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Side:グリーンヒル・レイドック
「私は、亡き父、グリーンヒル・アガメム国王陛下の名を穢さぬよう、この国のため!そして何より民のため!あらゆる努力を厭わない!
そして……父の仇である獣王国を討ち……そして、アールグレイ侯爵家の御令嬢、マリアント殿を救い出し!この国を豊かにすることをここに誓う!」
私の言葉に集まった民衆は熱狂している。歓声が響き心地よい。まずは愚民どもにも、私がこの国の王だということは理解できたであろう。
事前に、王の暗殺が獣王国の手のものであるという『事実』を突き止めたのがアールグレイ家の手のものということにして、以前よりの侯爵位に返り咲くことを宣言させていた。
私の嫁が子爵家では箔がつかないからな。
その時、待機していた音楽隊がファンファーレを奏でる。
私はこのまま、集めた兵たちと獣王国との国境付近へ赴く。すでにその国境近くで協議の場を設けたいとの書簡を送らせている。
一応こちらからも話し合いの場を設け、歩み寄る姿勢を見せておこうということだ。実際は暗殺と拉致について問い詰め、交渉決裂でもすぐに戦いに入れるように、こちらは準備万端整っているのだがな。
とにかく、国境付近までは1週間ほどかかるらしい。退屈ではあるがまあ必要なことだ。仕方ないからなんとか暇をつぶすことに没頭しよう。
「おい、こっちへこい」
王族用の大きな馬車の一室に、侍女と一緒に同乗しているマリアントの姉、ロズエリアを呼びつける。今回の協議でも妹に対する愛を叫ばせる手立てとなっている。別の馬車には当然母親であるローズマリもいる。
その時のことを思えば……今はこの女で時間をつぶすのも悪くない。
私は、少し暗い表情を浮かべながらそばにきたその女を抱きしめながら、その時が来たことを想像し、自分の口元が緩むのを感じた。
Side:ニャルメス・マールス
「パパ!マリを取り返しに王国が来るって、一体どういうことにゃ!」
私は、突然のことに怒りがこみ上げ獣王である父、レレオに声を掛ける。
「そう怒るな!パパもよく分からんのだよ。アテナイから着た書簡には『王を暗殺した犯人として償い、拉致しているマリアントを返して属国になれ』ってことぐらいしかかいてないからな」
「王が?殺されたのにゃ?パパが殺っちゃったのにゃ?」
「そんな訳なかろう!アテナイの王が暗殺されたのなんて、この手紙で初めて知ったわ!」
私の言葉にはパパの否定の言葉が返ってきた。じゃあ、なんてこんなことになってるんだろう?
「なんでこんなことになってるにゃ?誰かがうちらに罪を擦り付けようとしてるにゃ?」
「多分そうなのだろうな……しかしマリアント殿を拉致などと……こちらもまったく言いがかりもいいところだな……」
パパの言葉に「うにゃ~」と小さく泣くことしかできなかった。
「まあ、協議の場は設けられるようだ。こちらも万全の体制で、バシッと言い返してやればいい。その時はニャルスもしっかりと頼むぞ!」
「分かってるにゃ!私がばしーっと真実を突きつけてやるにゃ!」
マリは自分の足で旅を続ける決意をしたにゃ……絶対に、邪魔はさせないにゃ!私はそう心に強く決意して、協議ではどんな言葉で言い返そうか、今から考えをまとめ始めた。
「う~にゃ~。そうにゃ!まずはニャイダに相談するにゃ!」
結局うまいセリフが見つからない私は、ニャイダに全部任せてしまおうと思い、ニャイダのいるはずの事務室へ足取り軽く走りだした。
「ニ~ャイダ~はおっひま~、しってるっかにゃ~~♪」
◆◇◆◇◆
Side:グリーンヒル・レイドック
「やっと、着いたか……」
長い旅は疲れるものだ。こんなに退屈になるのであれば、もう2~3人ほど女を連れてくるべきであった。そう後悔した私だったが、それはもう後の祭りであろう。
「おい、もう着くようだ!いつまで寝ている!早く準備を終わらせろ!」
私は先ほどまで使っていた女に声を投げかけた。なんで私がこんなことまで支持しなくてはならんのだ!そこにストレスを感じたが今後始まることを思えばまあ許せるというものだ。
私は自分の寛大さを自分でほめてやりたい気分だ。
真昼間だというのに先ほどまで興じていた秘め事。その相手であるロズエリアは、レイドックの言葉に飛び起きると、侍女たちに支度を急がせていた。丁度それに合わせるかのように馬車は止まる。
目的地である国境付近く、広い公道から少し離れた場所。そこにはもうすでに獣人国のものであろう人々が待ち構えていた。
事前に両国の兵たちによりその場は整備され、大きなテーブルの周りに複数の椅子が並べてあった。互いに険悪なムードではあったがなんとか整えられた協議の場である。
そしてすでにそこには5名ほど、すでに席について待っているようであった。
「あの真ん中に座っている奴がどうやら獣王なのか?」
私は、馬車から降りながら、緊張した面持ちの宰相にそう尋ねると「さようで」と短く返答がきた。
どうやら向こうも多少なりとも兵を揃えてきたようだ。その席の背後には数百程度の獣人たちが待機している。私はまた口元が緩んでしまう。これなら余裕で対応できそうだ。こちらは3万もの兵を引き連れてれきたのだから……
「よし!行こう!」
私は周りを4名の選りすぐりの護衛で固めると、その席に悠々と歩き出した。
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