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アンジェリーヌは一人じゃない  作者: れもんぴーる


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エピローグ

 僕は相変わらずヴァランティーヌ王女、もといアンヌ姉上の子分をやっている。

 姉上は王女になったというのに、広くて素敵な部屋でやっぱりごろごろしているんだ。

 病弱設定をちゃっかり生かして、侍女やメイドたちも姉上のごろごろを認め、当たり前に思っている。逆にお可哀想にと涙を誘っているのだ。

 結構好き勝手なことをしているのに、これまでの事があるから皆信じ込んでいるんだよね。


 そして僕やアンジェリーヌ姉様、ナリス様達と集まるたびに姉上が歌ってくれるんだけど、歌声がドアから漏れるんだよね。その歌声を聞きつけた人々が集まり噂になり・・・病弱で社交界に出れなかったという王女は、実はアッサンとして活動していたらしい、という噂がまことしやかに囁かれ、もうそれが事実のように話が広まっている。

 王宮でこれまでの王女の事を知っている者達はもちろん事実ではないと知っている。

 しかし、どういうわけか、王女は確かにアッサンの歌を歌えるのだ。そればかりか新しい歌を次々と披露している。

 理解できない事であったが、その事実が王女をアッサンだと認めざるを得ない雰囲気になっていた。

 王家が積極的に否定をしなかった事もあり、王女がアッサンだったのだということが事実となった。

 国王は頭を抱えたが、そういうことにしてしまえば、王女が歌を歌っても怪しまれることはなく、アッサンの歌を世に出すこともできる。だから王家は沈黙し、事実上アッサンの正体にお墨付きをつける事となった。

 


 まあ、それはともかく僕は姉上の子分として走り回されているんだ。

 美味しいものが手に入ったからアンジェリーヌに渡してほしい、あれを買ってきてなどと、呼びつけられる。

 そんなもの、王女なんだからお付きの者にやらせればいいのに、こんな雑用は子分の仕事だという。

 そう言いながらも僕に会いたいのではないかと思っているので、僕も喜んで登城するんだけど。


 そしてまさか、王宮に出入りしているうちに王妃様とも親しくさせてもらうことになり、それが縁で王妃様の生家のご令嬢と婚約することになるとは思ってもみなかった。

 姉上はアンジェリーヌ姉様だけでなく、皆を幸せにしてくれた。


 でも姉上は病弱設定を忘れて、時に活動的になる。国王陛下が引くくらいに。


 先日はロッシュ家前公爵夫妻に謹慎を申し渡していた。

 僕もその計画の一端を担わされたんだけど・・・怒る姉上は怖いけどかっこよかった。

 それ以外にも、不幸な女性たちを救いたいと言って王女直轄の駆け込み教会を作ったんだ。

 夫の不貞に泣く者、理不尽な家族や婚約者に耐えている者、雇い主に暴力を受けているもの・・・とにかく世の我慢している女性、子供たちに逃げ場所を!と言ったような教会が出来た事で、社交界や世間はいい意味でも悪い意味でも大騒ぎになった。

 聡明で優しい王女可愛さに、女性・子供を守る法案を国王が速攻で通したから、弱者を虐げる者は立派な犯罪者として取り締まれるようになったのだ。


「侯爵とロジェをこれで取り締まれなかったのは残念ね」

 王宮の王女の部屋で相変わらずごろごろしながらお菓子を食べている姉がつぶやいた言葉にぞっとした。だって僕だってその対象になる立場だったから。


 そう言いながら、時々アンジェリーヌ姉様とともにロジェ様をお茶会に招待しては冷ややかな視線を投げかけ、時折口角を片方挙げて笑って見せている。気の毒なロジェ様は大汗をかきながらカップをガチャリと落としかけている。その時の姉上の満足した顔・・・・。

 そして時には父上が登城した時にはわざわざ顔を出し、「再婚をお考えなら相手の身元調査は私がいたしますわ。侯爵はとても素直な方ですもの、また騙されてはいけませんから」とにこやかに告げる。

 父上は真っ青になりながら、もう再婚するつもりはないと約束する。そんな父に姉上はまた嫌味な笑いを見せつけて汗をかかせている。

 きっと二人とも、取り締まられた方が楽だったと思う。

 


 僕はこのまま姉上がもっとどんどん凄いことをやりそうで怖い。だって確実に巻き込まれるからね!

 姉上に権力を与えたのは失敗だったんじゃない? ねえヤギの神様。



この後もう少し番外編を予定しています。


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