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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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071・南東ダンジョン

「本当に1日で集めてきたね……」


 女店主アライアさんは、そう驚きの声を漏らした。


 グランビット装備店の床には、3種類の鉱石が詰まった採取袋が4つ、置かれていた。


 僕は、仲間3人と笑い合う。


 赤毛の獣人青年は得意げに、


「だから言ったろ? 『ニホの魔法なら大丈夫』って」


「そうだね」


 アライアさんは苦笑した。


 僕を見て、


「アタシもその言葉を信じたつもりだよ」


「…………」


「けど、正直、3割は疑っていた。この量を1日で集めるなんて、熟練鉱夫でも難しいからさ」


「…………」


「凄いんだね、お前さんの魔法は」


「うん、ありがと」


 褒められて、素直に嬉しい。


 でも、本当は、凄いのは僕ではなくて杖君だ。


(ありがとね、杖君)


 ピカン


 心の中で伝えると、杖君も優しく光ってくれた。


 それから僕らは納品と合わせて、『赤色鉄鉱石』と『アダマン鉱石』の新しい鉱脈を発見したことも報告した。


 アライアさんは、目を丸くする。


「本当かい?」


「うん」


 僕は頷く。


 カーマインさんも「おう、間違いないぜ」と同意した。


 地図を広げて、


「こことここだ」


「ほう?」


「量が多すぎて、俺らだけじゃ採り切れないぐらいだったぜ」


「そうかい、そうかい」


 彼女は、興味深そうに頷いた。


 地図を受け取り、


「わかったよ。鍛冶ギルドに報告して、町のダンジョン管理局にも伝えとく」


「うん」


「きっと褒賞金が出るよ」


「そうなの?」


「あぁ。支払いは後日になるけど、期待しときな」


「うん、わかった」


 嬉しい誤算だ。


 赤毛の獣人兄妹も笑い合っている。


 僕は、アシーリャさんに両手を向けて、


「やったね」


「は、い」


 パン


 軽くお互いの手を打ち合わせた。


 彼女も柔らかく金髪を揺らして首を少し傾け、喜ぶ僕にはにかんでいる。


 ピカピカ


 杖君も嬉しそうだ。


 そんな僕らに、アライアさんも笑った。


「新鉱脈の発見なんて、久しぶりの吉報だよ。この町の住人としても感謝するよ。ありがとね、本当に」


 その笑顔も明るい。


(うん)


 偶然だけど、いい出来事だったみたい。


 みんなの笑顔が僕も嬉しい。


(よし、明日もがんばろう)


 僕は、小さな拳を握った。


 そうして僕らはグランビット装備店をあとにすると、夕暮れのロックドウムを歩いて宿屋に帰ったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 翌日、太陽が昇り始めた時刻に、僕らは町を出発した。


 今日、目指すのは『南東ダンジョン』だ。


 目的の鉱石は『魔力結晶』。


 魔力の素となる魔素成分が沁み込み、結晶化した鉱石だそうだ。


 魔力を流す回路の作成に必須で、この世界に存在する魔法道具の全てに使用されている鉱石なんだって。


(ふ~ん?)


 この世界で、重要な鉱石なんだね。


 街道を歩きながら、その項目を読んだ僕は、


 パタン


 と、冒険者ガイドブックを閉じた。


 街道の周囲には、荒野が広がっていた。


 植物は少なく、黄色い土と巨石の転がる大地がどこまでも続いていた。


 やがて、2時間ほど。


(あ……)


 遠くに、白く見える丘が見えた。


 あそこかな?


 近づいてみると、それは白い結晶粒が砂のように広がった丘だった。


 そこに、金属扉がある。


 北東ダンジョンと同じく、門番の兵士も2人だ。


 南東ダンジョン。


 どうやら、到着したらしい。


 僕らは冒険者カードと許可証を提示して、『南東ダンジョン』へと入っていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「ほわぁ……」


 思わず、そんな声が出てしまった。


 南東ダンジョンも、洞窟だ。


 けど、その床や天井、壁は、全て白い結晶でできていたんだ。


 凄く綺麗……。


 獣人兄妹も「おお……」「わぁ……」と驚いた顔だ。


 アシーリャさんも、


「…………」


 無言だったけど、物珍しそうに周囲を眺めていた。


 杖君の『灯りの魔法』とランタンを用意したけれど、光が反射して眩しいぐらいだ。


 洞窟内とは思えない。


 むしろ、外の昼間と変わらない明るさだよ。


(う~ん?) 


 ダンジョンって、本当に色々なんだね。


 何だか楽しいや。


 結晶の白い壁を覗き込む。


(あは)


 その表面には、僕の笑っている顔が薄く反射していた。


 すると、


「おし。じゃあ頼むぜ、ニホ」


「あ、うん」


 カーマインさんに声をかけられて、我に返った。


(そうでした)


 まずは、仕事だよね。


 僕は頷き、息を吐く。


 白い杖を構えて、


「杖君、お願い」


 ピカン


 杖君が輝き、先端から『光の蝶』が生まれた。


 ヒラヒラ


 頭上を1周して、白い洞窟の奥へと向かう。


(うん)


 僕は頷いた。


 3人を振り返って、


「じゃ、行こう」


「おう」


「は、い」


「い、行きましょう」


 獣人兄妹とアシーリャさんも頷いた。


 コツ コツ


 そして、白い結晶の床に足音を響かせて、僕ら4人と1本はダンジョンの奥へと向かった。

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