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「それなら西を目指してはいかがでしょうか?」
ニャイダとニャルスに次なる目的地としてどこかないか聞いてみたが、ニャイダから西を勧められた。
「西、ですか?」
「はい。山岳地帯にそって西へ向かえば、竜人国エーリュシオンという小さな国があります。竜人たちが住む比較的穏やかな国です」
「竜人ですか」
ニャイダの『竜人族の国』という説明に少しワクワクしてしまう。竜という存在がるのことは知っていたが、竜人という新たなワードに転生者としての好奇心が刺激されてしまうようだ。
「途中、森の中を進むことになりますが、それほど強い魔物はでてきませんので、ジロさんたちの敵ではないでしょう。先度共言いましたが竜人国は比較的穏やかな国ですし、我が獣王国との関係も良好です。
今でも毛皮などと交換で強い武具を取り寄せたりしていますし、国民もほとんどが一騎当千の猛者が多いので、隠れ住むには良いのではと……」
「国民ほとんどが強い国……みんなはどう思う?」
私はとりあえずその話をジロたちに振ってみる。
一応事前に今後の安全のため『別のところを目指す』ということについては、皆が同意してくれていた。あちこち旅をして新しい風景を見るのも楽しみにしているようだ。
「うむ。良いのではないかな?」
コガネさんの言葉を皮切りに、この提案についても皆が賛同してくれたようだ。これで竜王国へ行くことが決定した。であればできるだけ早く旅にでたら良いかな?と思っていた。長居すると危険も増える。
何より長く関わるほどに寂しさが募り、出発が辛くなる。
なんだかんだでニャルスとも夜な夜なガールズトークしていたこともあり、中々離れがたい思いもある。
「さみしくなるにゃ~。でもたまに顔を出してほしいし私たちも遊びにいくにゃ!」
「うん!絶対また会おうね!」
初めての同年代の友達と別れることに少しだけ泣きそうになる。実はニャルスの方が少し上であるが……
結局、明日出発に決定した。すぐじゃないと中々踏ん切りがつかなくなりそうだったから……
それから、竜人国のことをニャイダに再度聞いてみる。
獣人国と同じように金貨などは使えるし、なんなら獣王国と同じ規模の露店もあるようだ。かなり強力な武具も売られているようだが、それは武具を使わない私たちにはあまり関係なさそうであった。
でも護身用の何かは持った方がいいのかな?良さそうなのを見つけたら試してみよう。
あと竜人国には聖竜様という国の守り神がいて、その国の平穏を守っているのだという。でもあくまで信仰対象の様で、実際には長老と呼ばれる竜人が国を治めているようだ。
ふと思えば、この世界は王政ばかりだなと思ってしまう。日本人の感覚からしたら少し戸惑ってしまうが、獣王国のように強く正しい人が導くのなら、それが一番良いのかもしれない。
そんな中、ふとあの皇太子ことこを思い出す。あんなのが王になったなら……あの国は終わりかな……そんな考えに少しだけ身震いしてしまった。私は頭の中を切り替えるため、ジロとレオ、ついでに少し嫌そうにしているクロの頭を撫でる作業に勤しんだ。
当然のようにダイとユズも私に飛び込んできたので、一緒にゴロゴロとしながら少ない時間を浪費していった。
その夜、獣王レレオさんなどにも出発することを告げると、ささやかながら宴を催してくれた。レレオさん自ら「いつでも帰ってこい」とお墨付きまで頂いた。本当にありがたいことだ。
その夜は、ダイとユズには遠慮してもらって、ニャルスと二人でベットに入る。私はジロのわんちゃん時代のことを話すと、ニャルスがニャイダとのあれやこれを教えてくれて、二人でキャーキャー言って中々眠ることだできなかった。
そして目覚めたその日の朝。
私は、少し豪華な朝食を頂くと、見送りに来た皆に「いってきます」と挨拶をしてジロたちと西へと向かう。
「竜人国か……どんな国か楽しみだ」
私のその呟いた言葉に、皆があーだこーだと予想を立てる。私もそんな話を聞きながら、移り行く景色を眺め、少し寂しさを感じていた心を癒していった。よーし!新しい国では、今度こそいっぱい楽しんじゃうぞ!
私は、森の中で迫りくる猿型の魔物の群れを、ジロたちが軽々と蹂躙していく様を、モモさんたちと一緒に温かい目で眺めながら、新しい明日を想像して強く歩き出していた。
◆◇◆◇◆
Side:レレオ・マールス
俺は少しの寂しさを感じる中、娘の恩人たちの旅立ちを見つめていた。
その横では、見送りに来た娘たちが同じ様にその進んだ道を、ひっそりと見つめ続けている横顔が見えた。
「一緒に行かなくてよかったのですか?姫様」
ニャイダにそう声を掛けられたニャルスは、道を眺めていた顔を背け、ごまかすように顔を撫で涙をぬぐっていた。
大人になって帰ってきたと思ったら、どうやらまだまだ子供のままだったようだ。
「いいのにゃ。きっとまた会えるのにゃ。私はこの国を守っていかなくちゃならないのにゃ……寂しさなんかに負けてられないのにゃ……」
そう言ってまた両手で顔を覆うニャルスを、ニャイダがそっと抱きしめ胸にその顔を隠していく。
なんだかんだあったが、結局は収まるべきところに収まった。そう思った俺は心が温かくなるのを感じた。今はそっとしておいてやろう。そう思い静かにその場を離れていく。
願わくば、娘とあの者たちが明るく暮らせるよう獣王国を発展させなくては……まだまだ俺も頑張ろう。娘を思えばあと30年は頑張れそうだ。そう決意を新たにして、自慢の鬣をなびかせ王宮へと戻っていく。
どうやらまだまだ、ニャイダの時代はこないようだ。
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