第6話 モニカ救出とか美人参謀とか
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椅子に座っている魔人は、自分を見据えるシュンの視線を流しながら、
軽口を叩いた。
「おやおや、上で騒がしいと思ったらお客さんですかな?」
「残念、生憎客じゃないよ」
「ふふっ、おや?そこに居るのはモニカ姫ではないですか?それに、ほ~、これはこれは勇者様に、この国の騎士団団長様まで」
「よもや魔人が居るとは、それにしてもモニカ姫を攫って身代金でも欲しかったのか?」
「ふっ、金なんぞ幾らでもありますよ、もっと別の物を、ね、くっくっくっ」
「何を企んでいる?」
「ふふっ、折角お越し頂いたのでお聞かせしましょうか」
自分達を小馬鹿にしている感じに、ルーミアは怒りを覚えていた。
しかし声を荒げる事無く、冷静な口調で企みを問う。
そんなルーミアの様子に魔人は頬を上げて薄ら笑いつつ、
その問いに対して、自身の企みを打ち明けた。
「私が欲しいのは覇王の証明書ですよ」
「覇王様の証明書だと?」
「そうです、英雄である王の7人が、私の事を覇王だと認めた証明書ですよ、その捺印を頂きにね」
「そんな事出来る訳なかろう」
「ふっ、元英雄など、俗物以下の人間ですよ?もうこの国とモニカ姫の国以外、捺印は頂いていますからねぇ」
「なっ、馬鹿な」
「ふふふ、俗物ではない英雄はモニカ姫の母、あの女王様だけでしたが、まあ、モニカ姫を人質に取ってますからねぇ、くっくっく、この国の王が1番楽だと思い、最後に取っている、と言ったとこですかな」
「覇王様を語るとはなんとも愚かな真似を」
「ふふ、現時点で覇王が現れていないのですから、それまでの間の繋ぎ、とでも思って下さいな」
「ふ~ん、まあそんな事はどうでもいいよ、さっさと掛かって来なよ」
「私は貴方達みたく筋肉馬鹿じゃないのでね、筋肉自慢の人にそれはやって貰いますよ」
軽薄にペラペラと語る魔人に、いい加減うんざりして来たシュンは、
手で来い来いと挑発し、戦闘を開始しようとした。
しかし魔人はその挑発には乗らず、自身の隣にいる盗賊を横目で見た。
魔人の言葉を受けた盗賊は、緩慢な動きで歩き出すが、
どうにも人間的な動きではなく、それを見たフローリアが、ボソッと呟いた。
「アンデッド?」
「ふふふふ、違いますよお嬢さん、これはマリオネット、只の死体じゃないですよ」
「マリオネット!……これまた面倒なスキルを」
何とも怪しげなスキルの名を聞いて、シュンは魔人のステータスを細かく見た。
名前 魔人A 性別 男 年齢 ??? レベル 230
職業 暗殺者 称号 魔人
HP 1990
MP 3790
力 50
魔力 910
体力 31
素早さ 520
賢さ 9500
運 1200
魅力 2100
攻撃力 67
防御力 131
回避力 4520
常備スキル
魔人の心 戦闘時魔力上昇(極小)
傀儡子 アンデッドモンスターを使役出来る(術者が死ぬまで使役モンスターは消滅しない)
暗殺術 防御力に関係なく即死させる
特殊スキル
マリオネット 傀儡子スキルで得たモンスターを自由自在に操れる
魔装備 呪いの装備を装備時その装備の上昇能力倍増
⇒
「なるほど、あいつを殺さないと盗賊も倒せないって事か……」
「はい、どうなさいますか?」
「ん~、あいつ、異常に回避力があるな~」
「回避力がですが?多分それはあの装束の呪いのおかげだと思います」
「魔装備スキルの所為か、なるほど……、あいつは俺が仕留めるから、その間、あっちを頼んだよ」
「畏まりました、では、お先に失礼します……、皆、行きますよ」
「はい」
異常なほど高い回避力を見て、シュンは予定通り自分が、
魔人と対峙する事を伝え、ルーミアには、
操られている盗賊を凌いで置いて欲しいと頼んだ。
その言葉に頷いたルーミアは、ユウ達より先に駆け出し、
ユウ達が後に続いて行った。
「くっくっく、無駄な事を、貴方も戦わないのですか?あぁ、貴方は見た感じ非戦闘員ですか、くっくっく」
「……………」
シュンは駆け出して行ったユウ達を見送り、その場に留まった。
すぐにでも分断作戦を行いたい所だったが、マリオネット化されている盗賊に、
ユウ達がどの程度戦えるのかを見て置きたかったからであった。
そんな事とは思っていない魔人は、安物の服を着て、
見た目もひ弱なシュンを侮り、非戦闘員と捉えて笑いを浮かべるだけだった。
そんな2人の遣り取りを他所に、
ルーミアが槍で盗賊を薙ぎ払って上半身を起き上がらせ、
そこにユウが片腕を剣で斬り掛かり、片腕を切り落とした。
次いでフランの放った火の玉が顔面を捉えて視界を奪い、
エレアが斧で腰半分を斬り抉った。
フローリアとモニカは、補助の魔法でユウ達を援護している。
この連携ならヒュドラクラスのモンスターでも楽に倒せそうな勢いだったが、
やはり盗賊はすぐ回復し、手の持つ剣を、振り回しながら突進して来る。
「ふふふ、いくらやった所で、私を倒さなければ意味はないですよ?」
「まあ、それは知ってるさ、だけど、それもすぐ解決するよ?」
「ふっ、貴方が私の相手でもするおつもりですか?いや、私に勝てるとお思いで?」
「それはやってみないと分からない……ってね」
「なっ、ちっ、……なかなかお速い、貴方は武道家だったのですか、ふふふ、油断を誘って奇襲とは、まぁ、その程度では私を捉え切れませんよ?」
「まあこの程度避けて貰わないとね」
「くっくっく、勇ましいお言葉ですな、そんな台詞いつまで吐けるか楽しみですよ」
「ふっ、その下品な笑いもいつまで出来るか楽しみだよっ……」
「ふふっ、無駄ですよ?くくく、そんな遅い上に鍛錬されていない攻撃など」
侮っている魔人にシュンは、不意を突いての突進から、
右ストレートを繰り出したが、魔人は軽々とそれを避け、
侮る言葉を吐き続けた。
そんな挑発にシュンも挑発で返しながら、もう一度突進を仕掛け、
左右両方の腕でパンチを繰り出す。
だが魔人はそれを見切った様に交互へ避け、余裕の笑みを浮かべている。
2人がそんな戦いを繰り広げている一方で、徐々にユウ達は疲れが見え、
劣勢になりつつあった。
「くっ、こっちは手応えが全くなし、か」
「そうですね、シュン様も……」
「ユウさ~ん、シュンさんの方は信じて~、私達は足止めに精を出しましょ~」
「そうだぞ、ユウが御主人様を信じなくてどうする?」
「はい、そうですね」
「しかし、そろそろ私はMPの方が……」
「私もMPが尽きたら戦いには参加出来なくなります……」
「むう…、ここは私に任せて皆でシュン君の手助けは?」
「お姉様、私達では足手纏いにしかならないと思いますよぉ?」
「うむ、その可能性の方が大きいか、ここはシュン君の言う通り足止めを、くっ、マズイ………」
何度も攻撃を与えて、転ばしている間に息を整えていたユウ達が、
シュンの戦いを見ながら、劣勢なのを感じていた。
しかしそれでも、シュンの事を信じて足止めの任をし続け様とした矢先、
盗賊が寝転んだ状態からクロスボウを装備し、ルーミア目掛けて放って来た。
起き上がっての攻撃しかしてこなかった為、少々油断をしていたルーミアは、
それを避けられる状態ではなかった。
「うっ、……ん?」
「ルーミア様、大丈夫ですか?」
「あ、ああ、しかし、誰が?」
「ふう、お姉ちゃん、油断はだめだめ」
「シュン、君……、た、助かりました」
「いいって、でも魔人の方は?」
「ああ、あそこ、ほら」
「倒したのですか?」
「いや、足払いを掛けただけだから、倒してはないよ」
「よくも、よくもこの私を地べたに這いつくばせてくれたなキサマ、お前だけは許さない、許さんぞぉぉぉ」
クロスボウから放たれた矢を、寸前の所でシュンが叩き落として、
ルーミアは難を逃れた。
連続のパンチを繰り出しながらユウ達との距離を近付けていた為、
最悪のケースは避けられた。
戦いながら誘導されていた事はまだしも、足払いで転ばされた事に対して、
激怒した魔人は、叫びながらシュンに、
左右の手に3本ずつ持ったナイフを一気に投げ付けて来た。
「シュン様」
「サンキュー、やぁぁ、はっ」
「くっ、おい、お前もさっさと立ち上がってこいつ等を攻撃せんか」
素手でも十分叩き落とせると踏んでいたシュンだったが、
ユウが急いで自分の剣を投げ渡してくれたので、それを振るって、
6本のナイフを叩き落とした。
それを見て悔しがる魔人は、のそのそと立ち上がる盗賊に向かって吠え、
主人の命を受けた盗賊は、クロスボウを投げ捨て、
落としていた剣を拾って突撃して来る。
「ユウちゃん、ありがとう」
「あ、シュン様、シュン様がまた素手に」
「大丈夫、俺はあいつの貰うから」
受け取った剣をユウに返したシュンは、心配するユウに微笑んだ後、
迫り来る盗賊の腕に手刀を叩き付け、腕を切り落とすと同時に、
持っていた剣を奪った。
それを見た魔人は、武器を奪われたにも関わらず、何故か高笑いをしていた。
「きゃっはっは、馬鹿め、まさか自らその剣を手に取るとは、かっはっはっは」
「ふっ、武器を奪われて気が狂ったか?」
「くっくっく、気が狂うのはその男の方だよ、その剣には私の呪いが籠められているのだよ、くくっ、その男ももう、私の思いのままだ」
「な、なに?御主人様」
「お師匠様?そっちに行っちゃ……」
「だめですよ~、そ、そんな……」
呪いの剣を手にしたシュンは、頭を下げたまま魔人の方へ、
トボトボと歩いて行った。
そんなシュンの背中に、恋人達が思い思い声を掛けるのだが、
それに応える事はせず、シュンは魔人の傍へと近寄って行った。
「くっくっく、どうやら貴女方は、この男をとても大切に思っている様ですね、ふふふ、そんな大切な男に殺させて上げますよ、ふっふっふ、さあ、その手で殺して上げなさい」
ユウ達を愉悦そうに見ながら、シュンの手で殺させると告げた魔人は、
盗賊に離れる様に指示し、シュンへユウ達を斬る様命じた。
「ああ、殺して上げるよ、お前をなっ」
「ぎゃっ、ぐわぁぁぁ、キ、キサマ、な、何故?」
「ふっ、いい事を教えて上げるよ、お前が覇王の代わりになる事は絶対にない、何故なら俺が覇王だからな」
「なっ、馬鹿な事を」
「まあ信じなくてもいいけどね、どうせお前はここで死ぬんだからな」
「く、くくっ、甘いよ、この距離は暗殺者にとって一番の距離なんだよ、死ねっ」
魔人が指を差したと同時に、シュンはその腕に剣を振り落とし、
自分が覇王だと名乗り上げた。
それを信じない魔人に、もう一太刀浴びせ様としたシュンだったが、
斬り落とされていない手で懐からナイフを取り出した魔人が、
シュンの心臓に向けて一撃を入れた。
「うっ、な、何故貫けん?私の一撃は防御力無効な筈なのに」
「残念、覇王のスキルで俺は、即死も魅了も効果がないんだよ、自分の呪いが憑いた剣で死になっ」
「うがっ……」
シュンの死を確信していた魔人だったが、胸に当たる寸前に攻撃が止まり、
慌てふためく。
そんな魔人に対してシュンは、自分のスキルによって効果がないと語り、
魔人の首を一閃し絶命させた。
残るは盗賊だけだったが、魔人のスキルが解けそのまま床へ崩れて行き、
この戦いに終止符が打たれた。
「シュ、シュン様、シュン様~~」
「シュン君、心配しましたよ」
「お兄様~」
戦いが終わった事で、緊張感が解けた様で、ユウとルーミア、
それとモニカがシュンに駆け寄り、抱き付いた。
その後すぐ、エレアとサラン、フローリアまでも抱き付いて来て、
そのまま揉みくちゃに倒れてしまった。
押し倒されてしまったシュンだったが、彼女達の心配する心と、
好意による想いに、笑顔で皆の頭を撫で、
撫でられた彼女達もまた、嬉しそうに笑い合い、暫くそうしていた。
しかしその後、シュンが覇王である事を知らなかったメンバーは、
土下座して謝って来る事態になり、シュンは自分が隠してただけだからと言って、
謝るのを止めさせ、今まで通りの接し方をしてくれと言い、
彼女達をもう一度頭を撫でた。
それを受けて彼女達は、シュンが覇王である事を隠す努力をすると誓い、
事態は収拾した。
「さてさて、帰ろうか?」
「そうですね~、大分時間が経っちゃいましたし」
「シュン君、帰るのはいいのですが、その剣はどうなさいますか?」
「ん~、これか~、そう言えば魔人の呪いってまだ残ってるの?」
「いや、術者が死ねば呪い自体は消えますが……」
「何か不都合でも?」
「お兄様、一度呪われた武具は、術者が死んでも、魔装備になってしまうんです」
「ふむ?」
「魔装備とはさっきの魔人が来ていた装束の様に効果が高いのですが、普通の人間は装備出来ないんです」
「普通の人は?じゃああれか、魔王とか魔人とかしか装備出来ないんだ?」
「はい、それに魔装備を持ったままじゃ~、街への入場が禁止されてるんです~、威力があり過ぎて危険ですから~」
一旦呪いを掛けられた物は、その後魔装備へと化してしまい、
見る者が見たら、すぐにばれてしまうらしい。
その為魔人も、人目に付く仕事を盗賊にさせていたのだろうと、
シュンは考え、まさにそうであった。
そんな物を持って街に帰っては、あらぬ疑いを掛けられそうだと思い、
シュンは渋々持って帰るのを止めようとした。
「そ、そうか~、俺の武器にしようと思ったけど、だめなら仕方ない、捨てて行くか…」
「いや、御主人様、無闇に捨てるのはいかがかと?邪悪な者が拾ったらそれこそ面倒な事になりますよ?」
「ん~、じゃあどうしようか?」
「そうだ、お母様に許可書を書かせばいいんですよぉ、王の許可書があればぁ、所有も可能な筈ですぅ」
「うむ、そうですね、ここはモニカ様に口添えを頂いて、女王様に許可書を頂きましょう」
「そうすれば大丈夫なの?」
「はい、国のトップが許可書を出せば魔装備の所持も自由になりますよ、あぁ、裏のおじいちゃんも王様から許可を貰って持ってました」
「裏のおじいちゃんが?観賞用にとか?」
「いいえ、違いますよ~、裏のおじいちゃんは魔の鍬で畑仕事をしてるんです~」
「ぶっ、畑仕事って……」
「あー、シュン君はあれですか?魔族なら全て悪いと思っていらっしゃるんですか?」
「違うの?」
「はい、裏のおじいちゃんは元魔王なんですけど~、魔王なら年を取ってもステータスが下がり辛いからなったって言ってました」
「そ、そうなんだ、確かに畑仕事は大変そうだもんな~」
裏のおじいちゃんの話だけではなく、覇者として英雄となった王ですら、
悪事を働き民を苦しめている国の話だとか、
元魔王のおばちゃんが作る、ワインが絶品だとか、
シュンは価値観を変えさせられる話に、うんうんと頷きっぱなしだった。
「なるほどね~、いい人か悪い人かは職業じゃ判らないって事か」
「はい、ですからシュン様、気を付けて下さいね?」
「う、うん、見た目や職業じゃなく、その人の本質を見極めろって事だね?」
「そこだけがシュン君の弱点になりそうですが、大丈夫です、私達が常に御傍に居ますから」
「あ~ずるいです、私が先に言おうと思ったのに~~」
「ふふふ、それは失礼しました」
「ははは、怒らない怒らない、その気持ちだけで凄く嬉しいから」
「はぅぅ、シュン様、えへへへ」
人を見る目を肥やせと、それとなく伝えたユウは、
その後に続く告白をルーミアに取られ、頬を膨らませて軽く怒った。
その様子にシュンは、可愛いと思いながら頭を傍に寄せ、
撫でながらあやし、怒りを静めさせた。
それを見ていた女性達は、自分も自分もと言ってシュンの傍に集まり、
シュンに撫でて貰い、うっとりとするのだった。
「よし、こいつは布で包んで持って帰るとしようか」
「そうですね、今日は少し疲れちゃいましたから、この後の事は明日にしましょうか」
「うんうん、じゃあ、上に居る奴等も持って、帰ろう~」
「はい」
帰ろうと言ってから、大分話し込んでしまい、
今度こそは帰ろうと伝え、皆も返事を返す。
引き返す道中、盗賊に落ちぶれた男達を拾い、
シュンの魔法で外に出て、そこからもう一度魔法で、
ギルドの前にワープし、シュンだけお姉さんに報告をしに行き、
ユウ達はサリィに事を伝え、
モニカを一晩泊まらせる手筈を整えに行った。
「今日は偵察に行かなかったのですか?」
「いや、約束通り行って来たよ」
「そうですか、経過は順調ですか?」
「順調も何も、もう全滅させて来たよ?」
「そうですか、全滅を……、えぇぇ?」
「あ~、はい、これ、女性に見せるもんじゃないとは判ってるけど、一応確認を…」
「は、はい……、この首は間違いなく盗賊のボスの物ですね、それからこれは」
「ふふっ、お目当ての魔人の物ですよ?ちゃんとモニカちゃんも無事だから安心して下さいね?女王近衛参謀術長さん」
「私の正体を何故?」
「詳しい話は歩きながらしましょうか、今、モニカちゃんはユウちゃんの家に居るから、丁度いいでしょ?」
「は、はい…、分かりました」
仕事を依頼して来たお姉さんに、、洞窟から出る前に切り取って来た、
盗賊と魔人の首を見せるシュン。
そして、話す前にお姉さんのステータスを確認し、
裏に何かありそうだと感じたシュンは、カマを掛けて反応を窺い、
動揺を見せたお姉さんを、ユウの家へと誘い、事情を聞こうとした。
ちなみにシュンが見たステータスとは以下の通りだ。
名前 ニキ ジョレフル 性別 女 年齢 28 レベル 687
職業 魔術師 称号 女王近衛参謀術長
HP 5488
MP 10020
力 103
魔力 1002
体力 399
素早さ 690
賢さ 9100
運 2300
魅力 9000
攻撃力 103
防御力 409
回避力 690
常備スキル
魔術師の心 戦闘時パーティーメンバーの攻撃魔法威力上昇(極小) 相手魔法の威力減少(極小)
術式(強) MP消費減少(極小) MP回復上昇(極小)
火炎使い(強) 火属性魔法効果上昇(大) 火属性魔法によるダメージ減少(極小) 水属性魔法によるダメージ増加(極大)
岩石使い(強) 土属性魔法効果上昇(大) 土属性魔法によるダメージ減少(極小) 木属性魔法によるダメージ増加(極大)
特殊スキル
魔力全放出 MPを全て使い属性無視の魔法を使える(使用後死亡)
参謀の罠 戦闘中敵魔法の効果無効確率上昇(中)
⇒
これを見た為シュンは、このお姉さんが隣国から来た使いで、
極秘裏の仕事をさせられていた事は分かった。
そしてユウの家に行くまでの間に、大体の事情も聞き出せた。
それは、表立ってのモニカ奪還は、協定違反にさせられる事必至で、
そこに丁度現れたシュンを捨て駒にして、魔人の出現を公に出来れば、
大義名分の下、討伐隊を編成出来ると言う物であった。
だが、シュンが即解決してしまい、捨て駒にするつもりだったと白状したニキは、
シュンをチラチラと見ながら、どの様に謝れば許して貰えるかに考えを巡らしていた。
「あぁ、1つ言って置くけど~、怒ってないから安心して、折角美人なのにそんな顔されてたら俺の方が悪者みたいに思われちゃうよ、ははは」
「は、はぁ、で、ですけど……」
「ん~、だめか~、まあ美人なんて言葉はいつも言われてるから俺が言った所で効果はないよね」
「えっ?あ、いや、そうではなく、その、……利用されていたのに、怒らないんですか?」
「ん?うん、今言ったけど、怒ってないよ、盗賊は居ない方がいいんだし、モニカちゃんも救えたからね」
「それはそうですけど……」
「それに俺は、ニキさんみたいな美人に頼られて嬉しかったしね、事情は、まあ、どうでもいいよ」
「なっ、そ、そんな…、私は悪者なんですよ?」
「ははは、本当に悪者だったらそんな顔しない筈だよ?よし着いた着いた、さあ、中に入いろう」
「は、はい……」
シュンは本当に怒っていないと感じ取れるニキではあったが、
浮かない表情は拭えなかった。
騙されていた張本人のシュンは確かに怒っていない、
しかしながら別の人間、特にこの国の騎士団団長である、
ルーミアに会うのが怖かった。
それは、ルーミアがシュンの事を、
弟の様に可愛がっているのを見たからである。
国の重鎮であるルーミアが、自分を慕うシュンを騙した上、
国家レベルの事態に巻き込んでしまった事で、重大な叱責、
下手をしたら怒ったルーミアに、
槍をこの身体に打ち込まれてしまうのではないかと言う恐怖であった。
覇王であり、愛するシュンが、そんな事をさせる筈もないのだが、
ニキはまだその事を知らず、ただただ不安に駆られるのであった。
「お兄様、お待ちしていましたよぉ」
「おっ、モニカちゃんが出迎えてくれるとは思わなかったな~」
「へへへ、お兄様にすぐ会いたくてぇ、てへっ」
「おおっと、ははは、嬉しい事言っちゃって~、みんなは?」
駆け寄って来たモニカは、抱っこしてくれと腕を開きながら示し、
シュンはそれを微笑みながら受諾した。
モニカを抱っこしたシュンは、他の女性達はどこに行ったのか聞き、
ニコニコしているモニカが説明してくれる。
「買い物とお兄様のお家を見に行ってます」
「俺の家?」
「はい、洞窟に居る間に建て終わったって、報告がさっき」
「家が出来たのか、俺も見てこようかな、ねぇモニカちゃん、ニキさんに話しといてくれない?」
シュンの家とは、ユウの家の隣に購入した土地に、
ルーミアが手配してくれて、3日前から建設していたのだが、
こんなに早く出来るとは思っておらず、思わず聞き返してしまった。
完成したと聞いたシュンは、抱っこしたままモニカに、
ニキへここまでの事を話て置いてくれと頼み、
自分の家を見に行こうとした。
「え?ニキ?」
「お、お嬢様、ご無事でしたか?」
「うん、お兄様に助けて頂いたのぉ、えへへ、お兄様すっごく強くてかっこ良かったんだよぉ」
「さ、左様でしたか…」
「まあまあ、モニカちゃん、ニキさんには全部話していいから、それともう謝らないでって言っといてね」
「うん、あっ、全部ってぇ、お兄様の秘密もいいのぉ?」
「うん、話て置いて貰った方が後が楽だから」
「はーい、分かりましたぁ、じゃあ、ニキ、そこに座らせて貰ってぇ、モニカのお話聞いてねぇ」
「了解しました」
「じゃあ、モニカちゃん、悪いけどあと頼むね」
「うん、お兄様、すぐ帰って来て下さいねぇ」
「ははは、了解了解、じゃあ、すぐ来るね~」
「いってらっしゃ~~い」
抱っこされた状態で、椅子に座らせて貰ったモニカは、少しがっかりしながらも、
シュンの頼みならと快諾し、代わりに早く帰って来て欲しいと頼んだ。
そんなモニカの可愛いお強請りに、シュンは頭をいいこいいこして、笑顔を向け、
ニキが座ったのを見届けてから、家を出て行った。
「シュン様、見て見て、ほら」
「本当だ、ユウちゃんの家と繋がってる」
「でしょでしょ?それにね、お風呂も大きくなったんですよ~」
「ほ~、って、こらまた広い……」
「うん、みんなで入っても全然不便じゃないですよ?」
「ゴクッ、み、みんなって」
「えへへへ、シュン様、今ゴクッ、てしましたね~?エッチーんだから~」
「い、いや、ははは」
シュンの家を見て回り、ユウの家と繋がっている事を確認したシュンは、
風呂場にも行き、ユウの家にあった風呂場も、改装されている事を確認した。
言ってみればこれは、シュンの家を建てたのではなくユウの家をリホームし、
大きな屋敷にした様な物だったが、ユウもサリィも、
最早家族と言って差し障りがない状態なので、
シュンにとっては悪い気がしなかった。
いやむしろ、喜びの気持ちで一杯であった。
「ふふふ、ねぇ、シュン様…、今日はルーミア様が一緒に夜を明かしたいって言ってました、だからあの、今、少しだけ、その~」
「うん、毎日って約束だもんね、一緒にシャワー浴びながら、し、しようか?」
「はい、えへへへ、シュン様、だ~いすき」
そんな中ユウは、今宵ルーミアが、
シュンと初夜を迎えたいと言っていたと伝え、
もじもじしながらシュンに、今、お約束を叶えて欲しいと訴え、
シュンも願ったりと言った面持ちで、
風呂場にユウを連れ込み、情愛を深めたのだった……
……小一時間後たった頃、シュンを探しにモニカが風呂場を覗き込んだ。
「モ、モニカちゃん……?」
「あ、あわわわわ、モニカ様」
「……ご、ごめんなさい、ごめんなさぁぁい」
すぐ帰って来ると言って置きながら、なかなか帰って来ないシュンを、
ややふて腐るモニカが発見した。
だがその目に映ったのは、浴槽に腰掛けたシュンの身体の上に、ユウも身体を乗せ、
上気した吐息を吐きながら、腰を蠢かしている場面であった。
視線感じたシュンとユウは、揃ってモニカを確認し、テンパった。
しかし、それ以上にテンパったのはモニカの方で、顔を真っ赤にし、
大声で謝りながら、皆の居る部屋に、ダッシュして行った。
「……上がった方がいいかな?」
「ん、ん~、シュン様がもう一回出してから、でいいですか?」
「うん、まあ、何事も中途半端は良くないもんね」
「は、はい、シュン様、もう一回だけお願いします」
モニカに覗き見され、シュンは少し気持ちが萎え掛け、
止めて出ようかとユウに確認を取る。
これまでのユウなら、シュンの言う事は何でも聞いていたが、
火照る身体には勝てず、もう1度だけと、シュンに上目遣いで誘い、
ユウの可愛い劣情にシュンも奮い立たされ、
言い訳がましい言葉を吐いた後、行為を再開させて行った。
余談だが、モニカに見られた後の2人は、
見られる前よりも燃え上がった、らしい……
シュンの家が出来るくだり、説明が無さ過ぎですね…。
もう少し丁寧に書き進めねばと反省してます…。