恋に落ちる病
芦屋杯2参加用の短編です。
ネタ待ち2週間、構想2日、執筆2時間の2尽くしでお送り致します。
彼女を想うと顔が赤くなる。
心臓が高鳴り、胸が苦しくなる。
見かける度にその思いが強くなる。
これはきっと恋なのだと思う。
「それは風邪よ、いい病院を紹介してあげるわ。」
彼女はそう言い、僕の想いを切って捨てる。
貴女を想うとこんなにもドキドキするのに。
「動悸がするのね、お大事に。」
顔だってこんなにも赤くなっているのに。
「発赤もあるのね、きっと熱も出ているわ。」
胸も苦しいのに。
「呼吸困難の症状も出ているのね、ほら、やっぱり風邪よ。」
そうなんだろうか?
そう思いながらも彼女に紹介された病院に行ってみる事にした。
「あー、これは流行性の恋患いだねー、お薬出しておくから、毎食後、三日間飲んでおいて。」
一通り診察を受けた後、お医者さんはそうのたまった。
え?恋って病気だったのか?
「重症化すると食欲不振とかの症状も出るからね、どんな病気もそうだけど早期治療、早期回復は鉄則だよ。」
はあ、つか流行性って?
「文字通り感染るからねー、感染経路は未だに不明だから対処できないんだけどねー。」
釈然としないが、とりあえず薬をもらって帰宅することにした。
帰宅途中、同年代の異性からの視線が気になった。
何となく皆顔が赤い気がする。
これが流行性恋患いということなんだろうか?
僕も彼女から恋に落ちる病を感染されていたのだろうか?
そして彼女も誰かから感染され、その誰かに恋をしているのだろうか?
で、あるならば、やはり僕は彼女にフラれたということなのだろう。
彼女のあしらい方を思い出すほどに、まったく脈は無かったのだと思い知らされる。
帰宅した僕は、三日間引きこもった。
不思議と涙は出なかった。
処方された薬は、想いを思い出に変え、心痛を和らげると効能が書かれた漢方だった。
恋をすると、人は魅力的になると言いますね。
そんなことも踏まえつつ、短くはありますがこんな作品をこさえてみました。