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私を守るため傷ついたモモさん。
コガネさんの方をチラリと見るが、見たことのない怒りの表情をしている。
さらに続く邪神の止まらない黒きオーラの攻撃に、傷だらけの体でギンとレオ、少し遅れてクロが立ちふさがるが、その三人は黒オーラにより軽く横なぎに飛ばされる。
すぐにエンが巨大な岩を作り出し、それを覆うようにコガネさんの氷が、ダイとユズの氷と茨がさらにその厚みを加えていく。無残にもそれは二本の黒オーラにより十字に切られ砕け散り、はじけ飛んだ。
その攻撃に一番前にいたエンだけでなく、私もコガネさんもダイとユズも、そのはじけた破片が体に食い込んでいく。みんなが傷ついている……私がなんとかしなきゃ……倒れ込みながらも白いオーラで傷を癒していく。
だがそれは一時しのぎでしかない。邪神がすぐそばまで迫ってきているから。
そのタイミングでアッシュールさんたちも静かに邪神へと攻撃を仕掛けてゆく。両脇から三人が魔法を叩き込むがその攻撃は体を小さくすくめた邪神にかき消されるように消滅する。
そして再び黒いオーラが二本伸び、うねうねと動きながら三人を薙ぎ払う。遠くへ吹き飛ばされる三人はそのまま倒れたまま動かなくなっている……
なんだ、スキルなんかなくても圧倒的じゃないか……
こんなのに、誰が勝てるというのだ……
絶望しかけた私と邪神の前にユキがひょこりと割り込んできた。禍々しいオーラを放つ邪神の前に、小さい体で立ち向かうユキ。妹のように思っているけど私よりずいぶん長く生きている神獣なんだもんね……
でもだめ、できれば逃げてほしいな。そう思ってしまったのだ。もうなんでもいいから、一時でもいいからみんな逃げてこの世界が終わるまではのんびりしてほしい……そう思ってしまったのだ。
「ユキ……にげて……」
絞り出した私の言葉。
それでもユキは無言で至近距離から雷撃を邪神に向けて連発する。だがそれは光の盾により阻まれそして嘲笑うようにゆっくりと距離を縮めていく邪神。
拳に全力の雷撃を籠め慣れない拳による攻撃を仕掛けるユキは、それは軽くいなされ手を掴まれて邪神に投げ飛ばされる。その小さな体が宙に浮き、突き出た黒オーラに手足が撃ち抜かれた後、放り出される体……
私は何とか白いオーラを全員に伸ばそうとするが、私の伸ばした右腕を邪神が踏み抜いた。ボキリと嫌な音がして私はその痛みに声を上げ叫ぶ。その痛みで集中ができない……私は歯を食いしばりながらも邪神を下から見上げる……
邪神の勝ち誇った顔に悔しさが込み上げる。
『これで!俺の勝ちだ!』
ニヤリと笑う邪神。私の腕からゆっくりとその足を退ける。
『俺がいったいいくつのスキルを手にしたと思ってる!勝てると思っているその頭はイカレテルんじゃねーか?』
勝利を確信した邪神は、笑いながら何やら語り出す……
『元々な、強奪スキルは相手を殺して奪うものだ。だがそれは相手のスキルの劣化版でしかなかった!だから俺は前回、勇者と呼ばれた神の子と、ハイエルフのばばあ、そしてそこに転がっている竜により封印された!
だが今は違う!最初に神の力を奪ったからかその能力は驚くほど進化した!すべてのスキルを完全に自分の物にできるものへと変貌していったんだ!分かるか?そのことを知った俺の喜びが!
といってもまあ、それが分かったのは……そうだった、お前のあの血縁を二人ほど喰った後だったか?』
血縁?誰を?私に、この世界に血縁など……いない……
『たしかお前の、母親と姉か?その二人を喰った時、その奪った二つのスキルが混ざり合い、賢者という名の全てを知り尽くすスキルへと昇華した。そして全てを理解したのだ!これで神の子を喰えば俺は女神に完全勝利できると!
そう言えば一緒に俺が王だと嘯いた男もいたな。まああれば特に覚えてない。大したスキルじゃなかったのだろう!だがまあそんなことはいい!お前を喰って女神どもも喰って……その世界そのものを喰ってやる!』
そうか。あの母だった女も、姉だった女も、もういないのか……あまり何も感じないな。それよりも何よりも、この危機を乗り越えるには……今がチャンス、かな?
私はまだ高笑いして悦に入っている邪神に近づき……そっと手を添えた。
「油断し過ぎ、じゃない?」
邪神が話の夢中な間、白いオーラを注ぎ込み自分をなんとか回復していた私。少しだけ動ける体でやっと邪神にふれることができた……アッシュールさんに聞いていた、最後の手段……
私は白いオーラを全身から噴き出した邪神へとただひたすらに注ぎ込んだ。本当はみんなでボコって邪神が弱った後、この力で魂を消滅させて終わりなはずだったんだ。
『くっ何を!いつのまに……ち、力がはいらん!やめろ、このクソガキが!』
ジタバタと体を動かすが既に太いオーラの糸が邪神を雁字搦めにしていた。
「イメージは、そう!クロがユキを運んだ時の簀巻のように!」
「お、お姉様……何を……」
名前を呼ばれたからか口から血を流しながらそう口にするユキ。そうだよね。あの時ユキは気を失っていたから……てか意識取り戻したんだね。良かったまだ生きていた。ごめんねそんなボロボロになるまで……
もう少し……眠っていてね……
私の願いが通じたのか、ゆっくりと目を閉じてゆくユキ。私の笑顔を見てくれたかな?大丈夫。大丈夫だからね……
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