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±0  作者: 日向陽夏
第2章 殺人カリキュラム【後】 白雪之剣編
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第7話 狂女と聖女 ~revenge~ ⑥【白雪セリカ視点】

ぼんやりとしていた意識が収束し、私は立っていた。

両手をじっと見る。それから、首を触る。うん、斬られてない。ある、ちゃんとある。

「《赤い羊》を倒し、それでもまだ生きていたら“私”が死なせてあげます。シスターにはもう会えませんよ。そしてできれば、デルタも出したくはない……。願わくば、あなた自身の闇に呑まれて死んでくれることを祈ります、セリカ様」

 目の前にはマザー。

 ああ、“ここ”に来たんだ。

 リリー達が現れる直前の時間。

 《起死回生》は万能じゃない。一人の相手に対して一度しか発動できない。だから、もうヒコ助に殺されたら発動しない。油断しないようにしないと。

 驚くほど冷静に、私は巻き戻りを実感した。

 もっと前、殺人カリキュラムが始まる前まで戻れればよかったのだけど、そこまで上手くはいかないらしい。

 ……でも、充分。ここから先の未来は、変わる。ううん、“変え”る。私の手で。

 甘えていた。心のどこかで。結に、赤染先輩に。二人なら何とかしてくれる、と。

 それが私の敗因。私の弱さ。

 ――――でも、もうその“弱さ”は私には無い

「……ああ、それと」

 西園寺さんは不敵に微笑み、言い忘れていたことを付け足そうとしてくる。

「マザーだよね? 知ってるよ」

 私がそう言うと、マザーは驚愕に目を見開く。

「シスターの《未来予知》は正しかったよ。でも、“未来”を巻き戻した“現在”まで見ることはできないみたいだね」

「…………」

 マザーは《思考盗撮》で私を見定めようとしてくる。

「眠いんでしょ? 早く行きなよ。どうせもう“未来”は変わってるんだし、シスターによろしくね?」

「……未来から来たのですね、あなたは。そんな異能は私達ですら持っていないというのに、やはり底が知れませんね……あなたは」

「あなただって時間を止められるんだし、そういう意味ではお互い様なんじゃないかな」

「ふっ……。セリカ様、あなたは素晴らしい。私たちの他に“死の母”という理念を理解できる者がこの世にいる筈がないのに、あなたは私達を理解し、共感してくれた。あなたと出会えたという奇跡に、感謝を。私はあらゆる生を憎んでいますが、あなただけは“愛”していますよ、セリカ様。あなたという人に巡り逢えてよかった」

 そう言ってマザーは微笑む。

「こんな自己矛盾に陥ることになるなんて自分でも驚きですが、どうか死なないでくださいね、セリカ様。あなたは私の手で死なせたい」

「それはこっちのセリフだよ。どうせいつか死ぬのに、わざわざ今死ぬ理由無いでしょ? あなた達の目を覚まさせてあげる。それまでじっくり仮眠してなよ。その間に終わらせるから」

「フフ、“化け”ましたね。手ごわそうで何よりです。それではお言葉に甘えて、仮眠させてもらうとしましょう」

廊下の窓ガラスを剣を召喚して割って、翼をはためかせて外へと消えていった。

 パチン。

 指を鳴らす音が響くのと同時。


 ――――止まっていた時間が動き出した。


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