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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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050・薬草花

 薬草花。


 それは薬草と同じ薬となる花のことだ。


 マーレンさんは、


「お願いしたいのは、『太陽の恵みの花』っていう薬草花なの」


 と言った。


 ふぅん?


 僕は首をかしげて、


「それを採ってくればいいの?」


「えぇ」


 彼女は頷いた。


 太陽の恵みの花は、とても貴重なんだって。


 薬効は高い。


 でも、傷み易くて、雑な採取の仕方だと簡単に駄目になってしまうらしい。


 そして、


「発見されることも稀なの」


「そうなの?」


「えぇ。この5年で1回しか、納品されたことがないの」


「5年で1回?」


 驚いた。


 本当に見つからない花なんだね。


(……うん)


 でも、杖君の力なら、きっと見つけることができるんじゃないかな?


 僕は、少し楽観している。


 マーレンさんは僕を見る。


「お願いできる?」


「うん、いいよ」


 自信もあったので、僕は安請け合いした。


 マーレンさんは、安心した顔だ。


「そう、よかった」


 胸に手を当てて、嬉しそうにしていた。


 その顔を見つめ、


「でも、どうして僕に?」


 と聞いた。


 彼女は「え?」と僕を見る。


 それから、


「ニホ君、薬草集めるのが得意でしょう? だから、頼んでも安心かなって」


 と、微笑んだ。


 安心……? 


 僕は、キョトンとしてしまう。


 彼女は言う。


 実は『太陽の恵みの花』の採取は、通常のクエストとして掲示板には出ていない。


 なぜか?


 それは、それが本当に希少な花だから。


 そもそも薬草採取のクエストは、あまり人気がない。


 理由は、労力に対して報酬が少ないから。


 だから冒険者たちが薬草採取のクエストを受けるのは片手間で、採取方法も、採取した薬草の扱いも雑だった。


 結果、品質がとても低い。


 太陽の恵みの花は、そんな扱いをすれば簡単に駄目になってしまう。


 だからこそ、


「ニホ君にお願いしたかったの」


 だって。


 僕はほぼ毎日、薬草を集めてくる。


 しかも、品質も高い。


 おまけにFランクからEランク冒険者に昇格して、信用度も上がった。


 亜種だけど、竜殺しの名声も得た。


 冒険者ギルドから指名依頼をするだけの下地もできていたんだって。


(なるほど……)


 それで、今回の話か。


 マーレンさんは言う。


「報酬は、6000ポント。日数は14日間。ただ花自体は、採取してから2日間しか持たないわ」


「うん」


「必要本数は、3本」


「それだけ?」


「えぇ。でも、本当に見つけるのが難しいのよ?」


「うん、わかった」


「この条件で、お願いできる?」


 彼女は、もう1度、確認する。


 僕は頷いた。


 杖君を持ち上げて、


 ピカン


 先端を光らせて、自信をアピール。


 そして、


「うん、任せてよ」


 と、笑顔で答えた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 受付を離れたあと、


「みんなはどうする?」


 と、僕は聞いた。


 今回のクエストは、僕個人が指名されて頼まれたものだ。


 みんな、火炎蜥蜴の討伐直後で疲れてる。


 報酬は4人で分けるつもりだけど、薬草花の採取は、僕1人でやってもいいと思ったんだ。 


 今回は、魔物の討伐もない。


 ぶっちゃけ、いつもの安全な薬草集めと変わらないのだ。


 3人に、そう相談した。


 獣人兄妹は、顔を見合わせる。


「ニホが1人やるって言うなら任せるぞ」


 と、カーマインさん。


 彼は笑って、


「あと、報酬も要らないからな」


「いいの?」


「当たり前だ。さすがにやってもいないクエストでもらう気はないって」


「……そう」


 別にいいのに。


 そう思う僕に、彼は苦笑する。


 クシャクシャ


(わ?)


 少し乱暴に頭を撫でられた。


「正直、疲れもあるしな。今回は、俺はニホの言葉に甘えるよ」


「うん」


「フランフランはどうする?」


「わ、私は……」


 彼女は迷った顔だ。


 チラ チラ


 僕の方を窺う。


(???)


 僕は首をかしげて、


「無理しなくていいよ?」


「う、ううん……私は、一緒に行きたいなって」


「そうなの?」


「う、うん」


 彼女は三つ編みを揺らして、コクコクと頷いた。


(ふ~ん?)


 じゃあ、お願いするかな。


 僕は「うん、わかった」と頷いた。


 フランフランさんは胸元を押さえて、ホッとした顔だ。


 兄の方は苦笑している。


 それから僕は、アシーリャさんを見た。


「アシーリャさんは――」


 キュッ


 話している途中で、服の裾を摘ままれた。


「…………」


 アメジスト色の瞳は、僕を見つめる。


(あ、うん)


 口ではなく、視線が雄弁に語っている。


 僕は頷いて、


「えっと……じゃあ、一緒に行ってくれる?」


「は、い」


 彼女は、嬉しそうに頷いた。


 うん……ま、いいか。


 必要な薬草花は、たったの3本。


 正直、3人も要らないとは思うんだけど……ね?


 でも、行きたいなら止めるつもりもない。


 僕は、右手の白い杖を見て、


(杖君は、よろしくね)


 心の中で、呼びかける。


 ピカピカ


 すると、杖君は『任せて』という風に光ってくれた。


 僕も笑った。


 …………。


 そうして僕らは3人と1本で、太陽の恵みの花を探すことになった。

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