4.1週間のはじまり
演習場についた。予想はしていたが、式森はやはりかなりの注目を集めている。だが当の本人である式森は特に気にした様子もなく空いている測定台の前に向かう。
この演習場では自分の魔法の範囲や威力を測定したり魔法を不定期な動きをする的に当てる訓練ができる。そのために測定台には測定器が設置されており、その中には魔法回路が組み込まれていて、魔力を原動力に動くようになっている。また、対人訓練も行えるように広いスペースがかなりの数確保されている。
「じゃあまずは私からどの程度の魔法を使えるのか見せるわ」
そう言って式森は測定台の前に立った。
「アイスショット」
放たれたのは氷のD級魔法であるアイスショットだ。この魔法は氷属性の最も基礎的な魔法で凝縮した氷を発射する魔法だ。だが、今式森のはなった魔法は俺の知っているアイスショットではない。明らかに威力とスピードがおかしい。実際に測定器にも威力はB級とでている。しかも放たれた氷は的のど真ん中を射抜いている。すごい精度だ。周りの生徒たちは自分の訓練なんてお構い無しに式森の魔法に見入ってしまっている。
「さすがだな。とてもアイスショットだとは思えない威力だった。」
「そう、ありがとう。」
そう言いながら式森もりは測定器を操作し的の数を増やし出した。それどころかスピードを限界まであげ、不定期な動きをさせる。的は全部で10個、そしてその的全てが目で追えるかどうかと言うぐらいのスピードで不定期な動きをしている。だが式森はなんの躊躇いもなく自身の周りに10個の氷の刃を出現させる。
「アイスブレイク」
詠唱がなされた瞬間、10個氷の刃はまるで的に吸い込まれるように綺麗な軌道を描いて発射された。そして発射された氷の刃は全て的の真ん中を射抜いていた。
「うぉーーー!」
「すげぇー!」
「どうやったんだよ!」
俺が言葉を出すより早くそれを見ていた他の生徒から歓声が上がった。
こんなの見せられたら、まぁそうなるよな。はっきり言って他の生徒とはレベルが違う。威力も申し分ないのに精度が桁違いに優れている。こんなの一体どれだけ練習すればできるんだよ。
「私の魔法はこんな感じよ。やろうと思えばまだ刃の数は増やせるけど、数を増やす度に精度が落ちるわ。」
「いや、いまのでも十分すごいよ。」
「そうじゃあ、次はあなたの番ね。全力を出す必要は無いわ。どの程度の魔法が使えるかだけ見せてくれれば十分よ。」
「ああ、式森のに比べれば威力や精度はおちるがそこはおおめに見てくれよ。」
「ええ、分かっているわよ。」
やはり自分がある程度強いことはしっかりと自覚しているらしい。またこんなの見せられたら納得するしかない訳だが。問題はそこじゃない。何故か式森のペアである俺にまで周りの生徒の注目が集まっていることだ。期待されてもこまるんだけどなー。まぁなよなよしてても仕方ないしさっさと終わらせるか。
俺は測定台の前に立ち炎のD級魔法であるファイアボールを的に向けてはなった。威力は平均くらいで、的の真ん中より少し右に当たった。
「悪いが俺はこんなもんだ。式森みたいに複数の動く的の真ん中を同時に射抜くなんて芸当はできない。」
「いや、十分よ。威力も最低限以上はあるし精度もかなりいいと思うわ。」
「そうか、ありがとう。君にそう言って貰えるて安心したよ。」
だがなぜか周りからは少し失望した目で見られている。いや、これ式森がすごすぎるだけだからね!?
なんてことを考えていると俺たちの来た方から2人の男が歩いてきた。
「初めまして。僕は鈴嶺隼人と言います。」
と名乗ったのはメガネをかけた少し緑がかった髪をしている少年だ。そしてもう1人の赤色の短髪で特に大きい訳ではないが筋肉質の少年が口を開く。
「俺は関島闘也だ。」
「もしお2人が良ければ模擬戦をしていただけないかと思いお声かけさせて頂きました。」
「なるほど私達と模擬戦がしたいと。受けてもいいけど条件があるわ。」
「なんだよ条件って。」
闘也が聞き返す。
「模擬戦は3日後に行うという条件を飲んでくれるなら受けて立つわ。」
「なるほど、3日ですか。分かりました。闘也君もそれでいいですか?」
「ああ、俺は戦えるなら問題ねぇ。」
「葉月君もいいかしら?」
「俺は構わないけど。」
ってめっちゃ事後確認じゃねーか!まぁ特に問題がある訳じゃないからいいけどさ。
「なら決まりね。3日後のお昼すぎにここに集合ということで。」
「分かりました。ありがとうございます。」
それだけ言うと2人は演習場から出ていった。