30
本日2本目。なんだかんだで30話目となりました。早いものです。
最後に評価など頂けれは嬉しいです。
「だ、大丈夫です……この決闘を終わらし……私は姫様を、ニャルスを嫁に迎えます。邪魔を、しないでください……」
その言葉にニャルスとニャナンさんをはじめ、女性陣の歓声が聞こえる。
その言葉を発したニャイダに、すでに自我をなくしたと思われるダルニャが突っ込んでくる。しかしその攻撃はかろうじてかわされる。
どうやらパワーとスピードが増したものの、その攻撃は単調でかえって避けやすくなっているように見えた。
ニャイダがふらふらの体でふわりふわりと野生の獅子となったダルニャの攻撃を避け続ける。そうこうしている内に、ダルニャの動きがどんどん鈍くなってくるのを感じていた。
飛び掛かる。躱す。それを何度も繰り返す。ついにダルニャの動きはとまる。
ハアハアと息苦しそうに体を揺らし、その場から動けなくなったその獅子は、そのままゆっくりと横に倒れこむ。そして獅子の体から人型へと戻ったダルニャは、意識を失っているようで、そのまま動かなくなった。
「しょ、勝者!ニャイダル・ソール!」
審判の声と共に、ニャルスがニャイダの元に駆け付け、膝をついているそのニャイダの体に抱き着いた。
人型に戻り倒れているダルニャのもとには、取り巻きの中の二人ほどが駆け寄っていた。
見たくないものが見えそうなその風景を、ジロとクロが前に立ち遮っていた。モモさんはユズとダイの方を向いてしゃがみこんで二人の視線を逸らしていた。
私の前から二人がどくと、すでに体を布でくるまれ、両肩を取り巻きによって支えられ、闘技場から出ていくダルニャの姿があった。
他の取り巻きであった獣人たちは、私と目線があうと手もみでもするようにヘコヘコしながら様子を窺っていた。現金なものである。
そんな呑気な私も、ニャルスの「よかったにゃーでもボロボロにゃー」という声を聞いた私は、急いで二人の元へたどり着くと意識を集中して白いオーラをニャイダに纏わせた。すぐにそれなりに回復したニャイダが起き上がった。
周りから「おお」とため息の様な歓声があがる。
そしてニャイダは立ち上がると、ニャルスの前に膝をつく。その動きに周りがシーンと静まり返る。私も期待に胸を膨らませ様子を窺っていた。
「ニャルメス姫……私にはあなたしかいません。良ければ私に、生涯を共に生きていくことを、お許し頂けませんか?」
私は、ニャルスに差し出した右手をを見ながら、ときめく気持ちがあふれ出てお祭り騒ぎをしていたので、両手で口元をふさぎ、声をあげたいのを必死に我慢していた。
さすがにこのタイミングでワーキャーと騒ぐほど、空気を読めない私ではない。
「きゃーー!見て見てあなた!すごいわよね、すごいわよね!かっこいいわーニャイダー!ときめいちゃうわー!」
空気の読めないニャナンさんがレレオさんの肩をバシバシ叩きながらはしゃいでいた。だがそんな告白に肝心のニャルスからの返答はまだない。
それもそのはず。ニャルスは顔を真っ赤にしてパクパクと空気を食べていた。言葉がうまく話せないようだ。
暫くするとニャルスがやっと落ち着いたようで、軽く息を吐きながらニャイダの手に自分の手を乗せる。ニャイダは満面の笑みをうかべその手を握ると、立ち上がってニャルスを抱き寄せた。
私はさらに激しく高鳴っている胸を押さえるのが大変であった。もう見てられない。そう思いながらもしっかりと凝視していた私は、その後、潤んだ瞳のニャルスがニャイダに熱い口づけをされるのを羨ましそうに見ていた。
よだれが出そうだった。
今夜は体が熱くて寝られないかもしれない。
そのまま大盛り上がりの中、皆で宴会の運びとなった。もう思いっきりはしゃいで発散だ!と思ったのは仕方ないだろう。
◆◇◆◇◆
一夜明け、昨夜と同じ部屋で同じように起きる。
今日もモモさんのモモは美味しそうであった。
昨夜は決闘の儀からそのまま宴が始まり、あの場に料理がどんどん運び込まれて皆がはしゃいでいた。
私もみんなと一緒にあちこちと歩き回っては、美味しそうな料理を食べまくっていた。最近は私も食べる量が今までと比べ物にならないほど増えている。少し心配だが魔力を消費しているからとモモさんが教えてくれた。
だから多分大丈夫だろう。
……大丈夫だよね?
昨日めでたく思いが通じ合ったニャルスとニャイダは、二人で初めての夜を過ごすことになった。
ニャルスはモモさんに「どうする?どうしたらいい?おしえてにゃー!」と叫んでいた。ニャイダは真っ赤になりながら下を向き、何やらつぶやいていた。大丈夫だったのだろうか……
「おっはようにゃー!」
「お、おはようございます」
そこにその二人がノックもせずに突入してきた。どうやら何とかなったようだ。ニャルスは元気いっぱい満面の笑みであった。ニャイダは……見た目はいつも通りのようだが、はしゃぐニャルスに頬をかいて戸惑っていた。
その後、みんなで朝食をとると前回同様の部屋へとピョンロンさんに案内され、獣王レレオさんとニャナンさんと話すことができた。お二人ともニャルスとニャイダのことにとても喜んでいて、特にニャナンさんのテンションは高かった。
よっぽどニャイダの勇姿にときめいたのだろう。ニャルスがいなければ私がもらっていたと言った時のレレオさんとニャイダの顔は面白かった。
結局このまま王宮内に滞在することになった。なんならこの宮殿近くに家を建て暮らせばいいと言われたが、今のところそれは遠慮した。しきりにジロたちを護衛として、とかレオはこのまま王宮に好待遇で暮らせば……なんて説得もあった。
ジロたちにはそれぞれしたいことをしていいよ?と伝えたが、どうやら私と一緒にいることを最優先にしてくれるようだ。なんか泣きそう。
まずは暫く獣王国の街を見てまわろう。王宮裏の森に入れば獲物はいっぱいいるらしい。そこで狩ったものを売れば稼げるというのでまずはジロたちに頼っちゃおう。でも私も剣を持って戦えたりするのかな?ちょっと怖いが試してみたいところだ。
なんだか冒険心が刺激されて、楽しい明日がくるようなワクワク感を感じながら、午後から森へと繰り出す私たちであった。
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