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執心㈠
月すらも眠りを望むのかと思わせるような淡い光が闇に映し出した収容所は、不気味なる質感を以て孤独の哀切さを飲み砕いていた。
小さな電球の発する暗い明かりに浮かび上がる少年の姿は、眼前の鉄格子に縛りつけられたかのように静止している。
正確には、鉄格子の奥の、恐ろしき美貌を鬼気として放つ女に。
毛先のばらついたダークブロンドの短い髪、赤茶色の大きな瞳、子供のあどけなさを感じさせる、薔薇の花弁に似た唇。その愛らしき存在が、闇に彩られた食虫花に絡め取られていく……そんな錯覚を覚えさせる光景だった。
「また、会ったな」
監房の奥で女の声が低く響いた。
少年はその声に酔い痴れるように目を細める。
「名は何と言う?」
美貌の姿鬼は闇の底で、水の煌めきに似た輝きを放つ目を幼い顔に据えたまま尋ねる。
「……ディーチェ。ディーチェ・ルイザー」
「私を、見ていたな」