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本日二回目の更新です。
最後に評価など頂けれは嬉しいです。
あの決闘が終わってから1週間ほどたったある日、私はジロと二人で獣王国の街並みを歩く。
午前中、ジロとレオの二人はいつものように森に入って兎などの獲物を数匹仕留めた。そしてクロの編んだ上質の布類もいくつが持参して、街の商人のお店で買い取ってもらった私たち。
食料を中心にお土産を物色する。手持ちの金貨は50枚ほど。約50万円ほどであろう。
美味しそうな屋台の食べ物を次々と買っては、たまにつまみ食いして買い物を楽しみながらもジロの収納にしまっていく。やっぱり便利なスキルだ。私も欲しい。
そして時刻はお昼を回った頃。もうそろそろいいかな?そう思っていた私の目には、道端で座り込んで泣いている女の子を発見する。
多分猫獣人さんかな?ふわふわした茶色い耳としっぽが可愛い。私はその子の近くにしゃがみこむと、びっくりさせないように優しく声を掛けてみた。
「どうしたの?」
私の声に女の子がびくりと肩を動かした後、私の顔を見る……そして再び顔をゆがませるとまた泣き出してしまった。
「うわ~~ん。家がわらかなくて~~ママが~~、ここどこ~~」
私は泣きじゃくる女の子にどうしようか困っていたが、ジロが収納から串カツのようなもの出してくれたのでそっとを差し出した。
すると女の子はそれを恐る恐る受け取ると、頬張りながら時折笑顔を見せてくれるまでに落ち着いてくれたようだ。美味しいものは泣いた子も落ち着かせる素敵な魔法だ。
やっと落ち着いたその子から詳しく話しを聞いてみると、どうやら家の近くで遊んでいたはずが、気づけばいつの間にかわからない場所まできてしまったようで、帰り道が分からず泣いていたようだ。
するとジロが鼻をヒクヒクと動かすと、女の子の匂いがあっちの方にあるのだと教えてくれた。
「お家まで連れていってあげるね」
そういって私は女の子と手をつないで歩き出す。
それから10分ほど歩く。
私は、まだ4~5才ぐらいの子供だと思うけど、こんなに遠くまで歩いてきたんだね。と感心していた。
街から幾分離れたその街並みは、建物はまばらでかなりのんびりとした雰囲気であった。私もこんなところでひっそりジロたちと一緒に生きるのもいいかな?と思ってしまう。
そしてほどなくして、女の子は「あっ!ママだ!」と大きな声をあげると、私の手を離して駆けていってしまった。少し寂しい。どうやら無事に自宅までたどり着くことができたようだ。
母親と思われるその女性は、こちらにやってくると何度も頭を下げ、「お礼を」と言われたが、対したことはしていないので遠慮していた。
「し、失礼ですがお貴族様、ではないのでしょうか?」
「えっ?違います違います!極々普通の一般人です!」
どうやらその母親は、私たちを貴族か何かと勘違いしていたようで、かなり緊張していたようだ。私の否定にほっと胸をなでおろしていた。確かにクロの作ったこの服は、どこに出しても恥ずかしくない上等な出来だしね。勘違いしちゃうかも。
私は自分が一応元貴族であったことも忘れ、脳内でクロの服を賛美していた。
そろそろ戻ろうか。そう思って私は女の子に「もう遊びに夢中になりすぎても駄目よ」と伝える。
女の子からは元気の良い返事が返ってきたので、心がほっこりするのを感じる。
そして女の子に手を振って見送ろうとしたその時、突然ジロの「マリ姉!」と叫ぶ声を聞いたが、気づけば私はうつ伏せに押し倒されていた。女の子の泣き声が聞こえる。泣かないで?大丈夫だから。お姉ちゃんね、実は強いんだよ?
心の中でそう呟きながら周りの状況を確認する。
どうやら私は目の前の黒装束の多分女性?に背中に乗られ、ナイフを首元に突きつけられているらしい。そしてその女性はジロを睨みつけて威嚇している。ジロは私が人質なので、迂闊には動けないのだろう。
私は、まあこのぐらいなら大丈夫だよね?と肉体強化を発動させて、その女性のナイフを持った右手を掴み、捻りあげながら体を入れ替えた。
「ごめんね。私も結構やるでしょ?」
ごめんなさいちょっと格好つけたいお年頃なんです!言ってから少し恥ずかしくなった私は、顔が赤く染まるのを感じながらジロに目で助けを求めた。
「き、聞いてない!ただの子供だって話だったのに!」
刺客の女性が叫ぶ、
「マリ姉は強くなったからね。でも僕ちょっと焦っちゃったよ。ごめんね助けられなくて……」
ジロの笑顔の後に不安な表情を見せたが、私も自分で何とかできたことに嬉しくなり、安堵のため息をつく。さてこれからどうしたらいいのだろう?ジロに衛兵さんでも呼んできてもらおうかな?そう思っていた時に、背後で女の子が叫ぶ声が聞こえた。
自分が組み敷いている刺客の女性を押さえつけながらも、私はその声の先を確認する。
そこには、先ほどの女の子とその母親が、二人の黒装束の輩に後ろから腕を押さえられ、首筋にナイフを突きつけられている姿があった。
「おい!お前がマリアントだな!大人しくそいつを離して一緒にこちらに来い!……じゃないと、こいつらが死ぬことになる!それは嫌だろう?」
「後ろの男はそのまま動くな!動けばこいつらを殺す!」
女の子と母親を拘束している男たちの提案に、私は悲鳴のような声を上げる。
「やめて!すぐそっちに行くから、その二人は関係ないんだから!早く放してあげて!」
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