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短編(超短編)

カラメルドロップ

作者: 芝田 弦也

『もしもーし♬ 今日も始まる七海の日常日記〜今日は何とーー』

点々と光を発している夜空を際限なく見通すことができる、開けた高台に私はいた。

イヤホンとマイクが一対になったインカムを頭に装着して、携帯端末のソフトの一つ、ラジオ君に投稿する為にこの場所までやって来たのだ。

端末をちらっと覗き込むと、私が発している声がリアルタイムに文字としても表示され、聞くことの出来ない人向けに自動的に変換して流している様子が見受けられた。

リスナーの数を表す、人のシルエットをしたアイコン脇の数字は、今日も0を表示している。



『遂に地元を抜けだしてこの街に来たんだよ。そしてここにーー』

ありのままの出来事を思いつくままに、誰かに向かって声に出している。

でもそれは、今の今まで誰にも届いている様子はない。

ちらちらと何度もリスナーの数を気にかけて見るも、いつまで立っても変わる様子が無い。

楕円形みたいな、卵みたいな形はいつまで経ってもそれ以外に切り替わったことが無い。

いつからこれを始めたっけかな?これに終わりはくるのかな?



『そして今日は初めて、野生のキノコを食べてみたよ! 図鑑と照らし合わせてーー』

声を出せば出すほどお腹が空いてくる。

でも、空腹感よりも誰かに私の声が届いてくれている事を期待する方が上まっていた。

それに、常備できるような食料は手元にないから、そこら辺から調達してくるしかないんだけどね。

今日の放送が終わったら、また食べ物を探しに行こう。



『今日の放送はここまで!……明日こそは誰か聞いてくれるかな?』

言い終わる前に深いため息が出てしまった。

でも、それを咎める人は誰もいないんだろう。

高台から見下ろした街並みはどれも崩壊しており、

生活者の音を一切感じさせない静けさに飲み込まれている。

星と月の光に照らされて、機能していない街が浮かび上がっているだけ。



視界が滲み出してきたから、夜空を見上げることにした。

こんな黒々とした世界に光を発してくれている存在がいるのだから、私も信じ続けよう。

どこかにまだ存在しているであろう、誰かを求めて。

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