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Side:マリアント
私たちはギンにのって拠点の南側、広い森を探索するため岩場に降りる。
人型に戻ったギンが手慣れた様子で服を着る。
ジロが周りに魔物が一杯いる気配がすると教えてくれたが、そもそも上空をワイバーンが数匹ぐるぐる飛んでいるので、まずはそっちを何とかしようと思っていた。
「マリ姉はエンのそばにいてね」
ジロにそう言われた私だが納得はいかずに少しだけ口を尖らせる。妖精ちゃんの力を受けた私ならきっと戦えるもん!そう思ったのだがそんなことを考えている間に、見える範囲のワイバーンはすでに消えていた。
地面に打ち付けられ絶命していたその竜は、ジロがせっせと回収していった。これで美味しいお肉の備蓄がまた増えたことには喜びを隠しえない。
ならば地上だ!と周りを見ると、すでにレオとモモさんがドラゴンリザードや大猿、大蛇にオークといった魔物を殲滅していた。よく見るとダイとユズもその輪に加わっていたから、心のそこから悔しさが滲み上げてくる。
「もう!私も戦いたい!」
「姫はいるだけでいい。何かあっては困る。回復役は後方支援が当たり前」
エンのもっともな言葉に駄々をこねる私。最近はダイとユズとの差も縮まるどころか広がるばかりの気がしてつらい。
「マリネエは白オーラの力があるから良いではないか。ピンチの時の秘密兵器、というところじゃ」
周りの魔物を狩り終えて戻ってきたモモさんが、私を後ろから抱きながらそう声を掛けてくれる。
まあそうなんだけど、せっかく魔法も使えるようになったのにちっとも実践で試せない。モモさんから漂う良い匂いを嗅ぎながらそんなことを考えていた。
魔法も徐々に強くはなってりと感じはするけど、毎日の修行でダイとユズにはほぼ効果がなく、毎回返り討ちに合うのだから成長が実感できずにモヤる私。
「そんなことより、このままさらに南まで移動する、ということでいいのじゃな?」
私の悩みをそんなこと呼ばわりしたモモさんは、目的の南方を指差しながら確認をした。
私はそれを肯定して森の中を南へと歩く。
「なんじゃ?珍しいの……」
暫く魔物をなぎ倒しながら進んだ私たちは、森の少し開けた場所で、膝を折り座り込んでいる白馬……いやユニコーン?真っ白な馬の体で額にが角の生えたそれと出会った。
「あの額の角……ユニコーンってやつでいいんだよね?」
モモさんに確認すると「そうじゃ」と頷いていた。全身が真白で凛々しいお顔。神々しいまでのその姿に自然とため息が漏れる。
『あまり見られても照れてしまうのですが……』
「ほう」
モモさんが関心するように声を上げる。そのユニコーンから発せられた透き通るような声。というかまた言葉を離せるほど強く成長した魔物……いや、そもそもユニコーンって魔物なのかな?
「モモさん、ユニコーンって魔物?」
「魔物ではあるのじゃが……どちらかと言うと神獣と呼ばれることが多いかもしれなぬの」
『そんな大それた者ではないのですけど……』
そう言い放ったそのユニコーンは、真っ白な顔に少し朱がさした気がした。
「それで、どうしてそこで座りこんでいるんですか?」
『いえ……それが、ちょっと足を、その……』
「あ!足を怪我したんですか!」
『は、はい……その、天気がよかったもので……すこし浮かれてしまってその、あの……ぐきって……』
「ぐき?」
今度は本当に分かるぐらいに顔が赤くなっているそのユニコーン。これは……天然キャラきた!と内心喜んだのは言うまでもない。これは愛でなくては……
「じゃあ僭越ながら私が……」
『な、なにを……』
少し怯えるユニコーンに近づいた私は、そっとその体に手を添え、回復の魔力を発動させた。そしてその魔法が全身に行きわたると、ユニコーンが『はふぅ』と素敵な声を漏らす。
次の瞬間にはユニコーンはすくっと立ち上がっていた。
『回復魔法、ですか?』
「はい。もう痛いところはないですか?」
『はい。おかげさまでどうやら痛みも全て取り払われたようです』
「じゃあ、その鬣を!撫でてもいいですか!」
手をワキワキとさせる私と、少しだけ距離を開けるそのユニコーン。
「大丈夫です!痛くはしないので!ちょっとだけ……ちょっとだけ撫でさせて!」
『ひいっ!』
失礼にも悲鳴を上げながらさらに後ずさるユニコーンを見て、あ、これ駄目な奴かと反省する私。深呼吸をして平常心になるよう心を整える。うん。もう大丈夫なはず!
「だ、大丈夫です。ちょっとナデナデさせてくれないですか。とっても柔らかそうな鬣ですし、私も慣れてるので、そう!撫でるのは得意なので!」
『くっ、助けて頂いた手前、断りづらいですね……いいでしょう!い、痛くしないのですよね?』
その言葉にコクコクと首を縦に上下させて近づく私。
その柔らかい鬣を撫でると、指にしっとりと絡みつくようなそんな感覚になる。なんてツヤやかな毛並みなのだろう。撫でる手に思わず力が入る。
『くっふぅ……』
私の手の先から魔力が流れ出し、ユニコーンからはちょっと艶やかな声が漏れ聞こえた。
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