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地上に戻ってくると、いくつか分けられた死体があった。
軟体蔓の生えた者、生えてない者、寄生死人か、死体かという違いだ。
俺も地上へ戻ってくるときに1人引きずってきたけど、レイツェルは嫌がった。
レイツェルはゲイシーの見張りをして、俺とエドワードは記録の作成。
ブルーズ、ステフェン、ジョッシュは村周囲の探索と死体を分ける。
ベニッツォは馬車まで戻って、馬の世話をした後に村まで馬車で帰って来る仕事だ。
ベニッツォが戻ってきたのは陽も落ちかけていた頃だった。
俺たちは食事を済ませ、見張りをしながらも休んでいた時だ。
「夜番はベニッツォどうする? 疲れただろうから無しでもいいぞ」
「そうしてくれ」
「じゃあ、ジョッシュとレイツェル、ステフェンとブルーズの順で最後に俺だ」
「タクアン、明日はどうすんだ?」
「ベニッツォとエドワードさんは近くの街まで行って、冒険者と騎士か兵士を呼んでゲイシーの引き渡しと魔物の片づけを頼む。残った全員で死体を燃やす。これで寄生死人の骨灰を手に入る」
寄生猿、巨人もどきを倒し、寄生死人。
どうにか誰も怪我せずに終えることが出来そうだ。
「ゲイシーの拠点を漁って、名前は分からないけど組織というものは本当にありそうだった。寄生猿を操ったり、巨人を作ったり、自称魔人になる薬をもらったらしいな」
「変な組織もあるんだな」
「このままだとゲイシーは殺されるだろう」
「そうなのか?」
「そうだ! そこでゲイシーには調査隊の小間使いとなってもらいたい」
「タクアンがそうしたいだけじゃねぇか」
「手伝いが欲しい、どうだゲイシー?」
「断ると言った」
「だとよ」
適当に話をして小間使いとしてゲイシーが欲しかったのに。
本人の意思は関係ないけど、調査隊はあまり歓迎してくれなさそうだ。
諦めよう。
「あ、そういえばジョッシュ、短剣は?」
「あ、ああ。返す」
投げ渡された短剣を掴むと、鞘からポロっと柄が落ちていく。
地面に落ちたのは柄と半ばから折れた短剣だった。
もしやと思い、鞘を傾けると欠けた剣身が出てくる。
「ジョッシュは本当に馬鹿力なんだな。想像以上で笑えてくる」
「あーあ、やっちまったなジョッシュ。予備の武器くらいは持ってろよ」
「そうだな。魔鉄級冒険者が持っていないとは、金級のおれでも持っているぞ」
「人の物を壊すなんてね」
「弁償はするように、ジョッシュ」
俺の言葉に続く、ステフェン、ベニッツォ、レイツェル、ブルーズ。
言われたジョッシュは、不満そうな顔をするものの実際壊したから仕方ない。
でも、魔鉄製の大斧を使うくらいだから、予想していなかったわけじゃない。
ただ、予想していたよりも強すぎただけだ。
「旅を終えたら、いいのにして返してやるよ」
「おお、頼んだぞジョッシュ」
ワイワイと騒いで、その日を終えた。
翌日、ブルーズに起こされ、夜番をしながら日記と記録を書く。
最初の試練がもうすぐ終わる。
これが終われば近くの街に行って、魔物の情報を聞かないとな。
残る14体、簡単な試練から突破していこう。
朝になると全員を起こした。
食事を終えるとベニッツォとエドワードは近くの街まで行き、俺たちは死体を分ける作業だ。
俺は死体の特徴を書いている。村へ避難した人に確認してもらうためだ。
巨人もどきの材料になったか、ここにいるか、どれかだろう。
生きている人がいるとは思えないけど、もしもを考え、確認してもらうのが一番だ。
○
タクアンが日記をめくると、骨灰を得た翌日の話になっていた。
「書くことなかったか。あははは、続きは明日にしよう」
日記を閉じたタクアンは書庫にある扉のひとつを開いた。
簡素なベッドには小さなガラス窓からの陽光が差し込んでいる。
装備を外したタクアンはベッドで横になった。