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そんな少年は、近くの泉から水を汲んでくると、ボクの体を拭いてみたり、その小さい手で毛を撫で、整えてくれたりしていた。この時、ボクはやっぱりこの少年に心を許していたのだろう。
この少年が村に帰る時には、たまにだけど一緒に行くようになった。村では怯える村人たちが必死に食料をかき集めて、いつも以上の量を差し出されたので背中に乗せて持って帰ってくるということもあった。
そんなある日、その少年が何やら不思議なことをやっているのが見えた。
ボクの毛をせっせと集めて腰に下げていた子袋に入れていたのだ。
『おまえ、何やってるんだ?』
「あ!白虎様!起きておられたのですね!私は日課の毛を集める作業をしています!お気になさらずにおやすみください!」
ボクは何が面白いんだろうと考えた。普段寝ていたから気付かなかったけど、どうやらそれはその少年の日課であるようだった。思わず聞いてみる。
『俺の毛を?何が面白いんだ?そんなの拾って』
「面白いんじゃないんです。これをいっぱい集めて村にもっていかなくちゃならないので」
『村に?』
「はい。白虎様の毛はお守りにすると身を守ってくれるから、高く売れるんだって言ってました」
なんだ。ただボクの毛を売っているだけか……そうか……そうだったのか……あれらはそんなことをしていたのか……ボクは久しぶりに怒りが込み上げてきた。
『おい。今日からそれはやめだ。俺の毛は一本たりとも持っていくな』
「え?なんでですか?もっていかないと怒られちゃうのでお願いできませんか?」
途端に泣きそうになる少年。本当に人間ってやつは……少年の善意でやっていることかと思ったら強制だったようだ。
『もしそれで怒るようなら、俺の名を使え!白虎が怒るぞと』
「わ、わかりました……ありがとうございます」
戸惑いながらも膝を折って祈る動作をする少年を見て、これでこの少年も苦労することはないだろう。そう思っていたんだ。
翌日、食料を取りに村に帰った少年が戻ってきた。何時も以上に重そうに籠を運んでいる。そして膝をつきながらハアハアと息を整え、少し時間をおいてからボクに話しかけたんだ。
「白虎様。いままで以上に食料をお持ちしました。ですのでまた毛を集めることをお許しいただけませんでしょうか?」
その少年はすがるような表情で懇願していた。だがボクにはその言葉よりも気になることがあった。
『おまえ、その顔の傷はどうした』
「い、いやちょっと……転んじゃって。僕ってドジだから……」
そんな嘘を信じるほど、ボクは人間を信じてはいない。元から一切信じてないけどね。
『ちゃんと俺の名を使ったのか?』
「つ、使わせていただきました。だから食料がこんなに……」
そういうことじゃない。ボクはさらに怒りが込み上げた。だけどボクは大人だ。1000年の時を生きる神獣だ。ささいな人間たちの揉め事……そんなのに気をもむ必要はない。
『じゃあ今度はおまえの言葉は俺の言葉だと言っておけ。あと次は一番偉い奴と共に来い。来なければ村を消す。そう伝えておけ』
「えぇ!そ、そんな……白虎様!僕はどうなってもいいんです!村を、村をつぶさないでください!」
『大丈夫だ。そう言えばやつらはくるだろう?』
「そうですが……はい。わかりました。明日、必ず……」
結局その日は心の中の怒りを中途半端に燻ぶらせながら、不機嫌な一日を過ごした。
そして翌朝……
「白虎様、何様でしたでしょうか……」
副村長だという男も、その取り巻きの男が5人。少年と共にやってきていた。よく見るとまた少年に傷が増えているようだった。
『おい!俺は一番偉い奴が来いと言ったぞ!副村長は一番偉いのか!』
「ひいい!いや私は、副村長ですがいずれ村長になる男です。その、今の村を取り仕切っているのは私なので、こうしてやってきたではありませんか。どうかお怒りをお鎮めください」
その男は膝をつき何度も頭を下げていた。取り巻きも少年も同様であった。
『おい少年。お前はこっちにこい。あいつらと同じではないと言っただろう。おまえは俺の使いだ!』
「えっ?僕が白虎様の使い?」
驚く少年だったが、少しその顔は赤くなり、どこか嬉しそうだった。
そして少年がボクの横に来ると、ちょこんと正座で座った。
『おまえ、また殴られたのか?痛むか?』
「いえあんな拳なんとも、あっいやこれはまた転んで……」
ごにょごにょと声が小さくなっていく少年も見て、心が温かくなるのを感じていた。それと同時に目の前の村の男たちへの怒りは募っていく。
『おい!今後、俺への食糧は今までの倍、この少年には持たせるなよ!お前たちが運んで来い!毎日な!』
「そ、そんな!ではこのガキをよこした意味が……」
「おい!お前はだまってろ!」
男たちで言い争いをしているようだ。誰が行くのか。食料はどうするのか?どうしてこうなった……いつまでも終わらないのの知り合いに嫌気がさす。
面倒になったボクは、地面から生んだ岩の棘により副村長という男以外の命を串刺しにした。
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