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最後に評価など頂けれは嬉しいです。
「う、うむ……失礼した。であるから、その殺気を飛ばすのは止めていただきたい……」
そうだよね。さっきから前の三人が凄い顔で睨んでるから、国王の脇にいた護衛たちが震える足で武器を手前に構えなおしたから……
私はみんなに言い聞かせるように「ニャルスのお父さんだからね。優しくしてあげて?」と声を掛けると、ニャルスがホッとため息をついて獣王に向き直った。
「マリの横にいるのは全部マリの従者にゃ!やばいぐらい強いから下手なことしたらこの国が亡ぶにゃ!一大事にゃ!」
獣王に向かってバシバシと猫パンチを浴びせていく。
すると、さっきまで膝をついて静観していたニャイダが口を開いた。
「獣王様、おそれながらあちらにおわすレオ様は……白虎様でございます……」
「そんなわけなかろう!」
獣王即つっこみである。
そしてニャイダが慌ててレオの方まで近づき、再度膝をついた。
「しょうがないなぁー」
レオが面倒くさそうに来ていたラフな服を脱ぎ捨てると、元の白虎への姿に戻っていった。
一斉に走ってくる獣王含む護衛やら何やら……勢いが怖い。
獣王が一番先頭でヘヘーと土下座していた。白虎という存在はそこまでなのか……
『面倒だから別に敬う必要はないよ。でもね、マリ姉ちゃんに何かしたら……許さないからね』
「「「ははー!」」」
周りの獣人全てがひれ伏していく。
それに満足したのか、人型に戻り服を着るレオ。そして私の横にきてそのまま腕に絡みついて甘えていた。
その様子を見て、獣王をはじめ徐々に気まずそうに立ち上がり、パタパタと裾をはたいて誤魔化しながら元の位置に戻っていく面々。
そんな時である。私たちが入ってきた扉から大きな笑い声が聞こえてきたのは……
「ぶわはははは!遂に姫様が帰ってらっしゃったか!お元気そうで何よりです!このダルニャ、姫様の無事を毎日祈っておりましたよ!」
「げっ!ダルニャ!」
どうやらこの獅子族の男が、例のニャルスの婚約者候補らしい。その周りには取り巻きらしい数人の獣人たちが、こちらも見ながらニヤニヤと笑っていた。
「早速ですが、例の決闘の期間がすぎておりますからな……すぐにでも開催していただきたいのですが、構いませんかな?獣王様」
「ああ。良いだろう。だが今はあまり騒がしくするな。白虎様がご降臨されおるからな。むしろもっと端に寄れ。邪魔だ」
獣王様にそう言われたダルニャは一瞬顔をゆがめたが、すぐにまた「がはは」と笑い出した。
「伝説の白虎様が降臨なされたと……いったいどこにおられるのでしょうかな?」
「控えよダルニャ。こちらに御座すお方が白虎様、レオ様で在らせられる!」
ニャイダがレオの前に出てダルニャにレオの存在をアピールする。私はまたなんか始まるのか、とそんなことを考えていた。だってこの後また服脱いでヘヘーの流れでしょ?なんて思っていたから……
「こんなガキが白虎?ニャイダル、お前頭でもおかしくなったか?」
「頭がおかしいのはお前の方だダルニャ!獣王様もお認めになった!すぐに傅き許しを請え!」
ダルニャが怒りの表情を見せ、ニャイダにつかみかかろうとする。しかしそのダルニャの手はレオにガシリとつかまれていた。
「ちょ、レオ?穏便にね?穏便に……」
私がレオの本当に怒っている時の表情を見ながら声を掛けた。レオは私の顔を見てニッコリ笑顔を見せていたのだが、どうやら駄目なようだ。目が笑っていない。
「なんだ!はなさんかこのクソガキが!」
「おまえ、うるさいよ」
捕まれた手を振り払おうとしたダルニャに、レオの怒気が籠った声が聞こえた。向けられていない私もちょっとドキッとして怖かった。それでもレオを止めなくちゃっと思って足を進めようとした私を、ジロが前に立ってせき止めた。
「マリ姉、大丈夫だよ。一応レオもそれなりに空気読んでると思うし、殺すことはないよ……多分」
「いや多分じゃ困るんだけど……」
ジロの少し考えた間が開いてからの多分という言葉に不安は消えない。
「まあ、レオもああ見えて長く生きてるからな。大丈夫だろ」
「そ、そうだといいけど……」
後に続いたクロの説明に、若干の不安を残しながらも息を飲んで見守っていた。
気づけは腕をつかまれたダルニャは、そのままレオに傅く形で押さえつけられていた。そして笑顔で睨みつけられながら、ぶるぶると震えだすダルニャ。後ろにいた取り巻きは誰一人近づけずその場で立ち尽くしていた。
「し、失礼しました……獣王国、近衛兵団長をしております、ダルニャス・ネメシスと申します……ご無礼を、おゆるし、く、ください……」
最後の方は聞き取れないぐらいに小さく言葉を発したダルニャは、そのまま頭を小さく下げた。
「まあいいけどね。マリ姉ちゃんに何かしたら……消えてもらうから」
「は、はい!」
手を離されたダルニャは返事と同時にもう一度を下げると、そのままの態勢で少し後ろに下がると逃げるように出ていってしまった。そしてレオがまたも私の方にやってきて腰にしがみついて顔を上げた。
満足したのか曇りのない笑顔である。
仕方なく私はその頭を撫でる。そして上げていた顔を戻し、私の肩に顔をすりつけるように甘えていたのでもう一度撫でてあげた。なんとか平和に解決できたようで良かったと胸をなでおろす。
「レオ様。うちのものが大変失礼をいたしました。そして穏便な計らい、大変ありがたく存じます」
「うん、いいよ」
「そしてマリ様、でよろしかったでしょうか?」
獣王様に突然名指しされ戸惑う私。
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