007・11日目
タイトル、少し短くしました(試行錯誤中)。
今後も変更するかもしれませんが、どうか皆さんには変わらず楽しんで頂けたら幸いです。
転生してから10日間が過ぎた。
うん、あっという間だね。
この10日間、僕は『薬草集め』のクエストを毎日繰り返して生活していた。
1日3時間で、約1万円。
10日で、10万円。
実に安定した収入だ。
おかげで僕の異世界生活も土台ができた感じで、何となく落ち着いた感じなんだ。
でも、少し不思議なこともある。
こんなに楽に稼げるクエストなのに、『薬草集め』をする冒険者を僕以外に見たことないんだ。
(何で……?)
そう思って、マーレンさんに聞いてみた。
すると、
「本当は『薬草採取』って、2~3日かけて行うクエストなのよ?」
と、苦笑されてしまった。
「そうなの?」
僕は、びっくりだ。
詳しく聞いてみると、薬草って、普通はそんな簡単に見つかるものじゃないんだって。
平均して、1日10時間。
それで2~3日かけて、ようやく集まるとか。
本来は、それぐらいの難度なんだって。
(……う~ん)
僕には、杖君がいる。
だから、楽に感じてただけなのか……。
…………。
薬草は、傷薬や風邪薬、回復薬などの材料として、常に需要があるらしい。
だから、クエストも常設されている。
だけど、労力に対して報酬が少ないから、クエスト受注する人は少ない。
たまに、受注してくれる人もいる。
けれど、それは大抵、他のクエストをこなしながら、そのついでで行うぐらいなのだそうだ。
要するに、小遣い稼ぎ。
結果、成功率も低い。
そして、採取品の品質も良くないんだって。
だからこそ、
「ギルドとしては、ニホ君が毎日集めてきてくれるようになって本当に助かってるわ」
と、マーレンさんは笑った。
そっか。
それなら、よかった。
僕としても『薬草集め』を生活の基盤にできてるから、万々歳だね。
そんな訳で、
ペリッ
「じゃあ、今日もお願いします」
「えぇ」
僕の差し出したクエスト依頼書を、ハーフエルフの受付嬢さんは満面の笑顔で受け取ってくれた。
◇◇◇◇◇◇◇
正面門を目指して、町の通りを歩く。
歩くのは、石畳の道。
通りの左右には、たくさんの商店が並んでいて、多くの人が歩いていた。
街路樹の向こうには、綺麗な湖も見える。
(……うん)
いつもの景色だ。
そう感じるぐらい、僕もこの町に慣れてきた。
レイクランドの町。
人口は、約2000人。
雄大な山脈と大きな湖に挟まれた町で、景観のとても美しい町だった。
町の中心には、教会。
山の方には、町長である貴族の屋敷がある。
湖には、漁業ギルド管理の港。
山と湖があるので、この町では、山の幸と湖の幸、両方が楽しめるのも特徴だ。
…………。
いや、まぁ、ほとんど『冒険者ガイドブック』の受け売りなんだけどね……?
コホン
でも、僕はこの町が気に入っていた。
門番のおじさんも、マーレンさんもいい人だし……うん、初めての異世界の町がここでよかったなって素直に思うんだ。
僕は、青い空を見る。
「…………」
当面は、ここで暮らそうかな。
今の所、生活も安定してるし……ね?
チラッ
右手の杖君を見る。
すると、
ピカピカ
杖君も明るく光ってくれた。
(うん)
僕も笑った。
やがて、正面門に辿り着いた。
そこには、いつもの門番のおじさんが立っている。
もう、すっかり顔見知り。
「お、ニホ。今日も薬草集めかい?」
「うん」
「そうか、気をつけてな」
「うん、ありがとう」
門番のおじさんに笑顔で見送られて、僕も手を振った。
そのまま街道を歩く。
本日で、異世界生活も11日目。
うん、今日もがんばるぞ。
…………。
でも、この時の僕は、何も知らなかった。
この日、自分の人生に関わる、あんな大きな出会いがあるなんてことを……。