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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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058・鉱石集め

「おいおい、そいつは酷い話だな」


 赤毛の獣人青年カーマインさんは、そう眉をしかめた。


 レオナ男爵と会った翌日だ。


 冒険者ギルド2階のレストランで、獣人兄妹と再会した僕は、昨日の出来事を2人にも伝えたんだ。


 依頼人が、町長の男爵様だったこと。


 また、娘さんが助かったこと。


 そして、そこでアシーリャさんの過去を教えてもらったこと。


 最後の内容を伝えた反応が、さっきの言葉だった。


 フランフランさんも「そんなことが……」と口元を両手で押さえて、痛ましげな表情だった。


 とはいえ、


「…………」


 モグモグ


 当のアシーリャさん本人は、僕らに構わず、1人でフライドポテトを食べていたけれど……。


 3人でその姿を見て、嘆息だ。


 僕らは、つい苦笑し合う。


 カーマインさんが赤毛の髪を手でかく。 


「神和国ラーディアだからな……。全体のために個を犠牲にする国風だが、本当に恐ろしい話だぜ」


「うん」


「怖い国ですね……」


「あぁ……だが、ま、いいさ。アシーリャは今、生きてる。それで充分だ」


 彼は、そう言った。


 うん、そうだね。


 過去は変えられない。


 でも、未来なら変えられる。


 今、アシーリャさんが生きているなら、過去が辛かった分も幸せな未来にしてあげたい。


 生きてるなら、それができるんだ。


 僕も、大きく頷いた。


 カーマインさんも笑って、頷く。


 それから、腕組みして、


「しかし、男爵が依頼人とはなぁ」


「うん、僕も驚いたよ」


「俺だってそうだ」


「だよね」


「おう。だが、いい後ろ盾もできたな」


「後ろ盾?」


「そうだ。小さな町の町長だが、国境の領地を任される代官の1人だ。それなりの権力を持ってる貴族だぞ?」


「…………」


「いい貸しを作れたな、ニホ」


 彼は、少しいやらしく笑う。


(う~ん?)


 別に、貸しとか借りとかじゃないと思うけど。


 でも、友好的な貴族に知り合えたのは良かったのかも、とも素直に思う。


 何かあったら、頼れそうだし……ね?


 僕は、アシーリャさんを見る。


 ……うん。


 今後、何事もなければ、それが1番だけどさ。


 僕の視線に、兄妹も彼女を見る。


 それから妹さんが、


「それにしても、今の聖女って、そんなに怖い人なんですね」


 と呟いた。


 怖い人、か。


 僕は、首をかしげた。


「他の聖女の殺害に関わってるかは、わからないよ?」


「え?」


「むしろ、その聖女様の周りの人たちが勝手に暴走して、自分たちの権益のためにやった可能性もあるしね」


「あ……」


「聖女様本人は、望んでなかったかもしれない」


 世の中は複雑だ。


 もちろん、真犯人の可能性もあるけど……。


(でも……)


 人の悪意ばかり信じて生きるのも、寂しいしね?


 僕の言葉に、フランフランさんは少し恥ずかしそうにしていた。


(ん?)


 彼女は僕を見て、


「ニホ君って、大人ですね」


「え?」


「私より年下なのに、考え方とか、凄く大人っぽいです」


「そう……?」


「はい」


 断言して、大きく頷かれた。


 そっかぁ。


 まぁ、記憶はなくても転生者だしね。


 多分、その影響もあるんじゃないかな。


 とはいえ、今の僕は、もう12歳の子供でしかないんだけどさ。


 カーマインさんは、


「ま、頭の回転は速いよな」


「…………」


「だが、人の善意を信じようとする所は、むしろ、子供らしい気もするけどな」


 と、苦笑した。


(あぁ、うん)


 それは確かに。


 僕も苦笑してしまった。


 と、カーマインさんは、ふと何かを思い出した顔をする。


(ん?)


 彼は「そう言えば」と前置きして、


「聖女と言えば、新しく代替わりしたことで、王国にもお披露目で顔を見せに来るんじゃなかったか?」


「え、そうなの?」


 その情報に、僕は驚いた。


 彼は頷く。


「あぁ、王都の方にな」


「ふぅん」


「と言っても、半年ぐらい先の行事だと思ったが」


「…………」


「ま、気になるなら、1度、その聖女の顔を見に行ってもいいかもな」


「うん、そうだね」


 僕は頷いた。


 近づかない方がいい気もする。


 でも、気になるのも確か。


 まだ先の話なので、今後、どうするか決めればいいかな、と思う。


 みんなの視線が、アシーリャさんに向く。


 モグモグ


 彼女は、フライドポテトに夢中。


(……う~ん)


 その姿を見ていると、何だか肩の力が抜けちゃうな。


 でも、それがいい。


 アシーリャさんは、きっとそれでいい。


 食事中の彼女を眺めながら、僕らは3人でつい笑ってしまったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「話は変わるんだが――」


 カーマインさんが、そう言い出した。


(ん?)


 そちらを見ると、彼は、


「次のクエストなんだが、鉱石集めをしてみないか?」


 と、提案してきた。


 鉱石集め?


 キョトンとなる僕に、彼は教えてくれる。


「Eランクのクエストであるんだよ。武器や防具なんかの素材になるんで、需要があるんだ」


「ふぅん?」


「重いし、採掘も大変なんだがな」


「うん」


「だが、たまに希少な鉱石が出るとボーナスも出るんだ」


「へぇ、そうなんだ?」


「おう。でかいと、10万ポント、な」


「…………」


 10万……だと?


 つまり、日本円で約1000万円だ。


 ゴクッ


 僕は、唾を飲んだ。


「そんなに?」


「あぁ」


 彼は、ニヤリと笑った。


 ちなみに、普通の報酬としても3000ポント(30万円)は出ると言う。


 対象の鉱石を必要量集めれば、クエスト成功。


 不足したら、減額。


 それが『鉱石集め』のクエストだって。


 そして、もしも希少な鉱石を見つけたら、その価値に合わせた特別ボーナスが支給されるというのだ。


 その最高額が10万ポント(1000万円)。


(なるほど……)


 つまり、宝くじだ。


 滅多に当たりは出ない。


 でも、出たら、高額が手に入る。


(そっかぁ)


 カーマインさん、こういうの好きそうだよね?


 何か、納得だ。


 フランフランさんは、兄の横でため息をこぼしていた。


 でも、止める気はないみたい。


 ま、損はないもんね。


 くじに外れたって、基本の報酬はもらえるのだから。


 彼は身を乗り出して、


「どうする、ニホ?」


 と聞いてきた。


 僕は苦笑して、


「うん、いいよ。やろうよ、鉱石探し」


 と答えた。


 実は僕も、こういうの大好きです。


 だって、一獲千金って、何か冒険者っぽいもんね。


 カーマインさんは、パチンと指を鳴らして「そうこなくっちゃ!」と喜んでいた。


 妹さんは、困った顔で笑っていた。


 アシーリャさんは、


 モグモグ


 と、何も言わずに食べているので、まぁ、大丈夫だろう。


(杖君もいい?)


 ピカン


 杖君も明るく光った。


 うん、よかった。


 それに安心して、僕も笑った。


 それから、


「でも、鉱石ってどこで集められるの?」


 と聞いた。


 カーマインさんは、答えた。


「ダンジョン遺跡だ」


「え?」


「全員で『ダンジョン遺跡』の中に入って、つるはし使って、鉱石を掘るんだよ」


 その掘る仕草をして、彼は楽しそうに笑った。

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