想い
私はというと、大学に入ってから自分のやりたいことを探すようになった。
最初は逃げ道だった気がする。真の隣に立てない自分から、目を逸らすために何かを始めたかった。
だけど次第に、それが“自分の足で立つ”ってことなのかもしれない、と思うようになった。
学園祭の実行委員。地域のイベントのボランティア。小さな演劇サークルの手伝い。
どれもすぐに役に立つものじゃなかったけど、誰かの笑顔が見えたり、感謝されたり、結果が形になるたびに――「わたし、今、ちゃんと生きてるな」って思えた。
……それに。
自分がやりたいことに夢中になっている姿を、もし真がどこかで見てくれていたらって、そんなことも、少しだけ期待してた。
子どもみたいだって、思う。
でも、本当の本当は、それが一番の理由だったのかもしれない。
真が、もしまた迷ったときに、やりたいことを選べるように。
「わたしはこうして進んだよ」って、何も言わなくても伝えられるように。
そんな不器用なやさしさで、自分を動かしてた。
本当は。
かつての彼の絵が好きだった。今みたいにずば抜けているわけではないけど、自由で何かを夢中で追いかけているのが伝わってくる絵だった
あの頃の彼が、私にはいちばん輝いて見えた。