027・アルテナの長剣
今日は買い物の日だ。
ベッドで目を覚ますと、今朝もアシーリャさんの抱き枕だった。
(ふぅ……)
紳士な僕は、ため息である。
頬の熱が引いてから、彼女を起こした。
「おはよう、アシーリャさん」
「……おはよ……ます」
朝の挨拶をして、
シュッ シュッ
いつものようにブラシで金色の髪を丁寧に梳いてあげる。
相変わらず、気持ち良さそうだ。
それから食堂で朝食。
やがて準備を整え、杖君を手にして宿屋を出発した。
…………。
早朝の通りを歩く。
今日の僕の鞄には、約100万円が入っていた。
(……うん)
ちょっと緊張するね。
落とさないよう、盗まれないよう注意しながら、武器屋へと向かった。
やがて、お店に到着。
(さて……いい武器、あるかな?)
と、入店した。
武器コーナーには、たくさんの武器が陳列されていた。
種類も様々。
長剣、短剣、槍、弓、鉄槌、棍棒、大剣、斧……色々ある。
僕は隣のお姉さんを見て、
「アシーリャさんは、剣だよね?」
「は、い」
確認に、彼女は頷いた。
僕らは、陳列された剣たちの前へ。
やはり定番なのか、他の武器に比べて、品揃えも多いみたいだ。
それを眺めて、
(やっぱり長剣かな?)
僕は、壁に並んだ長剣を見上げた。
安いのは、15万円。
これは、今、アシーリャさんが使っている普通の長剣だ。
今回の予算は、100万円。
なので、その金額の剣を探す。
(うわ……)
値札を見ていって、驚いた。
1番高い剣は、30万ポント……つまり、3000万円だ。
鎖で繋がれ、ケースに入れられていた。
他にも、1000万円とか、数百万円の剣もある。
(け、剣って高いんだね……)
その相場に驚いてしまった。
100万円あれば、相当いい剣が買えると思っていたけど、そうでもないみたい……。
まぁ、仕方ない。
15万円に比べたら、きっとマシだろう。
(うん)
自分を納得させる。
陳列された剣の中に、100万円の剣は2種類あった。
1つは『疾風の剣』。
その剣身は、薄い水色をしていた。
今まで使っていた長剣よりも少し細身で、けれど、持つ重さは半分ぐらいの印象だ。
でも、頑丈さと切れ味は増しているとか。
(ふ~ん?)
どうやら、軽さと速度を重視した長剣かな。
…………。
そして、もう1つは『アルテナの長剣』。
こちらは深い青色の剣身だ。
材料は、アルテナ湖の湖底で採取された特殊な鉱石だとか。
重量は、今までの長剣より若干重い。
でも、その分、1撃の威力は上がっているようで、頑丈さはかなりありそうだった。
(ふむふむ)
こちらは威力重視の長剣らしい。
…………。
僕としては、どちらも甲乙つけ難い。
あとは、使う本人に任せよう。
と言うことで、
「アシーリャさんは、どっちの剣がいい?」
と聞いた。
彼女は、ぼんやりと2本の長剣を見比べた。
1本ずつ、手に取る。
ヒュッ
と、軽く振った。
それぞれを素振りすると、その目を閉じる。
「…………」
「…………」
しばしの沈黙。
やがて、アシーリャさんのまぶたが上がり、アメジスト色の瞳が覗いた。
そして、言う。
「こっち……いいで、す」
カシャッ
僕の前に、1本の剣を差し出した。
それは、
「アルテナの長剣……?」
「は、い」
僕の確認に、彼女は大きく頷いた。
(そっか)
彼女が決めたんなら、僕から言うことは何もない。
でも、一応、理由も聞く。
「どうして?」
「ニホさん、守るには……1撃で、相手、仕留めない、と……」
「…………」
「だから、こっち、です」
口調は、いつもと変わらない。
でも、ぼんやりした瞳の奥に、強い決意の光があった。
(アシーリャさん……)
なんて言っていいのか、わからない。
ただ、胸が熱い。
僕は「そっか」と頷いた。
「じゃあ、こっちにしようか」
「は、い」
アシーリャさんは、頷いた。
そして、僕らは店員さんに声をかけた。
チャリン
子供の僕が出した100万円に、店員さんは少し驚いていた。
けど、無事に購入だ。
買ったばかりの『アルテナの長剣』を、
「はい、アシーリャさん」
と手渡した。
彼女は、それを受け取る。
ギュッ
大事そうに抱えて、
「ありがとう、ございま、す……ニホさん」
と、嬉しそうにはにかんだんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
その日は、久しぶりの休暇を楽しんだ。
アルテナ湖まで散策もした。
この間食べたクレープを、また2人で食べたりもして、アシーリャさんも幸せそうだった。
うん、僕も楽しかった。
その日は杖君も、
ピカピカ
と、明るく光っていた。
さて、そんな1日も過ぎて、すぐに翌日だ。
今日からまた仕事。
新しい『アルテナの長剣』の切れ味を試すためにも、本日も討伐クエストを受けるつもりだ。
と言うことで、冒険者ギルドへ。
到着して、すぐにクエスト掲示板を確認する。
(えっと……)
これとこれ、かな?
ペリッ ペリッ
薬草集めと火狼の討伐、その2つの依頼書を確保した。
それを手に、受付へと向かう。
「いらっしゃい、ニホ君、アシーリャさん」
「おはよう、マーレンさん」
「お、はよ……ます」
ピカン
僕らは、笑顔のハーフエルフの受付嬢さんに挨拶した。
そして、依頼書を提出。
いつもなら、すぐに手続きしてくれるんだけど、
(……?)
その日は、ちょっと違った。
マーレンさんは、僕を見つめて、
「ニホ君、手続きの前に少しいいかしら?」
と言われた。
(ん……?)
何だろう?
僕らはキョトンと、彼女を見る。
マーレンさんは、
「実はね、今、ニホ君たちとクエストしたいって人たちがいるのよ」
「え……?」
「それで、ニホ君たちはどうしたいか聞きたくって」
と言った。
…………。
えっと……僕らとクエストしたい人?




