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±0  作者: 日向陽夏
第2章 殺人カリキュラム【後】 白雪之剣編
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幕間 骸骨と花子①

 ある屋敷に《自在転移》した僕たちは、百鬼零と透さんを寝室のベッドに介抱し、花子ちゃんはヒキガエル君を連れてそのままシャワールームへ行ってしまった。ヒキガエル君の能力は見てて面白いから、こっそり様子を見に行ってみる。

 《人肉生成》――ジンニクセイセイ――

 ヒキガエル君は無表情で花子ちゃんの腕の切断面に掌をかざし、異能を使用する。

 クチュクチュと血、肉、骨、神経が組み合わさる音がして、花子ちゃんの腕が再生する。花子ちゃんは治った腕の感触を確かめるように何度か拳を握ったり開いたりを繰り返して、シャワーでシャワールームの中を洗い始める。

「花子、今の治してあげたんだし、百鬼零に切断された腕……もらっていい?」

 ヒキガエル君はちゃっかり花子ちゃんの切断された腕を持ってきていた。さっきテーブルの上に置いてあったからな……。普通にグロくて笑う。

「気持ち悪いからそれは駄目。骸骨のコレクションでも適当につまんでなさい」

「この前骸骨のコレクションをパクったらバレて喧嘩になった」

「あ、当たり前だよ! 僕の大事なキャサリンをよくも……よくもあんなめにあわせてくれたな」

 会話に割り込むと、二人はゴミを見るような目で僕を見る。

「ネーミングセンスがまず滅茶苦茶キモいし、僕に食われた方が死体も本望でしょ」

「死姦野郎……。モザイクかけて出直してこい」

「お前らにだけは僕のことをどうこう言う資格はないと思う!!」

「ていうか、ヒキガエルはもういいから。部屋でゲームでもしてれば?」

「あ、うん。つーか久々に“父さんの肉”を使ってみたけど超動きづらかった。透さんが死んでくれればワンチャン、透さんの肉を使ってみたかったんだけどな。生きてる人間の肉は使えないから……残念。《食人擬態》を解除してっと」

 ヒキガエル君は異能を解除する。

 ブチ、という肉が破れる音がして、さきほどまでヒキガエル君の形をしていた白衣の男の腹にうっすらと赤い線が入り、それは二つに割れ、その線を割るように“中から”小さな手が現れ、男の腹を引き裂いて“何か”が出てくる。

「ふー、ようやく出れた」

 手首についた血をなめながら、“ソレ”は現れた。

 現れたのは12歳前後の少年。黒髪で利発そうな、どこにでもいるような小学生の年代の少年。透さんに見いだされたSSランクの少年の殺人鬼。いや、食人鬼と言った方が正しいか。父親からネグレクトの虐待を受け続け飢餓に狂い、父親を食い殺したところを透さんに拾われた経緯がある。子供ということもあり、どこまでも常識に囚われない発想と、自由自在な異能を使うのが特徴的だ。《赤い羊》の中で一番トリッキーな殺人鬼だと思う。ま、一番やる気がない殺人鬼でもあるんだけど。ありとあらゆる肉を操る食人異能力者。僕との相性は最悪。無能状態じゃなくても、僕とヒキガエル君がやりあえば普通に負けるのが悔しい。僕の操る死体すら肉として自分の武器に変えてくるとか……チート過ぎるからな。

「ゲームしてくる。何かあったら呼んで。あと冷蔵庫に入ってる生贄は僕のだから」

「誰も食べねえよ……」

 トテトテとヒキガエル君は脱ぎ捨てた父親の肉体を捨てて、二階の自分の部屋へ行ってしまう。時間差で肉は煙のように消えてしまう。

「……で、骸骨。何か私に用?」

 花子ちゃんは鋭くけれどとても冷たい瞳で僕に訪ねてくる。

 相変わらず勘が鋭い。

「いや、まぁ大した話じゃないんだけどね……」

 僕はそう前置きしたうえで続ける。

「あのとき、白雪セリカが《守護聖女》か《聖女抱擁》を使うかの二択を選ばせたあのダブルバインド。見事だったと思う。それを伝えたくてね。本来であれば同時に使えたのに、あの時自分が死ぬかもしれない状況での心理誘導。あれは並の人間にはできない」

僕は花子ちゃんを称賛し、耳元の顔を近づける。

「その見事な心理誘導ついでにもう一つ」

 花子ちゃんは目を眇め警戒心をあらわにするも、僕に殺気がないことは承知しているのか右手の指先がピクりと動いただけだった。


「透さんを“もし次”裏切ったら、そのときは君を殺すからね?」


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