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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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65/81

065・休憩

 謎の老人は、黒い杖と共にいなくなった。


 用心棒が消えてしまうと、残された野盗たちも全員逃げ出した。


 でも、負傷して動けない野盗もいて、


 ギュッ


 そんな彼らは、僕らにロープで捕縛されたんだ。


(これで、よし)


 作業を終えて、僕は大きく息を吐いた。


 顔を上げる。


 街道には、死んでしまった野盗の死体も2人分、転がっていた。


(…………)


 同情はしない。


 僕らを殺そうと襲ってきたんだ。


 事情があったとしても、それを許容はできない。


 でも、少し心が寒い。


 僕は青い目を閉じ、短く黙祷する。


 そんな僕に、カーマインさんは「お前は甘いな」と苦笑していた。


 アシーリャさんは、


 ポムポム


 優しい顔で、僕の頭を軽く叩いていた。


 …………。


 そのあと、足を矢で射貫かれた走り鳥を『回復魔法』で癒してあげた。


 クワァ クワァ


 走り鳥は元気に鳴く。


 僕が治したとわかったのか、頭を擦りつけてきた。


「あはは」


 モフモフ


 その羽毛を、僕もいっぱい撫でてあげた。


 うん、元気になってよかったよ。


 そうしていると、


「なぁ、ニホ?」


「ん?」


「その魔法で、俺の剣も直せないか?」


「え?」


 彼の手には、あの老人の『闇の氷柱』で折れた小剣があった。


 僕は困りつつ、


「えっと、多分、無理だと思う」


「そっか」


「うん……」


「くそ……結構、高かったんだぜ、これ。余計な出費だぜ」


 彼は、トホホと泣いた。


 あぁ……うん。


 確かに武器1つで、10万円以上するもんね。


 まぁ、でも、作ったばかりの雷の魔法剣の方が壊れなかったんだから、不幸中の幸いだったと思うよ。


 彼の妹は、


「もう、兄さんったら……」


 と、呆れていた。


 うん、彼女の気持ちもわかる。


 たった小剣1本で野盗を追い払えたと考えたら、充分、安上がりだ。


 だって、命以上に高いものはないもの。


 フランフランさんは、


 ペシッ


 兄の背中を叩いて、「ほら、兄さん」と励ましていた。


 僕は少し考えて、


「もしかしたら、捕まえた野盗の報奨金とか出るかもよ?」


「!」


「それで新しい小剣、買ったら?」


「そうか、そうだな!」


 彼は立ち上がった。


 僕らを見て、


「よっし、そうと決まれば、早く次の町へ行こうぜ!」


 と笑って、走り鳥に跨った。 


(あらま)


 立ち直りの早いこと。


 僕とフランフランさんは顔を見合わせ、苦笑してしまった。


 アシーリャさんだけは、


「…………」


 欠伸を噛み殺して、ぼんやりと青い空を見ていた。


 …………。


 そんな感じで、野盗を撃退した僕らは、再び走り鳥で街道を進み始めたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 その日の午後、次の宿場町に到着した。


 捕まえた野盗は、町の警備局に引き渡して、2000ポントの報奨金をもらった。


 日本円で、約20万円だ。


 高いのか安いのか、人の値段としてよくわからない。


 ただ、カーマインさんは残念そうだった。


 報奨金の革袋を手に、


「折れた小剣、4000ポントだったんだ……」


「…………」


 そっかぁ。


 でも、半分は取り戻せたってことで……ね?


 僕は、彼の背中を撫でて慰めた。


 フランフランさんは「もう…兄さん」と、やっぱり呆れた顔をしていたけどね。


 …………。


 捕まえた野盗から、あの老人のことも聞いた。


 でも、


「詳しくは知らねぇんだ」


 とのこと。


 金で雇った用心棒。


 魔法の腕を見込んで、仲間にしていただけらしい。


(ふぅん……?) 


 脛に傷ある同士、あまり深く詮索はしないのかな?


 ま、仕方ない。


 ただ、事情聴取の際、警備局の人に老人の名前を伝えたら素性がわかった。


 ヴォイド・ローガス。


 年齢は、推定72歳。


 性別は、男。


 出身地は、不明。


 若い頃、南西部諸国の戦争に参加。その戦場で、多くの功績を残した魔法使いの傭兵ということだった。


(傭兵……?)


 それは冒険者に似て、非なる職業。


 採取、配達、探索などもする冒険者に対して、傭兵は戦闘専門だ。


 そして戦う対象は魔物だけでなく、人間の場合もある。


(へぇ……?)


 あの老人も、そうだったんだ?


 ただ、彼の場合は犯罪歴もある傭兵だった。


 敵国の兵士だけでなく、民間人、また気に入らない味方の上官まで殺害した経歴もあるとか。


 うわぁ……。


 民間人の被害者数は、3桁以上。


 おかげで現在も、危険な犯罪者として警備局の手配リストに載っているらしい。


 また闇属性の魔法が得意。


 その分野では、宮廷魔法師にもなれたのではという才能の持ち主だったそうだ。


 警備局の人は、


「君たち、よく無事だったね?」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


 しみじみと言われて、僕らは何とも言えない表情になってしまったよ。


 顔、覚えられちゃったんだよなぁ。


 どうしよ……?


 …………。


 そうして、僕らは警備局をあとにした。


 そのあとは今晩の宿を探して、町の中を走り鳥で歩いていったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「杖君は、あの黒い杖を知ってるの?」


 僕は、問いかけた。


 それは、宿屋の客室だった。


 ちょうど、アシーリャさんと獣人兄妹はお風呂に行っていて、杖君と2人きりだったんだ。


 そして、ベッドに座る僕は、杖君に質問を投げかけたのである。


 その杖君は、


 ピカ……ン


 と、微妙に光った。


 知ってるけど、あまり、いい印象ではない感じ。


 僕は首をかしげ、


「知り合い?」


 ピカ……ン


 微妙な肯定。


「じゃあ、友達、とか?」


 ピカピカピカ


 連続する明滅。


 これは、激しい否定……かな?


(う~ん)


 僕は聞く。


「あの黒い杖も、杖君と同じ、あの神様っぽいおじいさんに関係した杖なの?」


 ピカン


 素直に認めた。


 そっか。


 つまり、杖君と同じように、神様が作った杖なのかな?


「杖君は、あの老人も知ってる?」


 ピカピカ


 こちらは否定。


「おじいさんは、あの老人に黒い杖をあげたのかな?」


 ピカピカ


 明滅する杖君。


 これは、消極的肯定……多分、そうだけど、実際の所は杖君もわからない、って感じだ。


(そっかぁ)


 僕は考える。


 あの老人は、悪人だ。


 僕に杖君をくれたおじいさんは、善人っぽかった。


 悪人に、あの黒い杖を渡すようには思えない。


 とすると、


(悪人じゃない頃の老人の若い頃に、黒い杖をあげた……とか?)


 そんな想像。


 何となくだけど、黒い杖は、白い杖君と同じような力を秘めた杖――霊杖と呼ばれる物なのだろう。


 ただ属性が光と闇で、対極なだけで。


 でも、基本は同じ。


 …………。


 つまり、杖君の力を悪用する人……それがあの老人だ。


(う~ん)


 何かやだな。


 手強そうなのもあるけど、単純に嫌だ。


 同族嫌悪?


 僕も杖君の力で生きている人間だから、余計にそう感じるのかもしれない。


 僕は、杖君を見る。 


 白い木製の杖。


 素朴で、不思議な温かみのある杖だ。


 そんな杖君に、


「僕は、あの老人みたいに、絶対に杖君の力を悪用しないからね」


 きっぱり言った。


 ピカン


 杖君は明るく光った。


 嬉しそう……かな?


 その輝きに、僕も微笑む。


 ギュッ


 いつも助けてくれる大好きな杖君を、しっかりと握り締めた。


 …………。


 やがて、3人も部屋に戻ってくる。


 食事を食べて、他愛ない話をして、2人の女性陣の髪のブラッシングをしたりして、その夜も更けていく。


 そして、翌朝。


「よし、次の町へ行くぜ」


「うん」


「は、い」


「ええ、兄さん」


 僕らは宿を出発し、走り鳥に跨って鉱山の町ロックドウムを目指したんだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「折れた小剣、4000ポントだったんだ……」 [一言] クスッとしました(笑 人間味がありますね!
2024/04/30 15:14 退会済み
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