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±0  作者: 日向陽夏
第2章 殺人カリキュラム【後】 白雪之剣編
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第9話 禁断のタナトス㉑【白雪セリカ視点】

(……本気で、言っているの?)

「本気だよ」

(私を生かしておくメリットなんて――――)

「あなたは……私を助けてくれる。リリーの時も、そして今も」

(…………)

「何より。あなたを消してしまえば、どの道私に未来は無いような気がする」

(どうして、そう思うの?)

「《唯一無二》を受けて、SSSの怖さを……初めて私は、理解したんだと思う。話し合えば、お互いを理解し合えば、分かり合えるって、そう思ってた。でも……そうじゃないって、今はそう思ってる。“真理は絶対に正しい”し、否定することなんて誰にもできない。マザーの語る死の価値に、私はこの異能力を受けて気づいてしまった」

(Fランクの“限界”を悟ったってこと?)

「そういうことになるね。だから先輩はGランクを目指せって言ったんだと思う。FランクではSSSの闇を克服することができない。格上とか格下とか、強いとか弱いとか、そういう次元じゃなくて。SSSはどこまでも正しい。だから、彼らを否定することは最終的に自己否定に繋がってしまう。それを、先輩は分かってたんだと思う。だから、Fランクは飽くまでもGランクになる為の過程に過ぎないということ」

(……本気で、Gランクになれると、思ってるの? 存在しないのに?)

「SSSやSSに近づいてしまうと、Gランクにはなれないんだと思う。でも、Fランクなら、きっと可能性はあると思う」

(それならなおさら、SSSである私は邪魔だと思う)

「あなたが現れなければ、多分私はこの空間で気が狂っていた。終わりがあるのか無いのかも判断することができず、ここに存在し続ければいつかこの異能力が解けるんじゃないかって、勝手に錯覚して。でも、死ぬことで解除できないと分かれば、決断できる。その希望と未来をくれたのは、他でもないあなただから」

(……共倒れになるかもしれないよ?)

「あなたなくして、この先、透と対峙できる気がしない。だって、透はメアリーよりも、マザーよりも、“残酷”だから。Fランクでは透には、きっと勝てない。でも、この先、先輩を追いかける限り、必ず透は私の目の前に現れる。絶対に勝てない相手に、私は勝たなくちゃいけない。でも、それ以前に、私は……」

(……?)


「あなたを、失いたくないから。私達“二人で”なろうよ? Gランクに」


(…………)

「死を否定することなんて誰にもできない。でも、私はあなたと出会えたし、あなたは私と出会えた。私は、あなたに救われたよ。この部屋で独りぼっちだったら、私はもう何も見出せずに終わっていたと思う。でも、あなたを通して私は希望を見出した。一人じゃ無理だった。どうせいつか死んでしまう命だけど、だからこそ、死ぬまでの過程を大切にしようよ。そこにはきっと掛け替えのない価値がある。この独りぼっちの部屋に何十年も閉じ込められて、私はそれを悟ったんだ」

(……どうせ共倒れになるだけだよ)

「それで本望だよ。その時は一緒に死のう。だって私はあなたで、あなたは私なんだから」

(…………)

「それじゃあ、行くよ?」

 私は棺の近くに転がっているナイフを拾いあげる。これを心臓に突き刺せば、この世界は崩壊する。賭けだけど、どんな結果になっても私は納得してる。

(……セリカ。分かったよ)

 観念したように、小さな私は言う。

(《起死回生》のジェネシス消費量は、あなたの持つスノーホワイトジェネシス総量の約半分。どの過去に戻るか、そのタイミングは死のトリガーの直前。もし《起死回生》が成功したら、その時は“すぐ”に《明鏡止水》を使って。そうすれば、少なくともマザーには勝てると思う。あとは半分の力で、全力でシスターを倒した後、アルファの《幸福昇天》に対するあなたの“答え”をぶつければいい。西園寺要の性格的に、戦う順番はマザー、シスター、アルファになると思うから)

「……ほら、やっぱり頼りになる」

(……)

「そういえば、名前のことだけど」

(……?)

「ここから生きて出たら、この先の未来で付けてあげる」

 薄く微笑んで、小さな私にそう伝える。

 小さな私は驚いたように息を呑んだような気がしたけれど、

 これ以上言葉を続ける必要はなく、

 私は深呼吸を一度してから、


 ――――ナイフを心臓に突き刺した。


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