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±0  作者: 日向陽夏
第2章 殺人カリキュラム【後】 白雪之剣編
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第9話 禁断のタナトス⑮【白雪セリカ視点】

「――――ッ!」

「……っ」

 目と目が、合う。

 マザーは驚いたような顔なのに、どこか仄暗い微笑を浮かべていた。

 一瞬の交叉。

 刀を、マザーの首筋目掛けて突く。

「キルキルキルル」

 マザーは黒き剣を以てそれをはじき、火花が散る。

 弾き飛ばされた私の刀はそのまま消滅し、


《白雪之剣》――シラユキノツルギ――


 私はもう一度(白雪之剣)を発動。

 左手で握りながら、さっき弾き飛ばされた勢いをそのまま身体の重心を右足に集中し、回転しながら左手でマザーに刀を振りぬく。

「……随分突っ込んできますね」

 マザーは端的に呟きながら、今度も右手の黒い剣で私の刀を止めてくる。

 鍔迫り合いになり、お互いににらみ合う形となる。

 すり抜ける性質を持つ《白雪之剣》を物体化する《色即是空》は必要ない。SSSのジェットブラックジェネシスのみ、《白雪之剣》は物理的にはじくことができる。

 でも、肉体を破壊することはできない。

 本気で殺そうと思ったら、《色即是空》は必須。

 でも、できれば、殺したくない。

 でも、躊躇していればこちらがやられる。

 迷ってはいけない。

 殺すしか方法がなければ、殺すしかないんだ。

 リリーの時は余裕がなかった。だから、殺すしかなかった。

 だから、あの時は“使う余裕”がなかった異能力を使う。

 《白雪之剣》には、《色即是空》によって具現化したものを除いて、形態が三つある。

 一つ目は、そのままのノーマル形態。白銀の刀身で日本刀の形をしており、触れた異能力を無効化する性質と、SSSのジェットブラックジェネシスをはじく性質を併せ持つ。


 そして、今回は“二つ目”を使う。


 一つ目よりかなりテクニカルな動きが求められる。

 リリーの時は使いこなす自信がなかったし、何より“対SSS専用”と言ってもいい力。

 でも、もう自信がどうとか言ってられるような状況じゃない。

 私は、西園寺さんという人を“殺さず”に戦いを終わらせたい。

 その為には、“この異能力”を使うしかないんだ!

 覚悟を決めろ、私……っ!


 《快刀乱麻》――カイトウランマ――


 一度発動すれば、もう引き返せない。

 《白雪之剣》が白く光り輝き、二つに分裂する。

 その姿をレイピアへと形を変え、二つに分かれたそれを右手と左手でそれぞれ握る。

 形としては、二刀流のレイピア。

 刀身の色は変わらず白銀。

 白銀の刀身は、青白くジェネシスの燐光を帯びてどこか神秘的だった。

 右のレイピアの鍔は金、左のレイピアの鍔は銀だ。

 青い十字の文様が鍔に刻まれている。

 そして、金のレイピアと銀のレイピアは、それぞれ異なる効力を発揮する。

 通常、レイピアは突きに特化した武器で、斬撃はできないことはないけど弱い。

 けど、《快刀乱麻》の形態は対象の殺害や外傷ではない。斬撃にも十分価値がある。

 《快刀乱麻》の効果は――――

「なっ……」

 マザーが驚きの声を漏らす。

 マザーが私の右手で受け止めている黒い剣のジェネシスが、少しずつ、やせ細っていく。

 金のレイピアは受け止めた“ジェネシスのみ”を削り取る効果を持つ。

 但し、SSのパープルまでのジェネシスはすり抜けてしまうので、物理化の《色即是空》が必須となる。

 でも、《色即是空》を使うと“何故か”物凄くジェネシスを消費する。それは時間を巻き戻して生をやり直す《起死回生》と変わらないぐらいに。

 ただすり抜けるものを物体に変えるだけの単純な異能力の筈だから、そんな膨大な量のジェネシスを消費する意味が分からない。この異能力だけ、バランスが不自然だ。

 だから、《色即是空》はなるべく使いたくない。

 ジェネシスの消耗を考えると、《快刀乱麻》は、《色即是空》を使わずに渡り合うのがほぼ前提となる。

 だから、対SSSに特化した形態と言えるだろう。

「遊んでいる暇は無いようですね。最初から全力という訳ですか。それなら、私も容赦はしません」

「初めから容赦する気なんてないくせに」

 私は不敵に微笑う。

「ふっ、バレましたか。では、お言葉に甘えて」

 ――――パチン。

 指を鳴らす音。

 右手で剣を受け止めながら、マザーは左手で異能力を発動する。


 《絶叫崩壊》――ゼッキョウホウカイ――


 《五感奪取》と同じ。精神干渉型の、見えない異能力。

 ただ、見えなくても私に“向かってきて”いるのを肌で感じる。

 《起死回生》で臨死体験を経てから、私の感覚はかつてないほどに研ぎ澄まされている。

 見えなくても、ジェネシスを感じることができている。

 でも、問題ない。

 見えない異能力やあまりにも膨大過ぎるジェネシスを削ることは金のレイピアにはできない。

 私はマザーから三歩距離を取り後ろにバックステップして離れながら、銀のレイピアを横凪に振るう。

「――――!?」

 マザーは驚愕の表情を浮かべる。

 何が起こったのか分からないという顔だ。

 銀のレイピアは、刀身に触れた異能力を“反射”する。


 《白雪之剣》の、《快刀乱麻》形態。

 二刀の、金と銀のレイピア。

 それは、相手のジェネシスを削り、異能力を跳ね返すことに特化した、


 ――――深淵の極みに立つ、SSSを止める為の、Fランクである私の力だ。


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