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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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52/81

052・採取

 道案内の蝶に、崖上までの迂回路を案内してもらう。


 5分後、崖上に到着した。


 ヒュオオ……


 吹き抜ける風が、僕らの髪を揺らしていく。


 崖下を覗き込む。


 高さは、約30メートル。


 そして、10メートルほど下の壁面に、虹色の輝く花弁の『太陽の恵みの花』が生えていた。


(なるほどね……)


 あんな場所に生えているんじゃ、簡単に見つからないはずだ。


 獣人の少女も、


「す、凄い所に咲いてますね……」


 と、目を丸くしていた。


 さて、どうしようかな?


 ロープがあれば何とかなったかもしれないけど、残念ながら持ってない。


 さすがに、この状況は想定外。


(う~ん?)


 少し悩んでいると、


 シュラン


 アシーリャさんが長剣を鞘から抜いて、森の方へと歩きだした。


(ん……?)


 彼女は、近くの1本の樹へ。


 ヒュン


 軽く剣を振るって、何かを拾うと戻ってきた。


 何だろう?


 見れば、それは樹の幹に絡みついていた蔦だった。


 太さは、3センチぐらい。


 長さも5メートルぐらいある。


 彼女は、


「使え……ます、か?」


 と、首をかしげた。


 長い金色の髪が柔らかく肩からこぼれた。


 僕は笑った。


「うん」


 いいアイディアだ。


 それから僕らは何本かの蔦を手に入れ、それを縛って、20メートルぐらいの即席ロープを作成した。


 ギュッ ギュッ


 強く引っ張るけど、


(うん)


 大丈夫そうだ。


 それを近くの太い樹の幹に回して縛り、反対側を僕の腰に巻きつけた。


 崖の縁に立つ。


 ヒュオオ……


「…………」


 落ちたら、無事じゃすまないね。


 少しドキドキ。


 獣人の少女は、


「あ、あの……私が代わりましょうか?」


 と言った。


 でも、そう口にする本人も青い顔。


 僕は苦笑する。


「ううん、大丈夫」


「でも……」


「それに、この蔦がどこまで丈夫かわからないし、だから1番体重の軽い僕がやるよ」


「……ニホ君」


「それに、魔法もあるから」


 と、杖君を見せた。


 そんな僕に、彼女は迷いつつも「わかりました……」と頷いた。


 僕も笑って、頷く。


 それから、


「杖君、翼を」


 ピカン


 杖君の先端が輝く。


 光の粒子が僕の背中に集まって、『光の翼』になった。


(うん、軽い) 


 自分の体重が10分の1ぐらいになった感覚。


「ニ、ホ、さん」


 アシーリャさんが僕を呼ぶ。


 彼女を見る。


 彼女のアメジスト色の瞳は、心配そうに僕を見つめていた。


 僕は微笑み、


「ちょっと行ってくるね」


 と言う。


 蔦のロープを掴みながら、


 タン


 背中の翼を広げて、崖下へと軽く跳躍した。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 思ったより簡単に、崖は降りていけた。


(――うん)


 魔法で軽くなったおかげかな?


 僕は1分もしないで『太陽の恵みの花』のある崖の中腹に辿り着いた。


 キュッ


 蔦を強く握り、ブレーキ。


 両足の靴底で、しっかりと壁面を踏んで身体を安定させた。


「これか」


 目の前には、ハイライトされた虹色の花があった。


 凄く綺麗だ。


 見る角度で、花弁の虹色がグラデーションのように揺らめくので、本当に太陽の光みたいだった。


(さて……)


 これの採取だ。


 でも、生えているのは、硬い土の壁だ。


 どうやって掘るかな?


 小さなナイフで試してみるけど、


 ガキッ


 うん、無理だ。


 少しは掘れるけど、途中で刃が折れてしまいそう。


(となると……)


 僕は少し考え、


「杖君」


 と、声をかけた。


 僕の意思に応えて、杖君はピカンと光ると先端から円錐形の光を生み出した。


 円錐には、溝がある。


 うん、ドリルだ。


 僕は笑って、


(えいっ)


 その『光のドリル』を硬い壁面に押し当てた。


 ギュィイン


 ドリルが回転して、花の周辺の硬く締まった土たちが簡単に削れていく。


 バラバラ


 崖下に、土が落ちていく。


(花の根は傷つけないように……慎重に……)


 少しずつ、掘っていく。


 …………。


 …………。


 …………。


 やがて、花の周囲の土が全て落ちて、


「よっ……と」


 ポロッ


 根に土を絡めた状態で、太陽の恵みの花を取り出すことに成功した。


(やった)


 僕は笑った。


 杖君もピカピカと明るく輝く。


 その花を大事に抱えながら、僕は壁面を蹴る。


 タン タン


 魔法で軽くなった僕は、フワッ……フワッ……と蔦ロープを辿りながら、崖を跳ねるように登っていく。


 やがて、崖の上へ。


「ニ、ホさん」


「ニホ君!」


 最後は、2人のお姉さんが僕を引っ張り上げてくれた。


 僕は「ただいま」と笑った。


 アシーリャさんは、


「は、い」


 ギュッ


 安心したように、僕の小さな身体を抱きしめた。


 フランフランさんも、


「おかえりなさい」


 少し困ったように笑って、そう答えてくれた。


 僕は、腕の中を見る。


 そこには、虹色の花弁を輝かせる『太陽の恵みの花』が元気に咲いていた。


 萎れそうな気配はない。


(……うん)


 無事に採取できたみたいだ。


 花を傷めないように布で丁寧に包んで、肩かけ鞄にしまっておく。


 よし、これでまず1本。


 あと2本だ。


 僕は、2人の年上の仲間を見て、


「じゃあ、次の花を探そう」


「は、い」


「そ、そうですね」


 2人も頷いてくれた。


 それから、僕らは探索を再開して、再び森を歩いた。


 やがて、3時間後。


 似たような崖で、残り2本の『太陽の恵みの花』を発見して、それぞれ同じ方法で採取した。


 うん、無事にクエスト完了だ。


 …………。


 その後、森を出ると、僕ら3人と1本は、その日の内にレイクランドの町に帰り着いたんだ。

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