第2話 ユウのパーティーメンバーとか女騎士とか
連投です。
お気に入りにして下さった方有難う御座います。
「あ、見えて来ました、あの街です」
「結構すぐに着いちゃったね~、もうちょっとデートしてたかったな~」
「わ、私も、もっと覇王様とデートしたいです」
「嬉しいな~、あぁ、でもユウちゃん、そのさ、覇王様って止めない?」
「えっ、だめ、ですか?」
「ん~、ほら、あんまり俺が覇王なのを公表したくないって言うか、ぶっちゃけ、名前で呼んで欲しいな~って」
「そ、そうですか、解りました…、じゃあ、シュ、シュン様、でいいです?」
「ん~、どうしても様は付くんだ?」
「はい、いくら恋人にさせて頂いたからと言っても、シュン様は偉いお方なのです、ですから」
「まあ、うん、ユウちゃんがそう言うならいいよ、ユウちゃんの好きにさせて上げる」
「ありがとうございます、えへへ、好きにさせて貰っちゃいました」
街の手前まで来た所で、デートの終わりを寂しむ2人。
そんな会話の中シュンは、ユウに覇王様ではなく名前で呼んで欲しいと頼んだ。
そんな願いにユウは、やや言い淀みながらも名前で呼び、シュンを喜ばす。
しかし様付け直らずその事を指摘するが、
どうしてもそれだけは譲れない様だったので、
シュンは諦めつつ偉そうに、好きにさせて上げると吐き、
何故かその言葉に表情を緩ますユウだった。
「あ、あの、ここで一回降ろして貰っていいですか?」
「ん?この大きな建物がユウちゃんの家?」
「あ、違います、ここはギルドです、私だけ飛ばされちゃったんで、パーティーメンバーが戻ってるんじゃないかと思いまして」
「ああ、そっか、うん、いいよ、俺も一緒に行っていい?」
「はい、みんなにもご紹介したいですし」
「じゃあ行こうか」
レンガ造りの建物の入口前に降りた2人は、そのままその中へ入って行った。
中に入るとそこは、酒場の様な雰囲気で、何台かあるテーブルは埋まり、
そのテーブルにはパーティーずつで、会話をしている様だった。
ユウはその中の1つのテーブルに、自分のパーティーメンバーが居た様で、
そのテーブルに近付いて行った。
「あ、あの、すいませんでした」
「ユウちゃ~ん、大丈夫だった~?」
「ふっ、どうやら無事だった様ね」
「ユウ様は勇者様ですからすぐ帰って来てくれると思ってましたよ」
ユウが向かったテーブルには、女戦士と女僧侶、それに女魔法使いが座っており、
ユウを確認するや、皆安堵した表情で出迎えていた。
「全く、だからガキのお付きは嫌だったんだよ」
「ああ、勇者つっても所詮女だしな」
「そうそう、俺達のお荷物にしかなんねーつーの」
隣のテーブルに座っていた、戦士らしき男と、武道家っぽい男に、
ヤンキー染みた男も、ユウのパーティーメンバーらしく、
女のパーティーメンバーとは違い、口悪く出迎えた。
「あぅぅぅ」
「ユウちゃん、あれも仲間?」
「おい、兄ちゃん、俺達が仲間?笑わせんなよ」
「おおよ、俺達は王様から言われて、その勇者様のレベルアップを手伝ってるだけだ」
「そうそう、王様の命令じゃなきゃ、そんなションベン臭い女の手伝いなんかしねーってーの」
「はぅぅぅ、グスン」
「そっか~、そいつはご苦労なこって、ユウちゃん、こんな奴らの言う事なんか気にしないでいいからね」
「うぅ、シュン様」
「おいおい、だれがこんな奴らだって?」
「おめーよ、舐めた口聞いてんじゃねーぞ?」
「かっ、シュン様だってよー、そんなガキに持ち上げられておめでたくなってんじゃねーの?」
「ははははは、おめでたいのは自分達じゃないの?ちょっとくらい強いからって威張っているってのはダサいよ?」
「て、てめー」
「はぅぅぅ、シュン様」
「大丈夫だってユウちゃん、おい、外でやろうか?ここじゃ迷惑になりそうだし」
「ふん、調子に乗りやがって」
「ごめんなさいしたって許さねーからな」
ユウと女メンバー3人を引き連れて、先に外へ出て行くシュン。
その後ろから、ギャーギャー喚きながら、男3人も付いて来た。
そしてギルドの建物の横にある、鍛練場の様な庭に赴き、
3人の男とシュンは立ち向かい合った。
名前 戦士A 性別 男 年齢 22 レベル 102
職業 戦士 称号 荒くれ者
名前 武道家A 性別 男 年齢 21 レベル 103
職業 武道家 称号 荒くれ者
名前 破壊僧A 性別 男 年齢 19 レベル 99
職業 破壊僧 称号 元僧侶
「こんなんで威張ってたのか…」
「くっくっく、俺たちに舐めた口聞いた事後悔させてやるぜ」
「やっちまえぇぇ」
「おりゃーー」
対峙した3人の職業とレベルだけ確認したシュンは、
口で言う程レベルが高くない事に呆れていた。
しかし目の前の男達は、ステータスを覗かれているとは露知らず、
棒立ちのシュンを見て、今更ながらビビっていると勘違いし、
醜い笑みを浮かべて、襲い掛かって行った。
「ユウちゃ~ん、あの人やられちゃうよ~~」
「ユウ、あの男じゃ無理だな」
「わたくし達にもう少し力があれば……」
「シュン様なら大丈夫ですよ、ほら、見て下さい」
明らかに凡庸そうに見えるシュンは、見た目だけなら屈強な男達に、
ボコボコにされるとだろうと思った、ユウ以外の女性達は、目を背けてユウに呟く。
だがユウはシュンの強さを知っているので、特に心配した様子はなく、
逆に3人を安心させる様な言葉を出し、襲い掛かられたシュンを指差し、
見てみろに示唆した。
「おっとっと、こっちだって、だめだめ~そんなんじゃ当たらないよ~、よっと」
「くっ、ちょこまかと」
「俺の拳を避けただと?こいつは盗賊か?」
「かもな、盗賊なら殺したって構わねーし、殺っちまうか」
殴り掛かって来る男達の攻撃を、ぬらりくらり避けるシュン。
そんなシュンの事を、男達は勝手に盗賊だと決め付け、
戦士は斧を取り出し、武道家は鉤爪を手にはめた。
破壊僧の男は、何やらブツブツと詠唱して、魔法での攻撃に切り替えた様だ。
「キャハッ、こいつでも喰らえ、風よ斬り裂けぇぇぇ」
「お、お、風の魔法か?斬り裂けって…風の抵抗しか受けないよ?」
「ぎゃっはっは、こいつでも喰らいなぁぁ」
「こいつで止めだ、首でも素っ飛ばしちゃいなっ」
破壊僧が唱えた風の魔法は、シュンにはダメージにならなかったが、
旋風による抵抗と目眩ましによって、その場に棒立ち状態になってしまった。
しかも残りの2人も、風の魔法と同時に飛び出していて、
武道家は身体を目掛けて鉤爪を、
戦士は首目掛けて手斧を、振り降ろしていた。
「お、おお、孫の手で擦られた?それに首にもなんか当たった感じだけど…」
「か、かてぇ、なんだこいつ」
「俺の鉤爪が、ひ、ひん曲がった……」
「あれだけ風を浴びて無傷だと?」
「うん?まさかもう終わりじゃないよね?ああ、口だけ達者ってこう言う事を言うんだね~」
「て、てめー」
「貴方達何をやってるの?街内での戦闘行為は禁止されてる筈だが?」
戦士と武道家は、自慢の武器での攻撃が一切効果が無かった事に驚き、
破壊僧も魔法が効いていない事に驚愕していた。
それもその筈、3人はこの戦法によってモンスターを倒し、
ここまでレベルを上げて来ていて、この街では王直属の騎士以外では、
相手にならない程であった。
そんな男達の得意の戦法が、一切通用しなかったので、
口では強がっているが身体はガクガクと戦慄を起こしていた。
それを見たシュンは、もう一度挑発してみたが、
そこに1人の騎士が通り掛かり、仲裁に入った。
「戦闘じゃねーよ、只の喧嘩だよ」
「喧嘩?そんな物振り回してて喧嘩だなんて言い訳通用しないぞ?」
「けっ、お前達の代わりに勇者様を育ててるって言うのによ」
「もういいや、王様に言っとけ、俺達はもう勇者様のお守はしねーってな」
「なっ、き、きさまら、王直々の命に逆らうのか?」
「あぁん?命令だ?冗談じゃねーよ、少しばかりの金を渡されて、こんなガキどもの相手なんかもう辞めだ」
「ああ、じゃあ、あばよ、俺達はもう、うんざりだ、あとはそこの男にでも頼むんだなー」
騎士に咎められた男達は、負け戦をこれ幸いにと、
捨て台詞を吐いて逃げて行ってしまった。
その場に残されたのは、シュンとユウ、
シュンが無傷である事にポカンとしている女性3人と、
仲裁に入ったが捨て台詞を吐かれた騎士だけとなった。
「シュン様、申し訳ありません…私が不甲斐ないばっかりに……」
「ははは、いいっていいって、あんなパーティーメンバーじゃろくに強くなれないから、居なくなってくれた方がいいしね」
「はい、私は、シュン様に鍛えて頂きたいです」
「うんうん、色々と鍛えて上げるよ~、でへへへへ」
「うぅっ、シュン様、なんか目がエッチーです」
「ソ、ソンナコトナイヨ?」
「うふふふ、でも、そんなシュン様も好き、ですよ?」
「ユウちゃん…」
「……コホン」
トコトコとシュンの傍に駆け寄って来たユウは、
自分の所為で巻き込んでしまった事に、頭を下げた。
そんなユウの頭を撫でるシュンは、それらしい言葉を吐きつつ、
下心を露わにし、下品な笑いを上げる。
その笑い声を聞いて顔を上げたユウは、厭らしい目をしたシュンをジト目で見るが、
すぐに微笑んでそんなシュンも好きだと独白する。
ユウにそう言われたシュンは、思わずユウの身体を抱き締めて、
キスをしてしまいそうになったが、黙って様子を窺っていた騎士の、
咳払いによってラブラブな雰囲気から引き摺り戻された。
「こ、公衆の面前でその様な行為は、よ、良くないかと思うぞ?」
「あ、ああ、そうだね、ははは」
「あっ、は、はい、すいません、ルーミエ様……」
「う、うむ、まあ、ところでユウ様、その男は何者なのですか?」
「あ、えぇっと、こんな所では余り話せないんですけど……」
「そうか…、うむ、なら城にて話を聞こう、王にも先程の件をお伝えしなければいけないし」
「は、はい、あ、あの~、シュン様、よ、宜しいですか?」
「うん、いいよ、あ、でも、その前に少しだけ時間くれないかな?服、買いたいんだけど」
「うむ、では準備が出来次第来るが良い、それまでにはこちらの要件も済ませて置くからな、では」
「はいはい、じゃあユウちゃん、買い物に行こうか、あ、そうそう、3人も一緒に来る?」
ルーミエと呼ばれた、白銀の甲冑に包まれた騎士は、城で話を聞きたいと言い、
一方的に話を進めて、その場を後にして行った。
その態度に少々呆れる思いもあったシュンだが、取り敢えずは服を買いに行こうとし、
ユウのパーティーメンバー3人も来るかと誘う。
「んー、私達はユウのパーティーメンバーだが、しかし…」
「パーティーは一緒に行動しないといけないんですけど~、どうしましょう~?」
「ユ、ユウ様、私達も一緒で、いいんですか?」
「うん、パーティーは集団行動が基本だもん、一緒に行こう、ねっ」
「ユ、ユウがそう言うならまあいいけど」
「ユウさんがいいって言うなら~、行きますよ~」
「ではユウ様、私達もご一緒しますね」
シュンに恐れを抱く心と、ユウとのラブラブっぷりを見せ付けられた3人は、
同行するのを躊躇った。
しかしユウは、集団行動は基本だと言い、一緒に行こうと誘い3人も断れず、
付いて行くのを決意した。
そして、まずはギルドにもう一度入り直し、
ヒュドラが残して行った物の売却を図った。
「あらあら、ユウさん、大丈夫でしたか?」
「はい、シュン様が解決して下さいました」
「そ、そう…、で、まだご用件があるのかしら?」
「はい、さっきシュン様にお会いした時に倒されてた、モンスターのアイテムを売りに」
「どれかしら?」
「えっと、はい、これです、あの~、高く引き取って貰えますか?」
「こ、これって?」
「あぁ、ヒュドラの牙と角です、あと鱗もあります」
「ヒュ、ヒュドラって、あのヒュドラですか?」
「はい、多分想像しているヒュドラで間違いないと思いますけど…、安いですか?」
「安いかですって?とんでもない、ユウさん、あ、あんなモンスターを倒したんですか?」
「はい、あっ、正確にはシュン様が1人で倒しましたけど」
「……1人で?」
ギルドの受付に立っていたお姉さんは、ユウの話に度肝を抜かれた様だ。
それはお姉さんだけではなく、やり取りを聞いていた、
ギルド内に居る人達も同様であった。
駆け出し勇者のユウには、
ヒュドラがどんなに恐ろしいモンスターかはピンと来ておらず、
シュンが覇王であると知っていた為、普通事の様に話していたが、
他の人達にはもの凄い内容だった。
そんな事とはさも知れず、ユウはお姉さんに再度、買い取れないかと尋ね、
お姉さんは慌てて大金の入った袋を手渡した。
「ふぇぇ、こ、こんなにいいんですか?」
「え、ええ、今ここには10万G分の金貨しかないから、またあとで、ユウさんのお家にお届けします」
「ほぇ?お届け?まだ貰えるんですか?」
「ええ、牙と角で5万G、鱗は超希少な素材なので15万Gで引き取らせて貰いますけど、今は10万G分の金貨しかないから、あとで残りの10万Gをお届けしますね」
「いいですよ~、ええっと、シュン様、こんなにお金貰っちゃいました~」
「おおっ、ごっさり入ってるね~、あぁ、そうそう、はい、ユウちゃん、ユウちゃんの飲み物も持って来たよ」
「えっ、あっ、ありがとうございます」
飲み物を持って帰って来たシュンに、ユウが嬉しそうに金貨の詰まった袋を渡した。
大金が手に入ったシュンだったが、そんな事より喜んではしゃいでいるユウを見て、
嬉しそうに微笑んだ。
そしてユウの分の飲み物を渡し、お礼を言うユウの頭を撫でて、
軽く悦に入るのだった。
「はぅぅ、シュン様、どうしたんですか?」
「えっ、あ、いや、嬉しそうにしてるユウちゃんが余りにも可愛くてついね」
「あぅぅぅ、シュン様」
「あ、あの~、服を買いに行くのは宜しいのですか~?」
「あ、あぁ、そうね、お金も手に入ったし、服を見に行こうか」
「はい、シュン様、これだけお金があれば何でも買えちゃいますよ」
「うんうん、あぁ、そうだ、家とかも買えるかな~?」
「ん~、どうでしょう?ああそうだ、ルーミエ様に聞いてみてはどうですか?」
「そうだね~、話しついでに聞けばいいか」
どうせならユウの居るこの街に住もうと考えていたシュンは、大金が手に入った事で、
家を買おうかと悩み、ユウに相談した。
だがユウも家を買うのに、どの程度の金が必要かは判らず、
これから話に行くルーミエに相談してみてはと返した。
その案に同意したシュンは、服屋で適当な服と靴を見繕い、買い着替えた。
ついでにユウの服も買って上げて、大いに感謝されたのだった。
ちなみにシュンは服とズボン、靴を合わせても5百Gしかしない安物を買い、
ユウには1着2千Gもする服を買って上げていた。
そして、城まで来たシュン達は客間に通されルーミアを待ち、
すぐにルーミアが部屋に入って来た。
「ユウ様、お待たせしました」
「あ、全然待ってないですよ、ルーミア様」
「そうですか、で、早速ですがユウ様、その男は何者なのですか?」
「ん、ん~」
窓から外の景色を眺めていたシュンとユウは、
そそくさと椅子に座ったルーミアを見て、自分達も椅子に座る。
そんなシュン達にはお構いなく話し出すルーミアに、
シュンの正体を聞かれ、答えに詰まってしまうユウ。
覇王である事を、余り公にして欲しくないとシュン言われている為、
ルーミアに言うには仕方ないが、他の3人にも聞かれるのを、憚ったからである。
「あ、ルーミア様、私達は少し席を外させて頂きますね」
「ユウ、家の件の情報を少しでも集めて来るから待ってろ、な?」
「私も少しは役に立ちたいので~、情報収集に行って来ます~」
「あ、はい、あの、ありがとうございます」
「いえいえ~、ではルーミア様、失礼します~」
ユウの困った表情を読み取った3人は、
シュンが家を買う為の情報を集めると言う口実の下、
自分達から部屋を出て行ってくれた。
そんな彼女達に、自分の思いを読み取っただけではなく、
シュンの事にも協力してくれる事に、お礼を言って頭を下げたユウ。
それを笑顔で返す3人は、早々と部屋を後にして行った。
その時シュンは何をしていたかと言うと、
目の前に座ったルーミアと呼ばれる女性騎士の、ステータスを覗き見していた。
名前 ルーミア フロランス 性別 女 年齢 21 レベル 798
職業 聖騎士 称号 王国騎士団団長
HP 10560
MP 2500
力 966
魔力 520
体力 1020
素早さ 610
賢さ 7500
運 1000
魅力 9000
攻撃力 1266
防御力 1520
回避力 427
常備スキル
聖騎士の心 戦闘時パーティーメンバー防御力上昇(極小) 回避力上昇(極小)
防衛術(強) 戦闘時パーティーメンバーをかばう時防御力上昇(極小) 戦闘時防御力上昇(極小)
聖者(強) アンデッド系のモンスターに与えるダメージ上昇(大) アンデッド系のモンスターによるダメージ軽減(極小)
槍使い(強) 戦闘時槍を装備中攻撃力上昇(大) 槍によるダメージ軽減(極小) 弓によるダメージ増加(極大)
特殊スキル
獅子奮迅 攻撃力上昇(極大) 被即死率上昇(極大)
騎士団の士気 戦闘時敵の数によって攻撃力上昇(中)
⇒
「ふむ、当然俺より年上か、しかもなかなかレベルが高いな…」
「シュン様?どうかなさいましたか?」
「あ、いや、3人だけになったし、話をしようか?」
ルーミアのステータスを見て、レベルの高さに驚いていたシュンに、
ユウは首を傾げてどうかしたのか聞いて来たが、ルーミアが目の前に居るのに、
そのルーミアのステータスを覗いていたとは言えず、誤魔化し気味に話を進めた。
「ああ」
「シュン様、私から言いましょうか?」
「ん~、ユウちゃんが言うより、俺から言った方がいいかな」
「うむ、だがな、こう言う事は余り言いたくないが、私は王直属の騎士団団長だ、口の利き方は少し考えて欲しいのだが?」
「へ~、じゃあ結構偉い立場なんだ?」
「ああ、下手な貴族よりも身分は上だ」
「ははは、ユウちゃん、教えといてよ~」
「あ、す、すいません」
「ははは、冗談だよ、ユウちゃんを責めてる訳じゃないからね、ああ、そうそう、ルーミアさんだっけ?」
「くっ、口の利き方を直せと言ったばかりだろうが」
「ああ、はいはい、えっと、俺の職業って、覇王らしんだわ」
「はっ、所詮覇王如きの身で私にその様な口の利き方とは……、は、覇王?」
「はい、シュン様は、覇王様です、あの、ですから、ルーミア様…余りその口の利き方は~」
平凡な服を着て来たシュンを、良くて流れ者の戦士くらいにしか、
思っていなかったルーミアは、シュンが覇王だと言っても、
いまいち頭の中に入って来ていなかった。
だがすぐに、覇王と言う言葉の意味を考え、目を見開いて驚いてしまった。
そんな様子のルーミアに、ユウはルーミアが言った事をそのまま返して、
口の利き方を改める様示唆した。
「う、嘘だ、ユウ様、騙されてはなりませんぞ?おい、シュンとやら、覇王様の肩書きを偽るのは重い犯罪だと知っての事だろうな?」
「ん~、ユウちゃん、信じてくれないよ~、どうしよう?」
「シュン様、いいこいいこです…、信じてくれないなら証明すればいいんじゃないですか?」
「う~ん、ユウちゃんに、いいこいいこされるのは気持ちいいね~」
「むぅぅ、シュン様、ふふっ、そんなに気持ちいいのですか?」
「うんうん」
「なら後で一杯して上げますから、今は、その、証明の方をお願いします」
「ん?あぁ、もうステータスなら見せてるよ?」
覇王である事を信じて貰えなかったシュンは、
ユウに泣き真似をして身体に寄り添った。
そんなシュンに対してユウは、いいこいいこと言って頭を撫でてやり、
シュンを甘やかし、見事に甘える事に成功したシュンは、
思わず気持ちがいいとほざく。
嘘泣きに気付いたユウは、少しだけ怒った顔を見せるが、
すぐに頬笑んで、後でなら一杯して上げるとやはり甘やかすのだった。
そんな2人のラブラブとは対照的に、
目の前にシュンのステータスを見せられたルーミアは、
シュンが覇王である事を確認させられ、慌ててフルフェイスの兜を脱いで、
頭を下げて来た。
「……も、申し訳御座いませんでした」
「あっ、信じてくれた?」
「は、はい、その、本当に申し訳御座いませんでした」
「ははは、いいっていいって、実際、傍から見たら胡散臭いもんね~俺って」
「い、いえ、その様な事は」
「いいよいいよ、へ~、ルーミアさんって銀髪なんだ~、綺麗だね~」
「あ、有難う御座います、お世辞でもとても嬉しい限りです」
「ありゃ、お世辞じゃないんだけどな~、ん?ははは、ユウちゃんの髪も凄く綺麗だよ」
「えへへへ、ありがとうございます」
兜を脱いだルーミアの素顔は、銀髪の長い髪が麗しい美人だったが、
武人然とした態度同様、表情は凛々しいものだった。
そんなルーミアにシュンは、銀髪を褒めて堅い表情を崩させるのには成功したが、
代わりにユウがムっとしてしまい、慌ててユウの髪も褒めた。
シュンに褒められた事が余程嬉しかったのか、ユウの表情は途端に緩み、
笑顔が戻った。
「あ、そう言えばさ、さっきの話はどうなったの?ユウちゃんの護衛の件は」
「ああ、はい、その件ですが、我が騎士団の中から決めろとお達しが」
「ん~、俺じゃだめかな?」
「そ、それは、わざわざ覇王様にその様な事をさせるのは」
「でもな~、俺はユウちゃんの傍に居たいし、だめ?」
「それは…、私からはなんとも……、覇王様でしたら王に直で話されればすぐだと思いますが?」
「いや~ほら、あんまり公にしたくないし」
「ですが、申し難いのですが、その、王に、ユウ様の傍に怪しい人物が憑いて回っていると、言ってしまいまして……」
「怪しいって、酷いです」
「はははは、そりゃ~いいや、うん、じゃあさ、ルーミアさんが護衛役になってくれない?」
ユウの護衛役の話しになり、その事でルーミアは、
王にシュンの事を怪しい人物だと報告してしまったと、顔を青くして、平伏していた。
それを聞いたシュンは、馬鹿笑いをしてユウの頭をポンポンと叩きながら、
ルーミアを見て、護衛役になってくれないかと頼んだ。
「へ?」
「ほぇ?」
「ほら、そんな怪しい人物を監視しながら護衛役として、自分がやると言えば丁度いいんじゃないかな?」
「あぁ、なるほどです」
「私ならば覇王様である事を隠しながら護衛役を出来る、と言う事ですね?」
「うんうん、それでさっきの無礼は許して上げようかな~?」
「そ、そんな事でお赦し頂けるのでしたら、謹んで御命令に従います」
「………冗談のつもりだったのに」
「シュン様、ルーミア様は私以上に冗談が効かない人なので」
「ああ、うん、だろうね、まあいいか」
冗談のつもりで、上目線の台詞を吐いたシュンだったが、ルーミアにはそれが効かず、
ただただ平伏するだけで、逆にシュンが困り果ててしまった。
その状況をどうしようかと考えていた中、ユウのパーティーメンバー達が、
部屋に戻って来た。
「お話は終わりましたか~?」
「あ、あれ?ル、ルーミアさん、どうしたんですか?」
「何故貴女ほどの人が頭を下げているのですか?」
「あ~、それははね、ルーミアお姉ちゃんが俺の事を忘れてて今謝ってた所なんだよ、昔から真面目だったのは知ってたけど、忘れてただけなのに、真面目過ぎて困っちゃうよ~、何とかしてくれない?」
「ルーミアお姉ちゃんって、幼馴染かなんかなんですか?」
「あ、ああ、実はその、シュン…君は、私がまだここに来る前に住んでいた町で弟分だったんだよ」
「そ、それで、ルーミア様が何年か振りに会ったシュン様を忘れてて、ごめんって謝りっぱなしなの」
「そうなのですか、まあ、そのシュンって人も気にしていない様ですし」
「あ、ああ、本当にその、悪かった」
「いいっていいって、ほらほら、ルーミアお姉ちゃん、もう立ってよ」
部屋に入って来た3人の目に映った光景は、ルーミアがシュンに、
土下座のように頭を下げている場面であった。
そんな場面を見られたシュンは、咄嗟に嘘の話をし、その場を切り抜けた。
シュンに言われて立ち上がったルーミアだったが、席には座らず、
もう一度王に話をして来ると言って、3人と入れ違う形で部屋を出て行った。
ルーミアを見送って、3人の女性も席に着き、
家を買う為の情報を1人1人教えてくれた。
「ん~、なるほどね、ユウちゃんの隣に家を建てたかったけど、土地だけで10万Gか、金が足りないや」
「あっ、シュン様、先程のお金はまだ半分ですよ?」
「半分?」
「はい、手元に10万G分しかないからって、あとで10万Gを届けてくれるって言ってました」
「なんと、そんなに高く売れたんだあれ、じゃ~早速ユウちゃん家の隣の土地、買いに行こうかね」
「ま、待って下さいシュン様、すぐには届かないと思いますけど」
「あ、あぁ、そうか……それに身元の証明もあるのか」
3人の情報を要約すると、まずは土地の購入が必須で、
しかもある程度身分がしっかりした者に、身分を証明しないといけなく、
更に勇者であるユウの家の傍の土地は、価格が異常に高いと言う物であった。
それを聞いたシュンは、落ち込んだ顔をしたが、ユウは言い忘れていたと言って、
まだ10万Gが手元に来ていない事を告げ、シュンを落ち込みから救った。
そうなるとすぐにと、鼻息を荒くするシュンだったが、
まだそれは早いと、ユウに引き止められてしまった。
「コ、コホン、ちょっといいか?」
「ルーミア様、お戻りになったのですか?」
「あ、ああ、少し話しを聞いたが、その、シュン、君、証明なら私が引き受けよう、今からその、一緒に買いに行こう」
「うん、そっか、ルーミアお姉ちゃんが話を通してくれれば大丈夫か、じゃあ早速行こうか?」
「うむ、あっ、ユウ様達はお家にお戻りになって下さい、明日からは私が護衛を引き受けますから、また明日に、レベル上げを致しましょう」
「あ、あの、私もシュン様とご一緒に…」
「その、ユウ様はお母様にお話をしといて頂きたいので…、すぐに参りますから」
「は、はい、分かりました、ではシュン様、また後でです……」
「そんな、今生の別れじゃないんだから、ね、すぐに会いに行くから少しだけ待ってて、んっ」
「んんっ、はぅぅ、シュン様」
「ふふっ、ユウちゃん、大丈夫?」
「はい、シュン様にキスして頂きましたから、もう我儘はいいませんよ、えへへ」
部屋に戻って来るなりルーミアは、シュンの家の購入を手伝うと申し出た。
そして、翌日からは自分が護衛を引き受けたと言い、今日の所は解散だと告げた。
それとユウにも、先に家に帰ってユウのお母さんに、話を通して欲しいと頼む。
ルーミアの話を聞いたユウはと言うと、シュンと離れるのが寂しいのか、
ションボリした顔でシュンに別れを告げ、
それを見たシュンは、ユウの唇を奪って元気づけると、笑顔を取り戻させた。
「じゃあ、ちょっと行って来るね~」
「はい、シュン様、また後でです」
ユウ達を見送った後に、すぐ家を買いに行こうとしたシュンを、ルーミアは引き止め、
部屋に押し込めた。
急な行為にシュンは何も出来ず、ルーミアの意図が読めず、
困惑してしまったのだった。
思わせぶりな所で第2話終了です…。
文章の切り方を改善しました。