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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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079・町歩き

「いってきます」


「……ます」


 獣人兄妹に声をかけて、僕とアシーリャさんは宿屋を出発した。


 手を繋ぎ、通りを歩く。


 鉱山の町ロックドウム。


 その規模は、レイクランドの町と同じぐらい。


 だけど、人や建物の数はこちらの方が多いみたいだ。


 巨岩の壁面や地下にも家があるので、単純に人口密度が高いのかな……?


 歩く人の多くは、ドワーフ。


 街は雑多な雰囲気で、やはり鉄の匂いがする。 


(ふ~ん?)


 自然の多いレイクランドとは、また違った趣だ。


 町の店舗は、武器、防具を扱うお店が多いみたい。


 やっぱり、鍛冶師の集まる町だからかな?


 それ以外にも、包丁や鍋などの日用品、鍬や鋤などの農具、馬車の金属部品、時計、調度品などの販売、修理などのお店もあった。


 何となく、技術の町って感じ。


 うん、面白い。


 僕は時々立ち止まって、そうした商品を眺めていく。


 その間、アシーリャさんは何も言わず、ただ優しい眼差しでそんな僕を見つめていた。


「…………」


「…………」


 彼女の視線が、何かくすぐったい。


 そんな風にして、僕らは2人で通りを歩く。


 その時だった。


 ピカピカ


(ん?) 


 杖君が点滅する。


 見れば、杖君の先から細い光が伸びて、ある店舗を示していた。


 近づくと、


(宝飾品……?)


 指輪やネックレス、腕輪、イヤリングなどを扱う屋台みたいなお店だった。


 お店の店主らしいドワーフさんが、


「いらっしゃい」


 と、笑った。


 多分、この人が作った品物なのかな?


 王侯貴族が身に着けるような豪華な品ではないけれど、庶民が少し着飾るのにちょうど良さそうな物ばかりだった。


 値段も30~200ポント。


 約3000円から2万円といった金額だ。


(へぇ……?)


 結構、僕の好きなデザインかも。


 思わず、眺めちゃう。


 アシーリャさんもやはり女の子だからか、少し興味深そうに覗き込んでいた。


 ドワーフさんは笑顔で、


「恋人……いや、姉弟かな?」


「あ、えっと」


「…………」


「どうだい? 1つ、お姉さんにプレゼントしてみたら?」


 と、勧めてくる。


 お姉さん……。


 僕は、隣の金髪の美女を見る。


 気づいた彼女もこちらを見て、肩から煌めく金髪がサラサラとこぼれた。


 僕は聞く。


「アシーリャ姉さん(・・・)、どれか欲しい?」


「…………」


 途端、彼女の頬がほんのり赤くなった。


 おや?


 もしかして、『姉さん』呼びが恥ずかしかったのかな?


 姉さんは、うつむいてしまう。


(う~ん)


 僕は少し考えて、


「じゃあ、これ、ください」


 と、彼女が最初に見ていた指輪を1つ、小さな指で差した。


 店主さんは「毎度」と嬉しそう。


 チャリン


 値段は、120ポント。


 1万2000円ぐらいで、少し高い……いや、宝飾品としては安いのかな?


 アシーリャさんは、ポカンとしていた。


 僕は笑って、


「いつもお世話になってるから。そのお礼」


「…………」


「もらってくれる?」


 と、指輪を見せる。


 彼女は数秒、動かない。


 やがて、ためらうように、右手を持ち上げた。


(ん……?)


 あ、僕が填めるの?


 気づいた僕は、彼女の白い手を取り、その薬指に指輪を填めてあげた。


 うん、ぴったりだ。


 銀のリング。


 シンプルだけど、とても綺麗な輝きだ。


 彼女はその手を空中にかざして、その指輪をどこか不思議そうに見つめていた。 


 やがて、頬が綻ぶ。


(わ……?)


 まるで花が咲くような笑顔の眩しさに、少し驚いた。


 な、何だろう?


 ドク ドク


 なぜか、鼓動が速くなる。


 アシーリャさんは僕を見て、


「ありがと……ござ、ます」


「…………」


「これからも、ずっと……私、ニホさん、守り……ます」


「う、うん」


 僕は頷いた。


 とりあえず、喜んでもらえたかな?


(うん……)


 それだけで充分。


 僕も嬉しかった。


 お店を離れ、僕はまた、アシーリャさんと手を繋いで歩きだす。


 …………。


 …………。


 …………。


 触れる手は、なぜかお互い、さっきよりも熱くなっている気がした。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 僕とアシーリャさんは、観光を続けた。


 道中、レストランで食事をして、冒険者らしく武器防具のお店も覗いたりした。


 うん、楽しい時間だ。


 アシーリャさんも、ずっとはにかんでいる。


 きっと彼女も楽しんでくれているのだと思うと、僕はそれも嬉しかった。


 そうして町を散策し、


(おや?)


 ふと僕は、通りの奥に『教会』があるのを発見した。


 天の神アラム。


 それを祀る教会だ。


 レイクランドの町と同じように、この鉱山の町ロックドウムにもあったんだね。 


 そう言えば、


(最近、お参りしてないや)


 どうしよう?


 神様っぽいおじいさんに転生してもらった身としては、少し申し訳ない気持ちになってしまった。


 うん……ちょっと、お参りしていこうかな。


 そう決めた。


 アシーリャさんにも伝えると、


「外、で……待ってま、す」


 と、やっぱり中に入るのは拒否された。


(そっか)


 ま、仕方ない。


 ここは、僕1人でお参りしよう。


「じゃあ、ちょっと行ってくるね。すぐ戻るから」


「は、い」


 彼女は頷いた。


 そして僕は、1人で教会の扉を潜り、中に入った。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 厳かな空気。


 外からは町の賑わい、鍛冶の作業音などが遠く聞こえているけれど、教会内は静かだった。


 正面には、巨大な神像。


 10人ほどのドワーフさんが祈っていた。


「…………」


 僕も、礼拝堂の長椅子に座った。


 杖君を自分の肩に預け、両手を合わせる。


 青い目を閉じて、


(おじいさん、異世界での生活、今日も楽しんでます。転生させてくれて、ありがとうございます)


 と、日々の感謝を祈った。


 その時だった。


 パアッ


 閉じた視界が明るくなった。


(?)


 薄目を開けると、杖君が光っていた。


 杖君?


 不思議に思っていると、


 フワッ


 瞬間、身体が空中に浮いたような奇妙な感覚がした。


 すぐに治まる。


 と、視界の中から杖君がいなくなっていた。


(え……?)


 僕はギョッとする。


 大きく目を開けた。


 周囲の景色が目に入り、するとそこは教会の中ではなく、白い床と青い空のどこまでも広がる空間だった。


 僕は、しばし呆然だ。


 やがて、思い出す。


(ここって……確か、転生する前の?)


 そうだ、間違いない。


 そう確信した時、背後に気配がした。


 振り返ると、


『――やあ、元気にやっとるかね?』


 そこには白く長い髭を生やした、あの神様っぽいおじいさんが笑顔で立っていたんだ。

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