1.セレモニー
いつもの様に目を覚ました俺は窓を開け心地より風をうけながら1日の始まりをむかえる。いつもはもう少し寝ているのだが今日はいつもよりも30分ほど早く起きた。なぜなら今日から2年間通う事になるハンター指南校の登校初日だからだ。ハンター指南校とは、ハンター試験を受けたいと希望するものが通う、いわゆる学校みたいなものである。ただ普通の学校と違うのは座学のような授業は少なく、実践的な活動の方が圧倒的に多いことくらいだ。この世界ははっきり言って治安が悪い。だからこそハンターと言う職業にはかなりの需要があり、ハンターになりたいと志願する奴らもかなり多い。ぶっちゃけハンターはかなり儲かるらしいしな。とそんなくだらない事を考えながら顔を洗い、朝ごはんを食べ、歯を磨き、制服を着て準備を進める。そして指南校の入学セレモニーの1時間ほど前に余裕を持って家をでる。
「いってきまーす」
って一人暮らしだから誰も居ないんだけどね。
家を出た俺はセレモニーの会場まで歩いていく。20分もすればつくような距離だからかなり余裕を持って会場には到着出来そうだ。周りを見るとかなりの人が同じ制服を着て歩いている。これ全部今日入学する奴らか〜、流石はハンター指南校、人の数も桁違いだ。このうちのどれくらいが残るのかは知らないが2年後この指南校での卒業を認められたものにのみハンター試験を受ける資格が与えられると考えるとかなりの数が途中で脱落するんだろうな。そもそもハンター試験とは3年に1度行われていて、期間は約1年間。その試験が難しいのはもちろんだが、そもそも指南校の卒業自体の難易度もかなり高い。ハンター試験と指南校はセットで3年周期で行われているがハンター指南校を卒業出来ずに終わる者がほとんどらしい。まぁ俺には関係ないんだけど。
そんなこんなで他愛も無いことを考えながら会場についた俺は受付を済ませて中にはいる。流石は国が直接運営してる学校だけあってセレモニーの規模も桁違いだ。会場だけでも何千人入れるんだってくらい広いし、綺麗だ。おっと圧倒されている場合ではなかった。指定された席へと向かわなければ。こんなに広いと席を探すだけでもかなり大変なんだけど。案内板に従って自分の席を見つけられた俺はセレモニー開始まで少し時間があるが座って待つことにした。あと15分から20分ほど開始まで時間があるがそれなりに生徒は集まっているように見える。
「することなくて暇だし早く始まってくれねーかなー」
「それな、まだ15分くらいも時間あるとか長いよな」
と独り言のつもりだったが何故か返答が帰ってきた。声の方へ振り向くと横の席に銀髪の少しチャラそうだか顔の整った青年が座ろうとしているとこだった。
「おっと悪ぃ、驚かせたか?俺は氷堂白也。よろしく」
「俺は葉月雅人だ。よろしく」
「いやー、分かってはいたけどすげー人だな、流石はハンター指南校の入学セレモニーって感じだわ」
「ああ、全員揃ってないだろうけど、それでもすごい数の人だな」
「しかも名家出身のやつらもごろごろいるらしいしな」
「だろうな」
「噂ではあの五大名家の出のヤツらが全員いるらしい。他にも一度は耳にしたことのある家の出のやつらも例年に比べれば多いって話だ」
「今年はレベルが高いって事か」
「そうだ、有名なギルドに入るには数いる中で目立たなきゃいけないし、強ぇ奴らばっかりなのは勘弁って感じだよ」
「そうだな」
【まもなくセレモニーが会場されます。ご出席の皆様は前方ステージへとご注目お願いします。】
どうやら白夜と話しているうちにセレモニー開始の時間になったらしい。それまでざわざわしていた会場も一気にしずかになり前方のステージへと注目が集まる。そしてステージ脇からガタイのいい大柄な男が出てきてマイクの前に立つ。
「私はハンターギルド管轄下会長のリーワン・ハイレスです。この度は皆様のご入学を心よりご歓迎致します。ここにいる人はみな目的は違えどハンターを目ざしている。何を欲し、何をなそうとするのか。実力を示すことが出来た者のみが高みへとのぼることができる。厳しい事かもしれませんが、ハンターとはいつでも死と隣り合わせです。ですがその死の恐怖を乗り越え己の力と向き合ったものにのみ真の実力は花開くでしょう。ハンター試験で再び皆さんと会えることを楽しみにしています。」
会場からは拍手が巻き起こりリーワン会長の挨拶は終了した。この後も何人かのお偉いさんからの挨拶がありセレモニーは終了した。
出口で白夜と別れて俺はそのまま家に帰ることにした。