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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第12話 Gランクプラン⑬【白雪セリカ視点】

「ふぁあ……疲れましたね……暫く寝ます」

 アルファはお面の向こうで大きなあくびをして、気配を消した。

「お、お疲れ様……」

 七発分、《守護天使》による充填は完了した。これで、ジェネシス切れの心配は少なくとも暫く無くなった。

「終わった?」

 交代で出てきたシスターは面倒くさそうにお面とマスクを脱ぎ捨て、カバンの上に放り投げる。

「何とか終わったよ」

 最終貯蓄後も、アルファは私にジェネシスを渡してくれた。そのおかげで今も問題なく動ける状態ではある。

「じゃあ今から模擬戦ね。凶器化と身体能力強化は良いけど、異能力は使わない方向で。疲れたら休憩はするけど、極力《聖女抱擁》は使わないこと。休憩時間は拳銃の扱い方でもネット動画とか見て勉強して。取り合えず、赤染アンリが起きるまでひたすらやるわ」

「ハ、ハードスケジュール過ぎる……」

「つべこべ言わない。寝なくても死なないでしょ? アルファのジェネシスだって貰ってるんだし。ただでさえスケジュール押してるんだから、それに大体、あなたはいつも――――」

「ごめんなさい、やります。やらせてください……」

「分かればいいのよ」

「これが、シスター流説得術……か」

 鬼のスケジュール管理と激詰めとスパルタ特訓……。アルファとメアリーの優しさが懐かしい。

 遠い目で、私はシスターと模擬戦闘をすることになった。


      ♦♦♦


「もう……無理」

 四つん這いに倒れる私を、冷静な眼差しで汗一つかかず、シスターが見下ろしている。

「気合が足りないんじゃない?」

 12時間ぐらいひたすらぶっ続けで戦った。

 途中15分休憩を三回ぐらい挟んだし、一回は《聖女抱擁》を使ったけど、疲労感が凄すぎてもう何も考える気が起きない。ていうか休憩時間も拳銃の扱い方勉強してたから、厳密にはちゃんと休めてはいない。

「シスターの戦い方、花子と少し似てる……」

 とにかく動いて攪乱して相手に隙を出させ、そこを突くようなやり方。

 異能力無しでも、シスターは十分強かった。センス、とでも言えばいいのか。

「戦い方なんて、どこで覚えるの?」

「さぁ、知らないわ。身体が勝手に動いてるから、それに任せてるだけ」

「天才型かぁ……」

「……あなた、大器晩成という言葉を知ってる?」

「大器晩成? 何かの異能力?」

「……違うわ。長い年月をかけてじっくり熟成して大成する人間のことよ。若くてセンス任せで成功する人間とは対極の人種」

「努力型ってこと?」

「努力型、とも少し違うわね。天才だって努力はする。努力しないと基本的に才能は開花しないから。挫折を知らない天才は、努力が必ず実るとかいう戯言が好きよね。そりゃあ、努力すれば天才なら必ず才能を開花させられるのだから、当たり前の理屈。それを真に受けた数多もの凡人が地獄を見るけれど、天才は彼らの絶望に責任なんて持たない。だから私は天才が嫌い。でもあなたは天才じゃない。大器晩成型よ。そして、大器晩成型は天才とは方向性が違う」

「方向性?」

「天才は“未知”に強い。大器晩成型は“既知”に強い。そこが決定的な違いね」

「未知と、既知……」

「何度も同じことを繰り返して、反復して、経験して成長し、未知を既知に変えながら、全ての既知を熟成しながら克服する。その無限の進化を遂げる人間のことを、大器晩成型と呼ぶ。そして、大器晩成型だけが天才を殺し得る」

「天才を……」

「あなたの《起死回生》には、大器晩成型の人間に通じるものを感じる。繰り返し、経験し、既知を増やして強くなる。あなたは間違いなく大器晩成型よ。“天才”を殺しなさい、セリカ。あなたなら必ず出来るわ」

 シスターは、手を差し伸べてくる。

 私はその手を取り、立ち上がる。

「あ、ありがとうシスター。励ましてくれたんだよね? 結構、元気出たよ」

「そう。ならあと10時間は行けるわね。休みなしで行くわよ」

「……元気、無くなったよ」

 このあとぶっ続けで訓練して私は倒れた。

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