3.パートナー
座学の1週間を終えた俺たちは週明けから実習がはじまる。この実習により獲得出来る単位が150を越えられれば卒業資格を認められハンター試験を受けることができる。実習にはいくつもの種類があり、実習事によって得られる単位の数も違う。そして今日、入学して始めての実習の内容が発表された。その内容はこうだ。
生徒は学校側が指定した生徒とペアを組み、1週間後にダンジョンでサバイバルを行う。制限時間は3日。ダンジョンには下級の怪魔が住みついており、怪魔の討伐数により獲得単位が変動する。また自分たち以外の他のペアを倒し、コアを奪うと単位が加算される。そしてコアを奪われたペアはその時点で脱落となる。なお、脱落したペアはその時点で得ていた単位数を獲得する。またコアはペアの2人を戦闘不能にしないと出現しない。
簡単に言えばペアを組んで3日間のサバイバルで多くの怪魔と他のペアを倒せばいいと言うだけの話だ。
ここまではいい、だがここからが問題だ。午前中にペアの発表があったのだが、そのペアの相手があの氷姫、式森美羽なのだ。まだ学校も始まったばかりだと言うのにすごく周りからの注目を集めている大物とペアを組まされるとか最悪すぎる。しかも午後からはペア同士で顔合わせをしておく必要があるらしい。ペアが発表された際にペアと合流するための教室も指定されていた。なってしまったものは仕方ないがなかなか気が乗らない。
なんてことを考えていると向こうから白也が近づいてきた。
「雅人!お前あの氷姫とペアじゃん!」
「ああ」
「どんな豪運なんだよ。氷姫とペアなんてなりたくてもなれねーぞ普通」
「そーかもな。でも流石に俺には大物過ぎると言うか」
「何言ってんだよ。氷姫とペアなら実習だって取れる単位の数が増えることが期待出来るしいいじねーか」
「それはそうだけど、とりあえず頑張るよ」
「あ、やべ、そろそろ顔合わせの時間じゃん、まぁお互い頑張ろうな」
そう言って白也はさっき来た方向に歩いていった。
「さてじゃあ俺もいくか」
気は乗らないが顔合わせはしておかなければいけないので指定された教室へ向かうことにする。
「葉月雅人ってあなたかしら?」
歩き出そうとした時背中から聞き覚えのない声がした。振り返ってみるとそこには氷姫の姿があった。
「うん、そうだけど。どうしてここに?」
「たまたま通りかかったらあなたの友達があなたの名前を呼んでいるのが聞こえたからよ」
「ああ、そうなんだ」
てことはその後の会話も聞かれてたのかな?まぁ考えるのはやめよ。
にしても凄いオーラだ。明らかに他の生徒とは違うし、隙がない。
「私は式森美羽よろしくね」
「俺は葉月雅人だ、よろしく」
「これから1週間は実習のための準備期間になるわ。決めておかなければいけない事がいくつかあるから場所を変えて話しましょ」
「そうだな、ならその辺の空き教室でも使うか」
そうして場所を変えた俺たちは今後1週間について話し合うことにした。
「まずこの1週間のうちにしておかなければならないのは、お互いにある程度息を合わせて戦えるようにすること、実習本番での立ち回りを考えることよ」
「でもお互いがどの程度戦えるか分からないと立ち回りは考えようが無いし、まずはお互いをしることからだな」
「ええ、だからこの後演習場で私が今どのくらいのことを出来るのか見せるわ、だからその後あなたもどのくらいのことが出来るか見せてね」
「わかった、でもあまり期待するなよ」
正直あの氷姫のあとには何を見せてもかすむ気がするんだけど、こればっかりは仕方ない。
「それとこれ、私の家の住所よ」
差し出された手には確かに家の住所が書かれた紙があった。
「は?」
「もし何かあったときに連絡が取れないと困るでしょ」
「いや、そうだけど。会ったばかりの他人、しかも男にそんな軽々家なんて教えて大丈夫か?」
「だってあなた人畜無害そうだもの」
「人畜無害って...もし俺がその住所を悪用しようとしたらどうするんだ?」
「殺すわよ、でもあなたそもそも私に興味ないでしょ。大体の男は私を見れば言い寄ってくるし、すぐ下心が透けて見える。けどあなたからはそれが全く感じられないわ」
流石は氷姫すごい自信だ。これではまるで自分がモテると言っているようなものだ。まぁ実際顔はとても整っているし、すごくモテるんだろうけど。
「それにいちいち手紙で連絡するのは時間がかかるわ。だからあなたの住所も後で教えてね」
「わかったよ」
そうして俺たちは演習場に移動することにした。