死体コレクター3
とりあえず、完結です。でも、アイデア次第でまた書きます。全部読んでいただけたら、感謝感激、雨あられ(笑)。
……死体は人ではない。元は人ではあったが、今は人ではない。
それは肉塊、突き詰めれば単なる物質でしかない。
おもに水、ほかには鉄、その他いくつもの物質が交わることによって構成された、肉塊。
生命活動が停止した『それ』は、もう人ではない。 それは『死体』であり、『物』であり、そして……、
……僕の、『趣味』。
──10月、早朝。 窓の外はまだ薄暗く、穏やかな波の音だけが耳に響く。
…随分と早く目が覚めてしまったが、おかげでまたひとつ、海の素晴らしさを堪能できた。
…今日はツイてる。
美しい日の出を見ながら、僕は思った。
──僕が自分の趣味を持ちはじめたのは、4才の頃だった。
僕はその頃、物を集めるのが好きだった。
はじめは、綺麗な石や、ビー玉や、今や懐かしいおはじきなどだった。
その頃は同じ年の子供たちと変わらない、ごくありふれた物を集めていた。
小学生になり、僕の趣味は、ビー玉集めから、カードゲームに変わった。友達とカードを交換したり、ファイルに入れて見せあったりしたものだった。
中学生になり、僕の趣味は、カードゲームから昆虫採集になった。
学校が終わってからは、毎日近くの山へ行き、オオムラサキや、ノコギリクワガタなどを捕っては、箱にピンで打ち付けていった。
標本にした昆虫を隅々まで観察するのが楽しくてしかたがなかった。
力強さが伝わってくる黒い鍵爪や、生々しい関節。種類によって様々な形をしている突起。
なにより、ついさっきまで生きていた『物』が、今目の前で張り付けにされているということに、僕の心は完全に魅了されたのだった。
…高校生。
僕に転機が訪れる。
その頃になると、もう昆虫では我慢ができなくなっていた僕の部屋は、手製の剥製で一杯だった。
ウサギやスズメ、亀や蛇、犬、猫、あげくにはミニブタ。
集める。
集める。
集める。
しかし、僕は満足できなかった。
これでは駄目だと思った。
自分だけの趣味が欲しかった。
学校の廊下ですれ違う、女子生徒。
…欲しい。
……自分の『物』にしたい。
殺した。
帰り道に、殺した。
人目につかない場所で、殺した。
夜になってから、家へ運んだ。
部屋へ運んでからは、朝までずっと観察し続けた。
皮膚のきめ細かさや、自由に動く関節や、今はもう輝きを失った瞳を、観察した。
その時、僕は生まれて初めて、満足した。
……そうして僕は、理解した。
これが僕の『趣味』なのだ。
そう。
誰にも真似できない、僕の『趣味』。
僕は、変だろうか。
きっと、僕のことを知った人は、僕のことを、殺人鬼とか、狂人だとか、様々な言葉で罵ることだろう。
でも、僕は君達となにひとつ変わらない。
だからきっと、僕はおかしくない。
君達に趣味があるように、僕にも『趣味』がある。
ただ、それだけだ。
──完全に夜が明けた。 テレビをつけると、いつもと同じ、朝のニュース番組がうつる。 シャワーを浴びて、朝食をとる。
新聞を一通り読み終え、スーツに着替える。
「行ってくるよ。」
ベッドに立て掛けられた『14体目』に声をかけ、家を出る。
…今日はツイてる。
まだすこし薄暗い青空を見上げながら、 僕は思った。