◆転生
なんちゃって内政、戦記です。
細かい事を気にしない心の広い方は、どうぞ読んでやって下さい。
転生。
大学生だった俺は風邪を酷く拗らせてしまい、一人暮らしだった事もあって、呆気なく死んでしまった。
そんな俺が自分は転生したのではないかと思いはじめたのは、二、三歳の事だったと思う。
初めはふわふわして暖かい、心地好いの良い場所は、もしかしたら天国なのかと感じていた。でも俺は自分が天国に行ける程善良な人間ではないと自覚していたし、そこで見る夢に毎回綺麗な女性が出てきて、母が子を慈しむように接してくれていたから、俺はこの女性の子供ではないか、ここは天国ではないところだとも思い始めていた。
繰り返し夢を見て、夢と現実が交じり合うような世界で、沢山の人に愛されながら俺は少しずつ思考できるようになった。それでも熱に浮かされたような感覚は消えなかったが。
いつしか女性が俺の事をジュリアと呼んでいる事、そしてそれが俺の名前だと言うことにも気づいた。
それは夢からの目覚めだった。
人間は名前を認識して初めて、自我を確立する。世界に色が着きはじめ、モノクロの世界が終焉を迎える。
そして俺が成長するにつれて、周囲の言葉が段々と理解できるようになり、女性――母の名前がマリアだとわかった。俺は沢山の人間に傅かれ、否応なしに自分が支配階級の人間に生まれたことを悟った。
俺には歳の離れた二人の兄と二つ程離れた姉が居るようだった。母は四人子供がいるとは思えないくらい綺麗だったが。
五歳ぐらいになると、熱に浮かされたような感覚も薄れ複雑な思考にも耐えれるようになったが、この頃から体調を崩した。
二三回、死にかけたが、十歳の誕生日を迎える頃には大分身体の調子が良くなり、普通に生活できるになった。
意識があるときは常にベッドの上に居たので必然的に娯楽は限られ、この世界は中世レベル文化だった事もあり、俺はかなりの数の本を読んだ。印刷技術の発達していないので本は極めて高価だったが、家が貴族で金があり、両親は病弱な俺を哀れんでか、俺の希望にできるだけ応えてくれた。
驚いた事にこの世界には魔法があるようで、少なからず魔法に憧れがあった俺は魔法の習得に打ち込んだ。
そんな風に、幼少期を学問と魔術の鍛練に総てを注ぎ込んだ俺は、前世の記憶もあり周りよりも相当大人びていたし、頭も良かった。実際前世の時よりも相当記憶力が良くなったし、本を読むために言葉を覚えたのが幸し、六、七ヶ国語習得していた。残念ながら魔術の才はそこまでなかったが。
だからといって前世の知識を利用して何かをなそうとかは思ってなく、貴族の義務を果たしながら惰性に、本に埋もれながら生きていこうと思っていた。
その時までは――。