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「それでは……決闘の儀、はじめっ!」
舞台の横に控える審判と思われる獣人からの号令で儀式は開始された。
その合図と共に二人は走り出すと激しく拳をぶつけ合った。パワーはダルニャの方がありそうだが、ニャイダは軽くかわしていく。反面ニャイダの拳は当たるがあまりダメージはないようだ。
しかしその攻撃は確実にダルニャのイライラを蓄積させることに成功しているようだ。
「くっちょこまかと逃げるのがうまいようだが……早々に決める!」
そう言うダルニャはバックステップで距離を取ると何やら息を大きく吐き出して、体が大きくなりその形も変えていく。盛り上がった筋肉、そして巨大な獅子の姿となったダルニャ。
完全に獅子となったダルニャの雄たけびが闘技場内に響いていた。
そして速度を上げたダルニャの爪が、ニャイダを襲う。致命傷は無いようだが少しづつその体に傷を作っていく。
そして……ニャイダがふらふらと体を揺らすと、ガクリとくずれ膝をつく。
「な、なにを……」
軽く傷を作っているようだが、そこまで致命傷になるような傷には見えない。
獅子となったダルニャは足をとめ、膝をついたニャイダをじっと見ていた。その口元からはだらだらとよだれが垂れていた。
「毒を……使ったのか?この、卑怯者が!」
『言いがかりはやめてもらおうか。どこにそんな証拠があるのか……知りたいもんだ』
そうこう言っている間にニャイダの顔が青くなっていく。汗の量も尋常ではない。
「あの左についている籠手、間違いなく毒の爪じゃの」
「えっ?そんなの有り?ていうかそもそもこの決闘、武器とかつかっていいの?」
モモさんの指摘に、今更ながらそのダルニャの手……いや前足?とにかくそこに付いている武器をみて私は叫んでいた。
「マリ様……私は、大丈夫です……武器は使用できます。ですが普通は使いはしない、です……己の肉体の強さを示す場、ですからね……やっぱり、卑怯者は違う……しかも禁じられている、毒まで使うとは……ぐっ」
私の声に丁寧に説明しながら、自分の体を抱きながら苦痛に耐えるニャイダ。
皆、舞台の横に待機している審判を見る。
「しょ、証拠はない!儀式は続行!はやく始めろ!」
その言葉にブーイングが飛ぶ。取り巻きのニヤつく顔を見て買収か何かがあったのだろうと予想する。そしてちらりとレレオさんの方を向くと、すでにニャルスが抗議にいっているようで言い合いをしている。
「よい!そのまま続行だ!」
レレオさんの声が飛ぶ。どうやら儀式は続行のようだった。
私はレレオさんの元から帰ってきたニャルスに話を聞くと、どうやらレレオさんは「大丈夫だ。あんなのには負けるようなら嫁にはやれん」と言われたらしい。悔しそうに地団駄を踏んでいた。
私は、相手がそんな卑怯な手をつかうなら、と意識を集中する。そして私の白いオーラがニャイダに届きつながった。つながったのだが、そのつながりはすぐに立ち消えた。
ニャイダが左手をこちらに向け「大丈夫です」とこちらの援護は拒否したのだ。こんな時にもまじめなんだね。そう思った私は「頑張って」とだけ声を掛けた。
そしてスッと立ち上がるニャイダ。どうやら毒は消えたようだ。自分の体を確認するように動かした。こちらに苦笑いをした後、軽く礼をするニャイダ。それぐらいの援護ならいいよね?と思ってしまう私。
『卑怯な……』
「卑怯はどっちだ!」
棚上げダルニャの声につっこむニャイダは、先ほどのダルニャのように体に力を籠めた。
「全力で……いかせてもらう!」
その声と共にニャイダの手が、足がふわふわと良い毛並みの物へと変化する。
「部分獣化、だと!」
『そんな……ばかな!』
レレオさんとダルニャが驚いている。
「面白いな。私たちと同じような魔力の使い方をしている」
コガネさんが関心していた。
「すごいわニャイダ!卑怯なダルニャをやっつけちゃいなさい!」
「うにゃ~」
ニャナンさんの喜ぶ声と、隣にいるニャルスはもう、なんかこう……目がとろんとしている……
暫く二人の戦いを眺める。もうその戦いは一方的であった。ニャイダの素早い動きから繰り出される豪快な拳。獅子となったダルニャにドンドン攻撃が積み重なっていく。
そんな中、少し意識が戻ってきたニャルスに聞くと、完全な獣化より部分的な獣化は難しく、獣王国内でもレレオさんが短時間だけ使える程度らしい。
かなり興奮しながら教えてくれるニャルスをみて思わず「よかったね」と頭を撫でると、ニャルスはまた「うにゃ~」と可愛い声を出して目を伏せていた。
そろそろ終わりそう。そう思っていた私は、そのダルニャが後ろ脚につけていた袋を破き、取り出した何かを飲み込んだのを眺めていた。
そして、その隙を見逃さず拳を振り上げたニャイダが、舞台の端まで吹っ飛んでいくのをあっけに取られながら見ていた。
舞台に打ち付けられるニャイダ。それ間髪入れずに飛び掛かるダルニャ。その目は血走り赤く染まり、口から垂れる涎の量は増えている。どうやら先ほど以上に野生化してしまったようだ。
「えーいもういい!やめだ!ダルニャの野郎、またたびなんぞに手を出しおって!さすがにあんなのに頼る奴に娘はやれん!」
獣王レレオさんが周りに止めるよう指示をする。どうやら先ほどのはまたたびを使った何かなのだろう。
しかし、周りの動きを静止するようにニャイダが両手を左右に開いていた。すでに先ほどの攻撃を躱して起き上がっていたようだ。
「だ、大丈夫です……この決闘を終わらし……私は姫様を、ニャルスを嫁に迎えます。邪魔を、しないでください……」
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