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水陸両用の名将:戚継光②

〇この隊、どう見てもやばい件について。


登州衛とうしゅうえをなんとかまとめた戚継光せき・けいこう、十七歳。


ところが、そんな彼に中央政府からお手紙が届いた。


________________________________


「戚くん、ちょっと福建ふっけんまで来てもらえる?」


________________________________


「いやいや、急すぎませんか!? 福建ふっけんって南のほうじゃん! こっちは北だよ!? ボクまだ、海すら見たことないんだけど!!」


とは言え命令は絶対。


なんでも福建ふっけんの沿岸部が、倭寇わこうって海賊みたいな集団にめちゃくちゃ荒らされてるらしい。


「武進士くん、キミにちょっと海賊退治やってほしいんだな」


「おまかせあれ! ……って言いたいとこだけど、今の登州衛とうしゅうえ、ひとことで言えば“練度ゼロ”。まともに陣形組める人いないよ!?」


________________________________


福建に到着してみると、現地の兵たちは――


「ちょっとー! その剣、竹じゃない!? 本物どこいったの!?」


「弓はあるけど矢がないでーす!」


「すまん、昨日の訓練で腰が……いてて」


――想像以上に終わっていた。


これにはさすがの継光くんも白目をむく。


「……これはもう、ゼロからやり直しだな」


というわけで、始まりました!

その名も、


戚継光せきけいこうの超!スパルタ練兵教室 in 福建!


________________________________


「まず、走る!! 走ってから考える!!」


「え、どこまで……」


「山のてっぺんまで! 登ってからまた降りてきて、今度は馬と競争!!」


「む、無理ィィィ……!!」


「次、剣の素振り1000回!! 終わったらよろいを着てもう一度走る!!」


「ぎ、ぎぶあっぷ……」


「まだ甘い! 次は団体戦訓練! 五人一組で隊列を崩さず動け! 隣と息を合わせるんだ!!」


「お、おい、そっちじゃないって! 踏むな踏むな!!」


「誰だ! 真ん中でコケたの!?」


________________________________


そんなこんなで、最初のうちは「坊ちゃん何をおっしゃる」だった兵士たちも、しだいに変わっていく。


「おい、最近オレの腹筋割れてきたぞ」


「オレも! なんか剣、軽く感じるんだけど……」


「何より、訓練終わって風呂入ると生きてるって感じがする……」


「お前ら、まるでスポーツ部の合宿じゃん」


________________________________


そして何より――


「おい見ろよ、あの陣形……」


「……動きが、ピタッと揃ってる」


「前よりも、ちゃんと“戦える集団”になってきたな」


「ふふふ……いいぞいいぞ、うちの子たち、やればできる子じゃん……!」


継光くん、ちょっぴり親の顔になる。


________________________________


とはいえ、まだまだ敵は強い。


倭寇は海を知り尽くし、ゲリラ戦に長け、容赦がない。


継光くんも、作戦を立てながら思う。


「このままじゃまだ勝てない。……もっと、兵たちの動きを洗練させて、新しい戦術を考えなきゃ」


そして、彼の頭の中でまた新たなアイデアが閃く。


「よし……次は、新兵法だ!」


海賊退治に燃える十代の司令官、戚継光の挑戦は――これからが本番である!


つづく。



〇軍の再編と新兵法の実践


嘉靖かしょう25年、戚継光せき・けいこう福建ふっけんでの練兵を経て、ついに新しい軍の編成に着手した。


「よし、みんな聞け! これからは『戚家軍せきかぐん』だ。今までの兵法は古い、ボクの考えた新兵法で海賊をぶっ飛ばすぞ!」


兵士たちは目を丸くした。


「新兵法? なになに?」


「簡単に言うと、敵の動きを読みやすくして、こっちの動きは速くて揃うようにするんだ。つまり……僕たち、めっちゃかっこよくなる!」


だが、その「かっこよくなる」は並大抵ではなかった。


毎朝のランニングは山道で、剣の稽古は炎天下の浜辺で。兵士たちは汗と泥にまみれて、時には「今日で死ぬかも……」と思った。


そんな時、継光は「みんな、僕が鬼軍曹に見えても、それは戦に勝つための愛情だ!」と熱弁。


すると兵士の一人が言った。


「じゃあ、鬼軍曹、休みはありますか?」


「休み? あるわけないだろ! 戦いは待ってくれないんだよ!」


だが、冗談も交えながら次第に士気は高まり、兵士たちはチームワーク抜群の集団へと変貌した。


そしてついに鴻山こうざん之戦が訪れる。


倭寇わこうが山の麓で待ち伏せしていたが、戚家軍はびしっと隊形を整え、練習どおりの動きで敵を圧倒。


敵は混乱し、海へ逃げ帰った。


戦いが終わると兵士たちは口々に、


「こんなにうまくやれたのは初めてだ!」


「俺たち、ただの雑魚軍団じゃなかったんだな!」


と大はしゃぎ。


継光は笑いながら言った。


「ほら、だから言っただろ? 努力は裏切らないって!」


こうして、戚継光の新兵法は初勝利を飾り、彼の軍は伝説の「戚家軍せきかぐん」として知られることになるのだった。



〇嘉靖28年(1549年)


戚継光せき・けいこうはまだ21歳の若さで、登州とうしゅうで軍務に就いていた。若いとはいえ、彼の頭の中はすでに「軍の未来」だらけである。


当時の登州とうしゅうは、まさにてんやわんやの大騒ぎだった。まず、黄河こうが氾濫はんらんして周辺は水浸し。おかげで農民は泣きっ面に蜂、村はどろどろの泥沼状態だ。そんな時にやってきたのが、わが物顔で暴れまわる倭寇わこうたち。日本の海賊たちで、好き勝手に海岸を荒らしまくっていた。


「こりゃ、軍の出番だ!」と、戚継光は胸を熱くした。しかし、現実はそんなに甘くない。


彼が目にしたのは、訓練不足でだらけきった兵たちの姿。しかも軍の上層部は腐敗がひどくて、兵糧ひょうろうも不足気味。兵士たちは真面目に訓練するどころか、酒場で酒をあおったり、サボったりしてばかりだ。


戚継光は心の中でこう叫んだ。


「これじゃ、倭寇に勝てるわけがない!」


そこで彼は、軍紀ぐんき改革を決意する。


まずは兵士たちに、厳しい規律を守らせることから始めた。遅刻は厳禁、酒は控えめに、訓練は毎日欠かさず、そして命令は絶対服従。彼は一人ひとりの兵士に対して、まるで先生のように親身に指導した。


「お前たち、ただのザコじゃない。俺たちは国を守る戦士だ!」と、熱く語りかけた。


もちろん、最初はみんな文句を言った。だって、これまで好き勝手やってきたからだ。


「おい、あの若造、何様だ?俺たちは遊びたいんだよ!」と、兵士の一人が毒づく。


でも戚継光はにこりともせず、


「遊びは戦いに勝ってからだ。今は鍛錬の時間だ!」


と言い切った。


そんなやり取りが毎日続き、少しずつ兵士たちも彼の熱意に応え始めた。体はきついが、心はどこか引き締まっていく。


また、腐敗した上層部にも鋭く物申した。


「軍の金は国民のためにある。私利私欲で使うな!」


この言葉は、たまにしか聞かれなかった正義の叫びだった。


戚継光の軍紀改革は、単なる厳しい規律の押し付けではなく、「軍人としての誇り」を取り戻す戦いでもあった。


この時期から、戚継光の軍隊は少しずつ「強くなる」準備を始めたのだ。


もちろん、倭寇は相変わらず海の向こうでのさばっている。でも、もう昔のようにあっさりやられる軍隊ではなかった。


こうして戚継光は、若き指揮官として「軍の未来を変える」第一歩を踏み出したのだった。

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