第4話 初仕事とかレベル上げとか
「ユウちゃ~ん、待ってたよ~」
「エレアちゃん、早いね~、もう来てたんだ」
「うん、ちょっと早く着過ぎちゃったみたいで~、まだ私しか居ないんだ~」
「遅刻するよりかは全然いい事だ」
「おはようございます~ルーミア様、褒めて貰って嬉しいです~」
「ふふ、お前は戦士なのに相変わらずのほほんとしてるな、まあ、戦闘中は違うらしいから構わないか」
「すいませ~ん、性格は直せないです~」
ギルドの中に入ると、女戦士が1人居て、ユウを見るなり声を掛けて来た。
ユウのパーティーメンバーの1人で、名前はエレアと言うらしい。
そのエレアは、ルーミアにも話し掛け、女性3人で話が盛り上がっていた。
その間シュンは何をしていたかと言うと、ステータスを覗き見て、
情報を収集していたのだった。
名前 エレア モスオレヤ 性別 女 年齢 15 レベル 11
職業 戦士 称号 見習い戦士
HP 129
MP 0
力 32
魔力 2
体力 55
素早さ 12
賢さ 5200
運 5720
魅力 8900
攻撃力 72
防御力 115
回避力 7
常備スキル
戦士の心 戦闘時パーティーメンバーの攻撃力上昇(小)
堅守 戦闘時防御力上昇(小)
斧使い 戦闘時斧を装備中攻撃力上昇(大) 鞭によるダメージ増加(極大)
特殊スキル
暴神化 戦闘時攻撃力上昇(大) 命令拒否確率上昇(極大)
シュン クルスへの恐れ シュン クルスがパーティーメンバーの際金縛り状態に陥る確率上昇(小)
⇒
「なるほど、見習い戦士か、って俺、怖がられてるのか……」
「シュン君、どうかなさいました?」
「あ、いや、ちょっと飲み物取って来るね」
「それなら私が…」
「ああ、いいよ、そのまま話しててよ」
自分の事を怖がっている事に、少し凹んだシュン。
その様子を見たルーミアが心配するが、シュンは何でもないと言って、
その場を離れた。
シュンが離れてすぐに、女魔法使いも来た様で、会話の輪の中に、入って行った。
飲み物を頼んで待つ間、女性達の席を眺め、魔法使いのステータスも確認した。
名前 サラン モレザン 性別 女 年齢 17 レベル 11
職業 魔法使い 称号 見習い魔法使い
HP 39
MP 133
力 2
魔力 59
体力 10
素早さ 19
賢さ 6900
運 2660
魅力 8900
攻撃力 12
防御力 25
回避力 39
常備スキル
魔法使いの心 戦闘時パーティーメンバーの攻撃魔法威力上昇(極小)
術式 MP消費減少(極小)
火炎使い 火属性魔法効果上昇(大) 水属性魔法によるダメージ増加(極大)
特殊スキル
魔力全放出 MPを全て使い属性無視の魔法を使える(使用後死亡)
シュン クルスへの恐れ シュン クルスがパーティーメンバーの際金縛り状態に陥る確率上昇(小)
⇒
「あちゃ~、こっちも怖がってるのか…」
魔法使いのステータスを確認した所、案の定シュンの事を恐れている事を知った。
飲み物を貰った物の、怖がられている女性が2人も居て、
戻るに戻れなくなってしまう。
そんな所に、昨日買い取りをしてくれたお姉さんが現れ、
シュンに話し掛けて来る。
「おはようございます、残りの10万ゴールドは本日ユウさんのご自宅にお届けしますね」
「あ、ああ、はい、どうもです」
「うふふ、今日もあんな凄い素材をお持ちして来てくれるのですか?」
「えっ、あ、今日はユウちゃん達のレベル上げがメインだと思うんで」
「あら、そうでしたか、うふふ、そうだ、時間があればでいいんですけど、1つ仕事を…」
「仕事?」
「はい、この街から6時間くらい歩くとある町まで、野菜とか薬を売って来て欲しいんです」
「それって~、行商してくれって事?」
「はい、最近頼んでいた人が引退しちゃいまして、他に頼める方が居ないんです」
「頼める人が居ない?」
「はい、残念ながら信用できる人が居ないんですよ…」
どうやらこの街は、騎士団が強すぎる為、
平和過ぎて高レベルの者が余り居ないらしい。
しかも高レベルの者が居たとしても、チンピラ紛いの者しか居なく、
行商は頼めないとお姉さんは言う。
その点シュンは、勇者であるユウに大分懐かれるほどの人物で、
頼りになると、お姉さんは判断したらしい。
「まあいいけど~、仕事って言うからには報酬とかあるよね?」
「はい、町での売れ方次第ですけど…」
「なるほど、出来高か、まあいいよ、その仕事引き請けたよ」
「あ、ありがとうございます、では、店の外に場所と積荷を用意して置きますので、どうかお願いしますね」
「うん、じゃあ、ユウちゃんにも伝えないと、おっ、もう1人来てたか」
お姉さんと話をしている間に、もう1人、女僧侶も来ていて、
シュンが戻るのを待っている様だ。
だが談笑をしながらなので、シュンはすぐには戻らず、
女僧侶のステータスも一応確認する。
名前 フローリア ララウ 性別 女 年齢 16 レベル 11
職業 僧侶 称号 見習い僧侶
HP 77
MP 102
力 13
魔力 35
体力 30
素早さ 20
賢さ 7200
運 660
魅力 8900
攻撃力 33
防御力 45
回避力 26
常備スキル
僧侶の心 戦闘時パーティーメンバーの回復魔法威力上昇(極小)
吸術 MP自然回復力上昇(極小)
木霊使い 木属性魔法効果上昇(大) 金属性魔法によるダメージ増加(極大)
特殊スキル
奉身奇跡 死亡したパーティーメンバー全て蘇生(使用後死亡)
シュン クルスへの興味 シュン クルスがパーティーメンバーの際興奮状態に陥る確率上昇(小)
⇒
「ん?怖がってると思ったんだけど違うみたいだ、でも興味って?……まあいいか、ユウちゃんもこっち見てるし、行くか」
女僧侶は他の2人と違い、シュンの事を怖がっていないみたいだ。
だがいまいち分からないのは、興味と言う意味で、
何を持っての興味なのかまでは、見当がつかなかった。
それと、ステータス内に書いてある、木属とか金属性の魔法と言う意味も、
ユウかルーミアに後で聞こうと考えながら、戻って行った。
「シュン様、みんな揃いました、早速行きましょうか」
「うん、でも行商の仕事を頼まれちゃって、どうしようか?俺だけ町に売りに行って、ユウちゃん達はレベル上げに行って来る?」
「行商の仕事を任されたんですか?凄いです~、私達も一緒に行きたいです」
「うむ、シュン君なら1人でも問題ないと思うが、一応私も付いて行くとしよう、悪徳な商人に買い叩かれては意味がないしな」
「それはありがたい、それに、レベルを上げるだけだったら、俺が高レベルのモンスターを倒しに行けばいいしね」
「確かにその方がレベルを上げるだけ、なら効率はいいでしょうが、基本的な戦い方は学べません…」
「あ~、なるほど、でもさ、俺もその基本が全く出来てないんだよね~」
「シュン様はその強靭なお身体があるじゃないですか、ただ殴るだけでも十分じゃ?」
「ええ、私もそう思いますが?」
レベルだけ上げればいいって物じゃないと、ルーミアに言われ、
納得したシュンだったが、自分も基本は出来ないと告げる。
その言葉にユウは、笑いながらシュンなら殴るだけで十分だと語り、
ルーミアも首を縦に振り肯定する。
「そ、そうか~、まあ、みんなの見ながら学ぶとしようかね」
「え~、シュン様に見られながらだと緊張しちゃいますよ~」
「コホン、戦闘は遊びじゃないので、真面目にお願いします」
「は、はい、すみません……」
「まあまあ、危なくなったら俺が護るからさ、無理しない程度にやろうよ」
「はい、シュン様に護って頂きますね~、えへへへ」」
「ユウ様…、ま、まあ、行きましょうか」
町に行く途中にも、低レベルだがモンスターが出るらしく、そこで基礎を学びつつ、
仕事を終わらせる事となり、シュン達一行は町へ向けて歩き出した。
「どんなモンスターが出てくるの?」
「そうですね、この辺りなら大ウサギとか大ウシ、大アリとかですね」
「ウサギとウシはお肉を残す事もあるんですよ」
「へ~、じゃあ、出たら夕食に食べようか」
「そうですね~、楽しみです」
馬車に揺られながら、シュンはどんなモンスターが現れるか問い、
ルーミアが3種類のモンスターを上げる。
するとユウが、大ウサギと大ウシは肉を残すと教え、
シュンは夕食用に手に入れようとする。
しかし、モンスターは1匹も現れず、無事に町へ着いてしまった。
「なんも出なかったね」
「そうですね、まあ、洞窟以外は余りモンスターは出ませんから」
「そうなんだ、取り敢えずはこれを売っちゃおうか」
「はい、そうしましょ~う」
騎士団団長のルーミアが居る事によって、ぼられる事無く積荷を売ったシュン達は、
5万Gを持って、街に帰還する事にした。
帰りも6時間掛けるのはきついと言う事で、シュンは魔法を使って、
ギルド前に飛んだのだった。
「あら、もう行って帰って来たんですか?」
「うん、行きは馬車で行ったけど、帰りは魔法を使って帰って来ちゃったよ、はい、これ」
「そうでしたか、はい、どうもありがとうございました、少々お待ち下さいね」
街を出て7時間程度で帰って来たシュンに驚くお姉さんだったが、
魔法を使って帰って来たと聞き納得する。
そして、売上金を確認し、5千Gをシュンに手渡した。
「1割が報酬となりますので、はい、お疲れ様でした」
「どうも~、明日も同じ仕事ってある?」
「いえ、毎日はありません、また1ヵ月後くらいですかね」
「そっか~、うん、分かった、じゃあまた」
「はい、また宜しくお願いしますね」
ギルドから出たシュンは、レベル上げに行くには時間も微妙だと思い、
本日は解散する事にした。
それにルーミアも同意し、レベル上げは翌日となった。
そしてシュンは、ユウと一緒に帰宅し、夕食の時間までイチャイチャし、
寝る時もまた同じベッドの上寝つつ、愛を交わして行った。
そして翌日となり、サリィに起こして貰ったシュンは、またもやギルドに赴いて、
みんなと集合した。
そして本日は、街の近くにある洞窟へと向かう事となった。
「結構遠いの?」
「いえ、すぐ着きますよ」
「ならいいね~、お昼に一回帰って来ようか?」
「はい、そうですね」
「よし、じゃあ行こう」
昼には一回帰ってくる事を確認して、街を出た。
そして10分くらい歩いた所に洞窟が見え、入り口前にシュン達は立っていた。
「ここがそうです」
「どんなモンスターが出るの?」
「ん?、ここには、大サソリとか、大毒ガエル、後稀にサラマンダーが出ると思ったが」
「サラマンダー?」
「でかい火を噴く大サンショウウオです~」
「火に耐性があるので、私は一番苦手なんです」
シュンの質問に、女僧侶のフローリアが答え、更に疑問を口にしたシュンへ、
今度は女戦士のエレアが答えた。
そして、女魔法使いのサランが、火に耐性があるサラマンダーは苦手だと告げた。
「そっかそっか、まあ、お姉ちゃんが居るし、大丈夫でしょ」
「はい、それにシュン様も居ますし、昨日と違って不安は全然ないですよ」
「ははは、まあ、でも気を抜かずに頑張ってね」
「はい」
シュンの激励に、4人が威勢良く返事をし、洞窟内へと入って行った。
洞窟内は歩き易い様に整備されていて、初級者用のトレーニング場らしい。
取り敢えずは敵に出会うまで、テクテクと洞窟内を歩き回り、
小部屋があるのでそこへ足を踏み入れると、
大サソリが3匹と大毒ガエル2匹に出くわした。
「むむっ、出ましたね」
「行きますよ~」
「毒には気を付けろ、回復が間に合わなくなる可能性があるからな」
「はい、では私が先に……火の玉よ、飛んで行け」
敵を確認してすぐ、前衛にユウと戦士のエレア、
そのすぐ後ろに僧侶のフローリアが、
そして更に後ろへ魔法使いのサランと言った具合に陣形を組み、
サランの先制攻撃で戦闘が開始された。
その様子を心配気に見守りながら、シュンは敵のレベルを確認する。
名前 大サソリ 性別 雄 年齢 10 レベル33
職業 大サソリ 称号 なし
HP 440
MP 0
名前 大毒ガエル 性別 雄 年齢 6 レベル31
職業 大毒ガエル 称号 なし
HP 290
MP 25
「レベルは大サソリが33で大毒ガエルが31か、ユウちゃんだけでも大丈夫そうだね~」
「いえ、シュン君、レベルだけで判断すると危ないですよ?」
「そうなの?」
「シュン君はヒュドラと戦ったと聞きましたが、その時ステータスは見られましたか?」
「うん、初めての戦闘で訳も分からず覗いてたな」
「その時に見たステータスと、我々人間との違い、覚えていますか?」
「違い?……ああ、男女じゃなくて雄雌表記だった事?」
「ち、違います」
「そうじゃないのか~、あっ、力と体力が以上に高かったな~、て事は」
「はい、モンスターはレベル以上に能力が高い時があるのです、まあ、ヒュドラの様なモンスターに会うのは極稀ですが」
「極稀か…それはやっぱり運が関係してるんだろうね~、俺12しかないし」
「そ、それは、そうかも知れませんね……」
レベルが30台の相手ならばユウだけでも平気だと高を括っていたシュンに、
ルーミアは注意を促した。
人とモンスターの違いを教わりながら、自分の運のなさに嘆き悲しむシュン。
それを可哀相な目で見るルーミアだったが、ユウ達の方から悲鳴が聞こえ、
2人はハッと顔を上げる。
「助けて下さーーい」
「ちょっと、敵はあっち、あっちだってば」
「エレアさん~、私達は見方ですよ、きゃっ」
「おいおい、仲間割れか?」
「いえ、あれは…、暴神化スキル、言うならバーサーカー状態ですね」
「あ、ああ、命令拒否ってバーサクの事か、って、やばいな…」
「はい、我々も行きましょう」
大毒ガエルにサランが先制の火の玉を当て、
フローリアのメイスによる一撃で屠ったまでは良かったが、
ユウとエレアが大サソリ3体に挟まれ、残る大毒ガエルが、
サランに突撃して来たのを境に、ユウとエレア、
フローリアとサランの二手に分断され、乱戦状態になっていた。
その状態に危機感を感じたエレアが、暴神化スキルを発動し、
大サソリ1体を斧で薙ぎ倒し、
サランに体当たりをしようとしていた大毒ガエルに、
その斧を投げ付け倒した。
その間にユウが大サソリを1匹屠っていたが、事態は修羅場になっていた。
魔法を唱え様としていたサランの方にエレアが駆け出し、
殴り掛かっていたのだった。そうなるともう、敵どころではなく、
サランは走りながら逃げ回り、ユウとフローリアは、
懸命にエレアを取り押さえ、大サソリを指差して向こうだと指示していた。
「シュン様、モンスターの方をお願いします、私はエレアを正気にさせますので」
「う、うん、おっけ~」
ルーミアがユウ達の方へ駆け出して行ったのを見届けてから、
シュンは逃げ回っていたサランを自分の後ろへ来させ、
庇う形を取った後、正拳突きを大サソリにぶち当て、粉々に粉砕した。
それを見たユウとルーミアは、感嘆していた。
「はわぁぁ、す、凄いです……」
「なっ、さ、流石シュン君…、拳1つで粉砕してしまうとは…」
「……凄過ぎです」
「………規格外だ、やはりあたしのご主人様はあの人しかいないな…」
「うーー、あーー、ふんぬーーーー」
「いやぁぁ、ルーミア様、助けて下さい~~」
「あ、ああ、こら、正気に戻れ」
助けられたフランも感嘆していたが、フローリアだけは意味深な発言をしていた。
そんな中唯一、エレアだけは狂気の瞳のまま、
ユウとフローリアの羽交い絞めから逃れ様と、どたばたと暴れていた。
余りの暴れっぷりに、ユウも押さえが効かなくなりそうになり、
ルーミアに助けを求め、ルーミアは、手に持っていた小さな杖で、
ポコッとエレアの頭を小突いた。
するとどうだろう、狂気じみていたエレアは、正気を取り戻し、
ポカンとしていたのだった。
「はれ~?みなさん、どうしたんですか~?」
「ど、どうしたもこうしたもあるか!またお前、凶暴化したんだよ」
「あらら~、お怪我はありませんでしたか~?」
「うむ、エレア、今日はシュン君も私も居る、暴神化スキルを使わなくても大丈夫だから」
「あっ、はい~、かしこまりました~」
「一昨日は大変だったからね~、エレアちゃんに投げられちゃったし」
「投げられた?ま、まさか…」
「はい、シュン様に会った場所までぶん投げられちゃったんですよ、暴神化スキル、怖いですよね~」
何故あんな所にユウ1人だけ居たのか判明し、
シュンも暴神化スキルの危険さを、改めて知った。
笑い話にしているユウに、シュンも苦笑いで応えていた後ろで、
サランはシュンの服を摘んで、何か言いたそうにしていた。
そんなサランの合図に気付いたシュンは、振り返ってサランの顔を見て、
どうかした?と声を掛けた。
「あ、あの、ありがとうございました」
「ほえ?ああ、いいっていいって、それよりも、暴神化スキルは何とかならないもんかね?」
「そうですね…私が居る時なら対処出来ますが、今のままではちょっと……」
「命令拒否の確率って固定?」
「??どういう意味ですか?」
「ああ、だからさ、見た所、命令拒否確率が極大みたいなんだけど、下げる方法とかさ、ないかな?」
「それでしたら、レベルが上がれば下がっていく筈です」
「そっか~、じゃあさ、まずはレベルだけ上げちゃおうか?」
「シュン様が強い敵と戦ってくれるって事ですか?」
「そうそう、そうすればバーサーカーになっても指示が頭に入ると思うし、基本は俺と一緒に学べばいいんじゃないかな?」
「そうですね、基本よりも危険を避けた方が無難ですね、了解しました」
「みんなもそれでいいかな?」
「はい」
ルーミアが初め提案した、基本が先と言う意見を覆す事になって、
少し悪いと思ったシュンだったが、ルーミアは快く承諾し、
シュンは安心した。
そして、皆にもそれでいいかと問い、皆は口を合わせて了承し、
帰るには少し早かったが、一度街に帰り、計画の練り直しとなった。
「ここの洞窟にはどんなモンスターが出るの?」
「ここにはレベルが300程度の大赤アリと大青アリが出ます」
「レベル300か、じゃあ俺とお姉ちゃん以外は見学かな?」
「はい、楽させて貰っちゃいますね~」
「ははは、いいよ、その代わり夜に一杯お礼させて貰っちゃうよ?げへへへ」
「はい、いいですよ~」
「コホン、シュン君、行きますよ?」
「あ、う、うん、おっけ~」
少し早めの昼食を取っている時に、行商で訪れた町から1時間離れた場所に、
もう1つの洞窟があると聞き、シュン達はそこへ来ていた。
そして敵の確認をして、ユウとちょっとしたイチャイチャをしてから、
洞窟内へと入って行った。
その洞窟は余り整備されておらず、滅多に人も来る事がないと教えられた。
「ここに出る大アリは何も残さないので、儲けがない上に、レベルが高いから人が来ないんですよ」
「なるほど、まあ、適当に倒してレベルだけ上げちゃおうか」
「はい」
洞窟内を回って5時間、そこそこレベルも上がって引き返すシュン達。
そして帰って来たシュンは、ユウとイチャイチャしたり、
ルーミアと甘いキスをしたり、サリィに甘えたりと、
5日間同じ事を繰り返していた。
シュンがこの世界に来て1週間経ち、ユウ達もレベルが300近くなった。
そして日課となった洞窟内で、怪しい扉を発見し、
中へ入ってみるとそこには大きな女王アリが居て、
部屋に入るなり大量の大アリがシュン達に襲い掛かって来た。
「うおっ、なんだなんだ?」
「こ、ここはボス部屋ですね、洞窟には必ず1匹、出て来るモンスターより格上のボスが居るんです」
「そっか、くそ、ユウちゃん達、大丈夫?」
「はい、みんなでなんとかします」
「自分の身は自分で守るわ」
「あの女王アリの方を~、お願いします~」
「やっ、このっ」
「シュン君、私はサランの助太刀に行きますので」
「分かった、俺は女王を倒してくるよ」
大量の大アリに襲われている最中、ユウ達は自分で何とかすると伝え、
シュンを女王アリに向かわせた。
部屋中をアリで覆われている為、進み出れないシュンは、
片っ端から殴り捨てて道を開けようとした、
しかし、次から次へと現れてくる為、上手く前へ進めずにいた。
「ちっ、遠距離からの攻撃方法があれば……、そうだ」
大アリを粉砕しながらシュンは考えを巡らし、1つの方法を思い付く。
それは、前にサランが見せた魔法の打ち方を真似して手を前に突き出し、
魔力を打ち出すイメージをした。
するとその手からゴウっと魔力の玉が飛び出して行って、
女王アリが一瞬で破裂したのだった。
「今の魔法?」
「なんて出鱈目な威力……」
「シュン様凄過ぎです」
「本当に~凄いですね~」
親玉が破裂したと知った大アリ達は、我先にと逃げて行き、
ユウ達はシュンの放った魔法に驚愕していた。
そんな中サランだけは、目を輝かし、シュンを熱い目で見ていた。
「あんな凄い魔法見たの初めてです、ど、どうか私を弟子にして下さい」
「弟子にって、俺、人に教えれるほど優れた人間じゃないよ?」
「そんな事ないです、どうか、どうか私を一人前の魔法使いにして下さい、お願いします」
「ん~、どうしたもんかね~」
怖がられていたはずのサランに、急とも言える弟子入りを直訴され、
困惑してユウとルーミアの方を見るシュン。
その視線を受け、ユウがサランの身の上話を始めた。
「あの、シュン様、サランさんが魔法使いとして私のパーティーに入ってくれた理由なんですが」
「うん?」
「サランさんの弟さんが大変な病に掛かってしまって、それを治す薬代を、何とかしようとこうして修行をしてるんです」
「ふむふむ」
「早く強くなれれば、それだけいい素材とかを集め易いので」
「それでお金を貯めようと」
「はい、ですからあの、私達の町って、魔法使いが凄く少なくて、教えてくれる人が居ないんです」
「お姉ちゃんも魔法使えるんじゃないの?」
「残念ながら…、私が使えるのは水と木の回復魔法だけでして…、サリィ様なら少しは使えますが、元勇者であるサリィ様が出張るのを王がいい顔しないので……」
「そっか~、ねぇサランさん、サランさんは俺の事怖い?」
「へ?あ、そ、その、初めの頃は…、でも今は全然怖いと思いません」
「ははは、そっか~、なら、一緒に魔法の勉強、しようか」
「は、はい、ありがとうございます、ありがとうございます」
「いいっていいって、それに俺が教えるんじゃなくて、一緒に勉強して行くだけだからね」
「はい、それで十分です、宜しくお願いします、お師匠様」
「お師匠って……」
「ふふふ、いいじゃないですか、可愛い弟子が出来たのですから呼び方くらいは」
ユウの話を聞き、懸命に頭を下げるサランに心打たれたシュンは、
サランの弟子入りを認めた。
その際サランにお師匠様と呼ばれ、歯痒い気持ちに襲われたが、
ルーミアもそのくらいいいじゃないかと言って、
呼び方を改めさせるのを止めさせた。
そう言われて仕方ないと思ったシュンは、女王アリが残した羽を拾い、
一旦街へ帰ろうと言い、皆もそれに従った。
「大女王アリの羽ですか、これまたレアな素材をお持ちしましたね」
「レアなんだ、それはいくらで買って貰える?」
「これは1万Gですね」
「なら、引き取って貰うね」
「はい、では少しお待ち下さい……、はい、どうぞ」
「どうも」
女王アリが残して行った羽がレア素材らしく、
またもや高価な値段で引き取って貰えた。
そして、その金を受け取って、ユウ達の下に戻ろうとした所、
今まで見た事もない女性に声を掛けられた。
「あの、少しいいですか?」
「はい?どうかしました?」
「あの、お仕事を1つ頼みたいのですが」
「仕事?まあいいけど~、ちょっと待ってて」
真っ白なロングヘアーが印象的な、美人のお姉さんに声を掛けられたシュンは、
ドキっとしながらも、平静を装い何事か聞いた。
するとその美人のお姉さんは、仕事を頼みたいといい、
近くのテーブルへ誘った。
その誘いに応える前に、シュンはユウ達の下に行き、
今渡された1万Gを手渡し、昼飯まで装備を見て、買ってもいいと伝えた。
「本当ですか?」
「やった~、ユウ様、行きましょう?」
装備を買っていいと伝えられたユウ達は、驚きながらも喜び、
駆け足でギルド内から出て行った。
それを見届けてからシュンは席に座り、白髪美女の話を聞くのだった。
まだ4話なのにヒロイン出過ぎですね…。
ご指摘のあった誤字の修正しました。