48
ご覧いただきありがとうございます。
最後に評価など頂けれは嬉しいです。
「へー、レオの毛ってそんな効果あるんだ」
私の言葉にレオが「知らなーい」と答えていた。知らないのか。
「まあワラワもそうじゃが、強い魔物のものには魔力がやどるからの。レオの抜け毛でも微力ながら魔力が入っているであろう。まあ身を守れるかって言えば……無理じゃな」
「あいつらそんな嘘ついて高く売りさばいてたんだな!」
レオがちょっと怒ったように頬をふくらませていた。レオは過去に何かあったのだろうか。
とりあえず当面は金策して、それからどうしようかな?このままここにいるのもいいかもだけど。まかり間違って今度は私が守り神とか祀られるのは嫌だな。まあそんなことは無いだろうけど……無いよね?
そんなアホみたいなことを脳内で展開していた私は、突然聞こえた言葉に体をこわばらせた。
それと同時にジロたちが一斉に警戒態勢に入る。
「マリアント様、突然すみません。良ければ目の前に出てもよいでしょうか?」
その声だけがぼんやりと聞こえた。
私はなんとなくその言葉に脅威を感じなかったのでゆっくり頷いた。
「きゃっ」
目の前にぼんやりと現れる黒装束。その目元から女性だと思われるが、突然のことに声が出てしまった。
その、私の目の前に突然現れ膝をついている女性を見て、皆が警戒心を少しだけ緩めたようだった。
「驚かせてすみません。私はエドガー様の影をしているものです。影とお呼びください。緊急の言伝がありましたゆえ、参上いたしました」
「あ、エドガーさんの伝言ですね」
大丈夫。ちゃんと覚えているよ。S級冒者だったエドガー、……なにがしさん!
「現在、アテナイ王国は国王グリーンヒル・アガメムが暗殺され、皇太子であったグリーンヒル・レイドックが国王に就任しました」
「えっ!国王が暗殺されたの?」
「はい」
私は、見たこともないけど自分が生まれた国の王が暗殺されたという報告に驚いていた。でも皇太子って……あの、アレだよね……あの間抜けな手紙をよこした本人を思い浮かべて何とも言えない気持ちになる。
「それで、ローズマリ殿とロスエリア殿を連れディアーナ獣王国に暗殺の責任をとれと、そしてマリアント様を帰せと協議の場に兵を引き連れ、やってくるとのことで……おそらく内容にかかわらず、グリーンヒル・レイドックは獣王国を属国にする考えの様で……」
「な、なんてことを……」
急展開に頭が付いていけない私は、なんとかしなきゃと考える。なんなのあの国の人達は!本当に人の迷惑も考えずに次から次へと……もう!そんな協議なんて!ぶちこわしてやる!
「ジロ!それにみんなも!その協議の場所に私行きたい!一緒にいってくれる?」
「当然!」
私はずるい。こんなことを言ったら、ジロたちは絶対に一緒に来てくれるのを分かっていながら言っている。
でも私ひとりじゃ何もできないから……皆が一緒に行くと即答してくれるのを確認して、私はお礼を言いながらその黒装束の女性にその場所までの案内を頼む。
「よし!行こう!」
「じゃあ我に乗っていけばよかろう!」
突然入ってきたギンの一声。
「えっいいの?」
「もちろんじゃ!我はお主の下僕じゃからな!」
いや下僕って……でもまあ竜に乗っていけばすぐに到着できるし、なんならそのまま兵を蹂躙してもらったり?あまりに続く出来事に、少し悪い心に染まった私がやっちまえって言ってる気がした。
私はギンに改めてお願いする。
「じゃあギン。お願いね」
「うむ!我に任せるがいい。じゃあそこのお前。一番前にのって案内するがいい!」
何を言っているか分からない様子のその影さんは戸惑っていた。
「では出発じゃー!」
そんな影さんの戸惑いも無視して、元気に部屋から出たギンについていく私たち。
そして久しぶりに見た太陽に少しクラっとするが、それよりも着ていた服を脱ぎ捨て竜へと変わるギンを見て、やっぱり少しカッコいいと思ってしまう。というかすごく光り輝いて見える。
やっぱり最初に見た時は弱ってる感じだったんだね。背中のふわふわ揺れる毛並みも柔らかそうだ。
『では、乗るがいい!』
ギンの声に私が飛び乗ろうと足に魔力を籠めると、気付けばふわりと体が浮いた。そしてそのままギンの背中まで乗せられる私。ジロの温かい腕に包まれながら。
隣でレオが「またジロにとられた」と嘆いていた。
前を見るとすでにあの女性も先頭に乗せられていた。みんなも乗り終えたようだ。というかもう良いんじゃない?ジロ?
「ジロ?もう下ろしてもいいよ?」
「大丈夫だよ?」
「いやいや。もういいよ?」
「そう?わかった」
そう言うと私はジロの前にちょこんと座らされる。そしてギンがふわりと浮かぶと……ものすごい速度で飛び始めた。
「うわぁーーーーー!」
叫ぶ私……そして気づいてしまう。風圧などもなにも感じないことを。どうやらギンの体全体に魔法か何かの膜のようなものができているらしい。とても快適です……
仕方ないよね。突然凄い速さで飛び出したら驚いてしまうよね?
そんなことを考えながらもギンは飛んでいく。
「まってて!ニャルスちゃん!」
私は初めてできた同年代の友達のことを思い、逸る気持ちを抑えながらも、目の前の通り過ぎていく景色を眺めていた……




