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藤本教授の青春  作者: イモ子
3/10

その3

                 (3)


 車は藤本教授の知らない道を東に向かって走り続けた。その間、外の風景を眺めた

り、チラチラと女の横顔を見たりしていた。何て奇麗な娘だろう…と改めて思う。こ

んな娘がわしの講義に出席していたなんて全く気付かなかった。

藤本教授は今まで、ぼんやりと講義を行っていた時間を心から悔やんだ。女の横顔を

眺めていると不意に女がチラッと横を向いた。

「どうしたんですか、先生。さっきから私の顔ばかり見て」女は真顔で言った。恥ず

かしさのあまり真っ赤になってしまった。

「嫌だ、先生。そんなに赤くならないで下さい。冗談ですよ、冗談」女は笑いながら

言った。藤本教授は緊張のあまり何も話せなくなってしまった。

「そう言えば、まだ自己紹介もしていませんでしたね。私は3年22組の可額智遊と

申します」女は言った。

「カヌカトモユ?これはまた、カヌカとは珍しい名前ですな」

「ええ、良く言われますわ。変なの、可額なんて外国人みたいって。昔は傷付いたも

のですけど」智遊は言った。

「失礼。わしはそう云うつもりでは無かったのです」

「気にしないで下さい先生。もう、慣れっこですから」智遊は言った。「ところで先

生は中華料理ってお好きですか。今から行く店は中華料理店なんですけど」

「中華料理ですか。あいにく、わしはラーメンくらいしか食べたことがないですな」

「あら、お嫌いなのですか?」智遊は驚いたように言った。

「単に縁がないだけですよ」

「それならば良い機会ですわ。とっても美味しいんですよ」智遊は言った。そして、

その後しばらくは黙って運転に集中していた。


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