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本日2度目の更新です。
「どうしよう……何かできるのなら、何かしたいんだけど……」
私は、砦をその足でガシガシと崩そうとしている聖竜様が、苦しそうに藻掻いているようにしか見えなかった。
「マリアント様!この場は危険です!逃げてください!逃げて、獣王様にこのことを伝え、他国に被害が出ないようにしていただきたい!
他国にまで迷惑をかけるのは竜人として恥ずべき事……どうかよろしくお願いします!私たちが命を書ければ、倒せなくとも弱らせることぐらいはできましょう!」
周りの竜人の兵たちもこちらをみて頷いていた。
そんなナヌークさんの言葉に私は「いやです!」返した。何もしないまま逃げるなんてできない。ジロたちに手伝ってもらえばモフれるはず。それでだめなら諦めよう。そう思ってジロに声を掛ける。
「ジロ、それにみんなも!聖竜様を押さえるのに協力してくれる?」
「もちろん!」
ジロの即答を皮切りにみんなが答えてくれる。嬉しい。
「でもダイとユズは待機ね。何かあったら逃げちゃっていいからね?」
「僕も……」
一瞬反論しようとしたダイも言葉を途中で飲み込んで頷いてくれた。ユズも同様だったようだ。やっぱり二人は賢い。現状で大変な中、自分たちが邪魔になってしまう可能性をちゃんと理解してくれる。
それでも真剣なまなざしでこちらを見てくる二人を、しゃがんで優しく抱きしめる。
「大丈夫。コガネさんやモモさんもいるもの。少しだけ待っててね」
私は二人を安心させたくて伝えた言葉。でも実際私もみんなが居れば何とかなると思ってしまう。何があってもみんなとなら乗り越えられる。そう思って二人をもう一撫でしたところで立ち上がる。
「さあ!行こう!」
私は白いオーラを5人に纏わせる。試しに聖竜様へ送ろうとしたが、やっぱり私の白いオーラは一ミリたりとも聖竜様に向かっては動かなかった。
みなが走り出し聖竜様を取り囲む。
クロとモモさんが蜘蛛の糸と茨の弦で、聖竜様の足を地面へと縛り付ける。コガネさんが氷の塊で左の翼を固め動けなくする。レオが同じように右の翼を石の塊のようなもので固めていた。
ジロは聖竜様の背面に回ると、さっきまでブンブンと振りながら砦ばかりが近くの建物も破壊していった尻尾をがっしりと押さえつけていた。肉体強化もジロぐらいになると竜のしっぽも抑えられるのか、と感心してしまう。
「ありがとうみんな!」
私は肉体強化の可能性も改めて感じて、いつか私も!とムッキムキの自分を思い浮かべて口元をニヤつかせた。恐怖感はない。足に魔力を籠めて聖竜様の背中めがけて駆けていく。
砦に飛び乗り、そして次には聖竜様の背中に飛び乗る私。今なら地球ではあらゆるスポーツで無双できそうだ。でも飛び乗ったその高さに少しだけ足がすくむ。高すぎ怖い。
でも急がなきゃならない。手足を高速されて動けない聖竜様が苦しそうに呻きながら首をブンブンと振っていた。私は逸る気持ちを押さえ、冷静に魔力を籠めた手で背中のモフモフを……
撫でる。
とてもゴワゴワしたタワシのような感触。それでも魔力が浸透していくのが分かる。私の中の魔力が流れ込んでいく感触……流れ込んで、流れ込んで、流れ込んで……際限なく魔力が吸い取られる感触。
手を離そうとしたその時、私の意識は眠るように途切れていった。
◆◇◆◇◆
Side:ジロ
「マリ姉?」
僕が必死でその竜のしっぽを押さえつけていると、マリ姉が竜の背で魔力を籠めているのが見えた。すごく大きな魔力の塊がどんどんこの竜の中へと吸い込まれていいる。すごいなマリ姉は……
これで僕らと同じように仲間になってこの場は丸く収まって……って思っていたのに。マリ姉はそのままこの竜の背で倒れてしまった。
「モモ!マリ姉が!」
こういう時には一番頭がいいモモに聞くのが一番だ。そう思って今すぐマリ姉の方へ行きたいのを我慢する。ここを離れたらこの竜が暴れたり逃げたりしちゃうから。
「大量の魔力が流れていったゆえ、マリネエの魔力が枯渇したのであろう!ワラワも助けに行きたいが……どうやら無理そうじゃ!」
モモが必死に茨を増やしてその足から胴へと伸ばしていこうとしているようだが、それはすぐに足を固定するために使われる。さっきからこの竜の力が上がっているようで、僕も結構限界が近い。
それはクロやコガネ、レオも同じでそれぞれ受け持った部分を抑えるのに必死のようだ。どうしよう。このまま周りの被害なんて気にしないで一気にマリ姉のところにいって逃げちゃおうか?4人が押さえつけているのだからその一瞬だけは大丈夫だよね?
僕がそんな迷いを見せている間に、その竜の咆哮が耳に響いた。そして僕はふり飛ばされて近くの建物に激突した。
「いたたたた……」
背中を少し痛めたようだがまだ体を纏っている白いオーラで傷がいえていくのが分かる。まだマリ姉に守られているのを感じる。急がなきゃ……
建物のがれきを吹き飛ばすように起き上がり周りを確認する。すでに他の4人の拘束も解かれてしまい、暴れ出す竜が他の建物もなぎ倒していた。
ふとダイとユズは、ただ茫然とこの様子を眺めているナヌークという長老とその周りの竜人たちを、氷を纏った茨の盾で飛ばされるがれきの破片から守っていた。凄いな。まだ小さいのに自分のできることをやっている。
「僕も負けてられない!」
再び全身に魔力を巡らし、マリ姉の元へ飛ぶ。暴れる竜の背に飛び乗った僕は、マリ姉を助けようとその様子を確認する。これは……どうなっているんだろう。マリ姉が竜の背中の毛に覆われている。
僕は急いでその毛をどけてマリ姉を助け出そうとするが、その毛は固く中々マリ姉の拘束を解けない。いくつかがマリ姉の肌を傷つけている……この竜!絶対ゆるさない!
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