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ご覧いただきありがとうございます。本日二回目です。
最後に評価など頂けれは嬉しいです。
「回復を!回復をしなくちゃ!」
「落ち着くのじゃ!まだなんとかなる!」
焦る気持ちばかりが募る私にモモさんが声を掛けてくれるが、多分それは気休めなんだろう。どうしたらこの状況で何とかなるとだというのだ……私が、私が邪神に……
まだジロたちだって完全には休めるほど時間を稼いではいない。玉砕覚悟で私が突っ込む?もしかしたらワンチャン……そんなことを思いながら体に魔力を巡らせる。
そんな私の目にジロの背中が映る。そしてその隣にはクロ、ギン、エンが同じように立っている。
「大丈夫だよ!マリ姉!」
ジロが私を見ないままそう語り掛けてくる。全身まだ血が噴き出した後が残っている。傷口は塞がったようだがまだ体力は削られたままだろう。それでも四人を、みんなを信じで送り出すしか私はできない。
「頑張って!」
私は願うことしかできない。
「もちろん!」
「しかたねーな!」
「我に任せよ!」
「姫の仰せの通り!」
四人がそう声を上げ、邪神へと駆けていく。
「負けてられないね!」
レオが叫ぶとコガネさんも無言でうなずいている。隙をついて参加するつもりだろう。その時にはまたアッシュールさんたちも行くのだろう。
「見ててくださいお姉様!」
そんなタイミングでユキが叫びながら雷撃を連射していた。
邪神は四人の攻撃をなんとか捌きながらも光の盾を頭上に出現させてユキの雷撃も防いでいる。だがユキは器用に雷撃の発生する位置を変え、斜めに邪神めがけて放っている。さすが神獣。かなり効果的な嫌がらせに見える。
『えーい!鬱陶しいわー!』
みんなの善戦に少し浮かれていた私は、吹き飛ばされる四人、いやコガネさんたち残りの五人もまとめて吹き飛ばされる光景を眺めていた。
『いたたたた……これを使うと俺も痛いからな……使いたくはなかったのだが、チマチマチマチマチマチマとっ!本っ当に女神の下僕どもは鬱陶しいことこの上ない!』
私は邪神から目が離すことができなかった。
背中に冷や汗が伝う。全身から黒いオーラが噴き出ていた。それが暴れてしなる鞭のように周りに打ち付けられているようだった。忘れかけていた恐怖心が込みあがってくる。
さっきまでとは別物で見ているのは怖いけど目を離すのもそれはそれで怖い。そんな存在へと変わっていた。
それでも吹き飛ばされたみんなに回復のオーラを飛ばすが、あまり回復効果が伝わっていないように思える。あの邪神から噴き出ている黒いオーラに邪魔されているようなそんな感覚……
それでもジロは立ち上がり……人化を解いた。
黒い毛並みが輝く銀色に輝くように揺れる神狼……フェンリルの姿になったジロ。そのジロにオーラを強くつなげる。ジロが……立ち上がってるのだ。恐怖に飲まれるわけにはいかない。
ジロが『グルル』と唸る。初めて聞く狼っぽい声。
そしてその体が赤く染まる。業火の様は炎が噴き出す。そして大きな爆発音と共に私はジロを見失ってしまう。それはきっと邪神へと向かっていったのだろう。目の前の邪神が吹き飛び周りの木をなぎ倒していったから……
『いててて』
血濡れになった肩口を抑えながら立ち上がる邪神。だがすぐに次の攻撃、赤い何かがぶつかり体が弾かれるようによろける。太もも付近に大きな傷ができる。それからも度々邪神に対するジロの攻撃は続いている。
邪神の方もジロの位置は分かってはいるようで、体を捻りながら刀を振ったり蹴りを放ったりしているが、それはどれも空を切るばかりだった。
今度こそ!そう願いを込めて確かにつながっているはずのジロに頑張ってと強く願う。もうこれしかやることができない不甲斐ない私。でも弱音を伝えるわけにはいかない。信じてる。絶対に勝てるのだと、そう強く思い願った。
ジロの業火を含んだその攻撃は続く。
何度も弾かれるように飛ばされる邪神。ただ飛ばされるだけだった邪神も徐々にだが慣れてきたのか時折その反撃はジロを捕らえだしているようだ。
すれ違いざまに振った邪神の拳で、その邪神の鮮血と一緒に時折ジロの血しぶきも飛び散っていた。私はジロが傷を負うたびにその傷を癒すため、繋がっているはずのジロの回復を強く願い続ける。
だが、遂に邪神の反撃が成功してしまう。
邪神のその手がジロの首をガシリと掴んでしまう……『ぐぅ』とひねり出されたような唸り声を上げるジロ。
それを見て悲鳴を上げる私より早く、ジロは黒いオーラの棘に腹部を刺され、そのまま鞭のようにしなった黒いオーラがジロの体を宙へと放り投げた。ドサリと落ちたジロの体……体に纏っていた真っ赤な炎は消えていく。
その代わりに真っ赤な血液がジロのその毛を染めていく。
ピクリとも動けなくなったジロの元へと私はモモさんの静止を振り切って走る。
だがその行く手に邪神の黒いオーラが鞭のように飛んでくる。それを認識していた私はなんとか躱そうとするのがどうやらそれは無理そうだ。そう判断してジロの方にと前へ飛び込む。
そして……その私を庇うように覆いかぶさったモモさんの体が、黒いオーラの鞭に薙ぎ払われ吹き飛ばされる。モモさんのその綺麗な肌に鮮血が飛び散っていく。私もダイも、そしてユズもその光景に悲鳴を上げるしかできない。
コガネさんの方をチラリと見るが、見たことのない怒りの表情をしている。
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