授業中
「ねぇ君、名前何て言うの?」
授業中、集中力の無い僕は窓の外に目を向け眠気と闘っていたら、聞こえてきた抑えた声。
窓の外から声のする方をへと目線を移すと、転校生が僕に向かって小さく手を振っていた。
授業中に堂々と後ろを向けるこの人は凄いと思う。
「日々谷彼方だけど…」
「へぇー彼方君ね、了解。話してないの彼方君だけだったの、話せて良かった~」
ニコニコしながら話しかけてくる。
別に話してなかったとしても、授業中じゃなくても良かったんじゃ。
ていうかもう僕以外のクラス全員と話したのかよ…。
僕なんてこのクラスになって3ヶ月経ったのにまだクラスの半数の人とは喋ってない。
「授業って退屈だよねー。古典だと尚更。体育だったら楽しいのにー」
「体育も嫌い。汗かくし」
「はははっ(笑)彼方君女子みたいなこと言うね」
僕の言ったことがそんなに面白かったのか静かに大笑いしている。
ツボが浅いみたいだ。
目に涙を浮かべ腹を抱えている。何が面白いのか全く分かんない。
「ごめんごめん、あー面白かった」
酷い顔をしていたのか、何故か謝ってきた栗栖。まだニヤニヤが止まってない。
「別にいいけど、何がそんなに面白いのさ」
「わかんない、何かウケた」
と、ドヤ顔で言ってきた。
表情がコロコロと変わる姿が面白くて、僕もクツクツと静かに笑った。
それを見た栗栖がまたさっきと同様大笑いを始めた。
遂に先生の怒号が
「日々谷とえー…栗栖!授業中にイチャイチャしないで集中しろ!」
栗栖との話が面白くて、ついつい授業中だと言うことを忘れてしまっていた。
しかもイチャイチャって…。
「お前ら二人、放課後職員室に来い」
古典の先生が厳しい人だったのが不幸だ。居残りだ。最悪。
「えーやだ!絶対行かない!ね?彼方君」
「え、あ、うん」
いきなり僕に振ってきて、つい言ってしまった本音。
それと反論し始める栗栖にびっくりする先生。
僕達のやりとりを暫く見ていたクラスメイトは爆笑し、教室内は笑いに包まれた。