはい」
軽く流される。物凄く心配だ……。
「じゃあ、後はお願いするよ」
私はポンポンとシスターの肩を叩いて、席を外した。
ちょっと怖いけど、待つしかなさそうだ。
まぁ、言動と行動が予測不能なアルファよりはマシだろう……。多分。
そういえば今更ですが、ポイント、ブクマ、いいね入れてくれた方、ありがとうございます('ω')