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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第12話 Gランクプラン③【白雪セリカ視点】

「…………変わらないわね」

 まじまじと私を見据え、シスターはそう結論付ける。

「変わらない?」

「さっき言った六つの死の未来に変化はない。……一人の人間に六つも死の未来があるなんてこと自体が異常なんだけどね。ただ、一つ気になることと言えば……」

「?」

「ノイズが酷くなってる。未来は変わらないのに……。何か大きな変化が訪れようとしているのかもしれない」

 どこかの路上で手相占いしてそうな感じの意見だった。

「《未来予知》は基本的に外れることは無いんだよね?」

「そうね。未来を予知した私自身がその未来に干渉するか、《未来予知》を壊す異能力を使うかで回避することは可能だけど」

「……ということは、少なくとも六回はその予知を外させないといけないわけか」

「もっと言うのであれば、《赤い羊》側にも未来を変える異能力者はいる。そいつらが変える未来を上回ることも必要なことね」

「こ、こんがらがってきた。ちょっと考えを整理するね」

「どうぞ」

①《未来予知》で見られるのは、見た相手の死ぬ未来のみで、能力者の意思で自由に観測することはできない。

②《未来予知》で予知された死の未来は原則回避することはできない。

③例外的に《未来予知》を回避する為には、予知された未来を壊すような異能力を使用する必要がある。実例としては時間遡行である私の《起死回生》。予知された死の未来通りに私が死に、その後に時間を巻き戻す訳だから、予知された未来も必然的に変わる。何故なら私は時間遡行後、遡行前と同じ行動は取らないからだ。

④《未来予知》をしたシスターは未来を知っているので、未来を変える行動をすれば必然的にその未来も変わる。だから私が誰かに殺される前にシスター自身が私をなるべく楽に殺そうとするという行動を取っていた。

⑤シスターと私が未来を変えようとしたとしても、《赤い羊》にも未来を変える能力者がいるので、単純に予知の情報を元に自分たちの行動を軌道修正しただけだと、《赤い羊》に情報戦で負ける可能性がある。

「……鍵になるのは、《未来予知》以外の時間干渉能力ってところかな?」

「時間干渉だけじゃない。《赤い羊》側には、確率を観測する異能力者と、運を操る異能力者がいる。こいつらにも未来を変えられる可能性はある」

「それも《未来予知》で見たの?」

「そうよ」

「私の《白雪之剣》で無効化とかできないかな?」

「あなたに剣で刺されている間、《未来予知》が使えなくなるぐらいの干渉しかできないと思うわ。私の予知に干渉したとしても、それは飽くまで私が“見ているだけ”であって、他者の行動に影響を与えるわけじゃない。あなたは他者に殺される訳だし、見てるだけの私に干渉しても意味があるとは思えない。試したいなら止めないけど」

「……ふぅむ」

 あまり勉強とかは得意じゃないんだよなぁ。アンリが目覚めたら、この辺のことも頼りたいな。

「じゃあ次。六つの未来について、詳しく教えて?」

 私はシスターに問いかける。シスターは私が死ぬ瞬間の未来しか見えないから詳しくは分からないと前置きした上で、内容を纏めてくれた。

①黒い雨に打たれて死ぬ未来。

何らかの異能力によって、空から黒い雨が降る。その雨に打たれたら気付いたら死んでいた。詳細は一切不明だけど、黒という色からはSSSが連想できる。超広範囲の大規模攻撃。透の異能力なのだろうか? 《赤い羊》の何者かによる攻撃であることが考えられる。

②透に敗北して死ぬ未来。

私は透と一騎打ちをし、敗北。身体を縦に真っ二つにされて死ぬ。過程は一切不明。

③花子に敗北して死ぬ未来。

漆黒の炎を身に纏った花子に焼き尽くされて死ぬ。

④ゼロ? に敗北して死ぬ未来。

腹部を剣で刺されて死ぬ。その際に私は黒きジェネシスを溢れさせたが、その後どうなったかは分からない。死んだことは確実。何故か私の頭上には0と表示されていた。何の数値かは不明。

⑤ヒキガエルに殺される未来。

頭蓋を粉砕されて死亡。凶器は黒きジェネシスが混ざった血と肉が蠢き、それらによって粉砕されて死亡した模様。恨みと怨嗟がこもった声でヒキガエルと叫びながら死んだらしい。ヒキガエルと呼ばれた人間の顔は黒く塗りつぶされており見えなかったが、私が彼の名前を叫んでいたことから、ヒキガエルだと推定できる。顔が黒く塗りつぶされていた理由は分からない。私が殺される未来はあるけれども、ヒキガエルが誰の姿になって私を殺すのかは未確定なのかもしれない。

⑥骸骨と取り引きして狂う未来。

骸骨に先輩を生き返らせる代わりに、私が新たな《赤い羊》の王として君臨する未来。その未来を選ぼうとし、そのことに絶望して自害する。

「さ、最悪過ぎる……」

 聞くんじゃなかった、と思いたいぐらいに酷い気分になる。吐きそう。

 明日の天気予報とか、星座占いとは異なり、自分の死の未来だ。重さが違う。しかも行動を変えずにいれば原則回避不可の未来。気分が悪くなってきた。

「私があなたを一瞬で楽に殺そうとした理由でもあるわ」

「今となってはそれもアリかもって、少しだけ思っちゃいそう」

「……本気で言ってる?」

「じょ、冗談だよ……」

 半分冗談だよ。そんな本気な目で見つめ返さないでほしい。

「この死亡フラグを回避するだけでも滅茶苦茶大変そうなのに、その上でGランクまで目指さなくちゃならないのか……」

「あなたが選んだ道よ」

「いや、まぁ、そうなんだけどさ」

「ポジティブお化けのあなたでもそんな顔するのね」

「ポジティブお化けて」

「メンタルの強さはモンスターでしょ、あなた」

「……そうなのかなぁ?」

「でも今の話を聞いてまだ、抗う気でいるんでしょ?」

「まぁ、絶望する程ではないかな」

 透、花子、リリー、マザー、そして敵だった頃のシスター。

 全員、私を絶望のギリギリまで追い込んできた。でも、“切り抜けて”きた。

 絶望との向き合い方は一つしかない。自分が絶望するか、しないかを自分で決めること。それさえ決めておけば、死ぬその時までは闘える。そう、信じるほかない。

「はぁぁ……。やるしかない、か」

「ダウナー気味のあなたも珍しい……」

「私にだってそういう時ぐらいあるの!」

 人を何だと思っているのか。ちょっと八つ当たり気味につい、声を荒げてしまった。

「とにかく。頼りにしてるからね、シスター。めっちゃ頼るからね。覚悟してね」

 想像以上に過酷な未来で憂鬱になってしまったけど、協力者がいることはまだ救いだ。

「べつに、いいけど……」

 目をそらして少し頬を赤らめるシスター。頼られると照れるクセは、耐性が無い上に無自覚らしい。

 私はアンリを蘇生しながらシスターを「頼りにしてる」と何度も言ってイジリつつ、暇をつぶした。途中でバレて怒られたのは内緒だ。

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