41
ご覧いただきありがとうございます。
最後に評価など頂けれは嬉しいです。
「マリネエは10日も寝ていたのじゃぞ?」
へー。そうなんだー。モモさんの予想外の言葉に、私は返答することを忘れてしまう。
えっ?なんで?私どんだけ寝るの?やばくない?ご飯とかどうしてたんだろう?疑問が次々溢れてくる。
「ここは砦から少し離れたこの国の施設の一室じゃ。客人用の屋敷らしいの。ナヌークが用意してくれた。あとクロもコガネも、もちろんダイとユズも無事じゃ」
「よかった……」
さすがモモさん。私の疑問に的確に答えれくれる。そっかー10日かー。ん?10日?あっ!おトイレ!おトイレとかどうしてたんだろう!
……とんでもないことに気づいてしまった私。
えっ、ちょっとまって?まさかモモさんが?そんな……いや、モモさんならまだ百歩譲って大丈夫?いや大丈夫じゃないけど……でもでも、ありえない話だけどまさかジロが私の下の世話を……
私は絶望を胸に秘め、最後の勇気を振り絞り、モモさんに耳打ちで確認する。
「あの……モモさん……私、トイレ、とか……」
あっ、モモさんがちょっと口元を袖で隠している……肩が震えているので分かります。笑っているのですね。大丈夫です。全部受け止めます。そして恥ずかしさを胸に明るく生きていきますので、どうかちゃんと答えてください!
「だいじょうびゅでふ……いや、だいじょうぶでしゅ……ちゃんと、聞きますから……」
くっそー!私の口はどうやら職場放棄をしたいようだ。
「変な心配するでない!マリネエは短時間で魔力の枯渇を繰り返したからの。それで体が休眠状態に入ったようなのじゃ」
「キュウミン?ジョウタイ?」
初めて聞く言葉に頭が着いていかない。いかなる羞恥も受け止める気でいたので余計である。脳が考えるのを放棄しているようだ。
「魔力の枯渇から体を守る、どちらかというと魔物の習性に近いやもしれぬの。徐々に回復する魔力を身体や精神の回復に回すのじゃ」
「はあ」
難しいことはよく分からない。私まだ12才だから……と心の中で言い訳をする。ふわっとした感じで理解したら良いのかな?
「つまりは、そういった機能は停止していたということじゃ」
「おお!ということは……私的に大惨事はなかったと……」
良く分からないけど、結局はセーフだったということで……いいのかな?
「そうじゃの。強いて言えば上昇した体温で汗を多くかいておったゆえ、ワラワが毎日拭いてやったぐらいかの?」
「あっそれはそれは……ありがとうございます」
それぐらいならいいよね?乙女の尊厳は守られたということだよね?
私は、モモさんの「うむ」という言葉を聞きながら、モモさんも再び抱き着いて己の精神を癒していった。
Side:グリーンヒル・レイドック
「レ、レイドック様……これからどうするつもりで……」
目の前の女が膝をつきながら尋ねてくる。まったく、少しは自分の頭を動かしたら良いではないか……まあいい。この低俗な女では、この私の考えを到底理解することなどできないのであろう。
それでも、こやつの手駒は使える。現に王は死んだ。まったく……笑いをこらえるのに苦労した。
昨夜の晩餐の時、王は出された食事を口にすると、泡を吹いてひっくり返ったのだ。もちろんそれはこやつの影の仕業。すぐに実行犯の毒見役を私が切り捨てた。そしてそこからは私の演技が冴えわたっていた。
嘆き悲しみながらも父の悲劇に、絶対に敵を討つと誓って見せたのだ。あの周りのやつらの顔……最高だった。笑いに堪え震えていた肩に手を置いて「御立派です!レイドック様」と言い放った宰相の顔……
今思い出しても笑いが込み上げる。
「さて、後はあの毒殺が獣王国の手の者だと宣言し、攫われたマリアントを取り返すため出立するだけだ!楽しくなってきた!そして獣王国の兵隊をもってして竜人がいるという国もすぐに落として見せよう!
そして俺は、この大陸の覇者となるだろう!」
「はい!まさしくその通りでございます!」
目の前の女が心にもない事を口にしているが、まあ良いだろう。こやつもまだまだ利用価値がある。何よりマリアントの母親だ。
大事に大事に利用して……いずれは切って捨てれば良い。秘密を知る人間は少ないに限るからな。
私は部屋に備え付けられた魔道具に魔力を軽く流すと、すぐにノックの音と共に部屋へ文官がやってくる。
「まずは兵の準備を急がせよ!そしてあの獣王国という獣の群れには、マリアントを返し我が国の支配下にはいるよう書簡を送れ!」
私の命令に、その文官が返事を返し逃げるように部屋を出ていった。中々のスピードである。それでいい。あいつらは言われたことを何も考えずに即行動に移せばいいのだから……
マリアントには色々言いたいこともあるが、まあ良い。隷属させて侍らすには丁度良い見目であった。身体強化も中々のものだと報告されている。そのせいで取り逃がしたのだからな。従順な嫁、そして護衛としてもってこいではないか。
お供の下僕たちもセットで直属の兵に仕立て上げれば……もはや敵は何もない!この大陸を制覇して、次は海を渡って新大陸も見えてきた……
「おい!ロズエリアに後で部屋に来るように言っておけ!今日はそのまま下がっていいぞ!」
「はい……かしこまりました……」
静かに帰るその女を目線で見送ると、ふぅとため息をついて椅子に深く腰掛けた。世継ぎの候補は多いに限るからな。王というのも、意外と忙しいものだ。
王城の一室。
マリアントの姉だった女、ロズエリアが部屋にやってくるまで、レイドックの妄想だらけの独り言が続いていた。
お読みいただきありがとうございます。これで竜人国編も終了です。
次回より『争いの行方編』が明日17時に更新となります。ゆっくりまったりお読みいただければ幸いです。
期待してる! もっと読みたい! 読んでやってもいいよ!
そんな方は下の☆☆☆☆☆を押してい頂けると嬉しいです!
もちろんブクマやコメント、レビューなどもいただけると飛び上がって喜びます。
読者様のお力が必要なんです!




